異次元緩和が効かなかった理由
当noteでも度々指摘してきたが、デフレの原因だった企業のdeleveragingが2002年頃に終わってからも物価が上昇しなかった主因は、名目賃金とサービス価格にある。
米国や欧州の物価の推移をみると、95年以降モノの値段は日本と同様に下がる一方、サービスは上がっている。サービスは労働集約的で、価格は名目賃金と連動するが、欧米で名目賃金は上がっているからだ。モノとサービスを合わせた消費者物価は、サービスの価格が上がっているため下がらなかった。
一方、日本では1998年からサービス価格が全く上がらなくなっている。
賃金を通し物価を下がりにくくする「デフレストッパー」が日本だけ雇用形態の変化などにより外れてしまった。
長期的に上昇傾向にあったサービス/財の相対価格も2003年から頭打ちになり、近年では低下に転じている。財価格は世界的なインフレ率上昇に引きずられて上昇する一方で、サービス価格は企業の低コスト・低価格路線が続いているためである。
金利を株主資本コストに置き換えると、大企業の設備投資が低調な理由になる。
金利は資源配分に対して手旗信号的な役割を果たす。3%の金利とは、企業が融資を受けて設備投資する時、リターンが3%を超えるものしかできないということだ。
経済産業省の『伊藤レポート』では、グローバル投資家が要求する資本コストは平均8%とされている。潜在成長率が低下した日本国内には8%を超える投資対象は少ないので、投資は海外に向かうことになる。
日本経済の変調の原因は企業部門の構造変化なので、日本銀行の異次元緩和には効果がなかったわけである。
異次元緩和の基になったリフレ理論は「疑似医療」、リフレ派は偽医者であり、彼らに任せたために日本経済は回復するどころか病状は一段と悪化している。
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