「日本は絶対に破綻しない」と言えないワケ

同じネタが続いてしまうが、今回は土木屋の藤井聡と、日本をガタガタにした「改革」を約30年間煽動し続けてきた田原総一朗の対談を取り上げる。

田原 日米英は150年200年300年と借金を増やしつづけ、しかも借金でつぶれてない。借金でつぶれるなら、とっくに財政破綻していなければおかしい?
藤井 はい。日米英3国とも「中央銀行」を持ち、それぞれ円・ドル・ポンドという通貨を発行しています。だから中央銀行を持つ政府は、任意に、いつでもいくらでもカネをつくり出すこと(貨幣の創出)ができる能力と権限を持っているのです。
だから政府はつぶれません。政府が「自国通貨建て」の借金によって破綻や破産をすることは、考えられないんです。

中央銀行を持つ政府は債務不履行(デフォルト)という形での破綻や破産は避けようと思えば避けられるが、財政赤字からインフレが制御不能になって通貨単位の変更や新通貨への切り替えを余儀なくされることはあり得て、それも破綻と呼ぶ。

政府に「任意に、いつでもいくらでもカネをつくり出す」能力と権限を持たせると、財政赤字の垂れ流しからインフレが暴走する形での破綻を招く危険性が極めて大きいことが歴史の教訓として得られている。敗戦後の日本でも、膨張する財政赤字を日本銀行が直接・間接的にファイナンスしたために物価が暴騰したので、占領国のアメリカが介入してドッジ・ラインの超均衡(政府の収支全体を通じての真の黒字予算)でインフレを鎮静化させた。

このような事態を防ぐために、現在の世界標準の制度では政府にそのような能力と権限を持たせず、インフレリスクを織り込んだ金利で借り入れる仕組みになっている。政府は藤井が言うような通貨のissuerではなくuserである。

👇が田原の疑問への回答の半分になる。

たしかに、家計の借金ならば、ゼロにしなければいけません。次世代の子どもたちに財産を引き継ぐときは、借金をゼロにするか、できるだけゼロに近づけてから引き継ぐべきですね。

個人には寿命があるので、貸し手は借り手が死ぬ前に元本を回収しなければ貸し倒れになってしまう。しかし政府は永続的存在なので、利払いを続けられるのであれば借金をゼロに近づける必要はない。政府を擬人化するなら「全国民が課金対象で収入が途絶えない不死の人」になる。

「日米英は150年200年300年と借金を増やしつづけ、しかも借金でつぶれてない」のは、

①政府が継続している
②利払いの原資の税収と税源の経済活動が増大している

からである。

現行制度には「政府は予想インフレ率を反映した金利で民間から借り入れる」という財政規律が存在するので、基準を「適正なインフレ率」に変える必要はない。インフレ率よりも金利の方が金融政策と連携したforward-lookingの制御に適している。

MMTは「適正なインフレ率」を財政規模の基準にせよと繰り返し論じています。つまり、借金しすぎてカネを使いすぎれば、インフレ率が高くなりすぎるから、そうならない範囲でカネを使え、といっているわけです。
規律を「なくせ」ではなく「変えよ」です。

MMTは中央銀行や市場のプロの金融マンたちには全く支持されていない(相手にされていない)。金融システムのメカニズムの理解がおかしいだけでなく、その経済運営の方法が現実的とは思われていないからである。インフレの適切な制御はMMTerが言うほど易しくない(言うは易く行うは難し)というのがプロのコンセンサスである。レトリックや言葉遊びで素人は騙せてもプロは騙せない

これがMMT(Modern Monetary Theory)、直訳すると「現代貨幣理論」と呼ばれる理論の最大のポイントです。とはいえ、別にMMTなどを持ち出さなくても、そんなことはマクロな金融に関わっているプロの金融マンたちからすれば、当たり前の事実なんですが。
The fact that inflation has been held in check for so long may also explain the increasing popularity of ideas from an entirely different perspective. The proponents of modern monetary theory would like to see central banks being put at the service of state financing. Their take is that independent central banks are merely a troublesome relict and that monetary policy should largely be determined by the government’s financing needs. But experience from throughout history shows that this would, sooner or later, end in an economic policy fiasco.
However, there are also many examples from history where paper money proved to be decidedly bad, as high inflation led to a rapid erosion of value with disastrous consequences in some instances for the economy, society and politics. The flexibility that is the defining feature of the paper money system is both its strength and its Achilles heel. Used properly, i.e. with the focus on the goal of value retention, this flexibility can contribute to the stability of economic development and the solidity of the banking system. However, things start to get dangerous when it is misused to solve political or structural problems by issuing central bank money – as advocated by the proponents of the aforementioned modern monetary theory, for example.

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