反緊縮派は消費減税に拘り過ぎ

また中野剛志がミスリーディングな記事を書いているので、繰り返しになるが問題点を指摘する。

消費税率を5%から8%へと引き上げた2014年も、日本経済は未だデフレ脱却に至っていない時期であった。そして、そもそも日本経済を長期のデフレ不況へと陥れる契機となったのは、1997年に実行された消費税率の3%から5%への引き上げであった。

グラフの薄紫色の縦線はそれぞれ1997年4月(3%→5%)、2014年4月(5%→8%)、2019年10月(8%→10%)だが、2014年にはデフレから脱却していたことがわかる。また、2014年の消費税率引き上げは失業率低下にはほとんど影響を与えていない。

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反緊縮派の間では、1997年の消費税率引き上げによって日本経済は長期デフレ不況に陥ったいう偽史が定着しているようだが、そうではなく、11月の金融危機を契機に企業が債務・設備・雇用の「三つの過剰」を解消する縮小均衡に転じたためである(→いわゆるバランスシート不況)。歴史を修正してはいけない。

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企業のdeleveragingの時期のプライマリーバランスは大幅な赤字であったことも、デフレが政府主導ではなく民間企業主導だったことを示している。

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これ(⇩)も、人口動態や労働分配率の変化等、その他の要因が考慮されていないので、全く「明らか」ではない。中野たち反緊縮派は消費増税の悪影響を過大評価している。

この図が明らかにしているのは、第一に、過去の消費増税による消費抑制効果は、リーマン・ショックや東日本大震災による消費抑制効果に匹敵するということである。
そして第二に、消費増税による消費抑制効果は、リーマン・ショックや東日本大震災による消費抑制効果よりもはるかに長く持続するということである。

消費税率変更にはコストがかかるうえに、家計支援策には給付金や公共事業(土建に限らない)などがあるにもかかわらず、ひたすら消費税率引き下げにこだわるのも不可解である。反緊縮派は財政出動の焦点を消費減税に集中させるのではなく、国家が惜しげもなく金を使い、雇用を生み出すためのあらゆる手段を訴えるべきだろう。もっとも、ルーズベルトのように「橋やビル、公園を造り、アーティストを雇って壁画まで描かせ」る経済政策は、清貧好きの日本人に無駄遣いとして反対される可能性が高く、実現のハードルは極めて高い。

フランクリン・ルーズベルトが、大不況にどう対処したかは、すべてのリベラル派が知っている。大胆で、実験的で、あらゆる手段を駆使し、現代リベラリズムを構築した。・・・・・・ルーズベルトはとにかく橋やビル、公園を造り、アーティストを雇って壁画まで描かせた。だから誰でも知っているのです。・・・・・・国家が惜しげもなく金を使い、雇用を生み出した。日本もこれが好きですよね? この手法のパイオニアがルーズベルトでした。

中野は本業が忙しいからといって、経済統計を確認せずに思い込みで不正確な言説を拡散するべきではない。

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