参考にならない高橋財政

高橋是清の政策哲学はケインズの「国家的自給」と似ていて、その実現可能性は別として日本経済の構造問題の参考になるが、不況対策としてのいわゆる「高橋財政」はほとんど参考にならない。

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参考にならないのは、2002年以降は景気拡大期間が長く、昭和恐慌のような経済状況ではないからである(👇グラフの色付け期間が景気後退期)。高橋財政の円安・低金利・積極財政のポリシーミックスのうち、円安と低金利も既に実現している。

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ケインズが「人口減少の経済的帰結」と「国家的自給」で論じた①人口減少の予想が国内投資を消極化させる、②低金利政策が効かなくなり投資が海外に流出する、が日本経済の新常態となっているので、単に財政支出を拡大するだけでは根本治療にならない。

日本経済は量的拡大による成長は無理なので、質的向上を価格上昇→賃金上昇につなげる起点になるような財政支出を考えるべきだろう。

質疑応答で中野は高橋是清がデフレの時でも借金は返さなければならないという議論をしていたことを「謎」だとしているが謎ではない。その論理は「借金政策は永続せず」で明解に説明されている。

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また常識より考へても、国家その他の公共団体の経済たると個人経済たるとを問はず、借金政策の永続すべからざることは当然である。
公債増発に伴つて利払費は漸増し、租税その他の収入もその利払ひに追わるゝ結果となるであらう。かくの如き事態が生ずると、国費中公債による部分がますます多くなり、財政の機能は行詰りに陥らざるを得ない。かくては国家財政の信用を維持し難く、公債の消化は行詰り、結局印刷機械の働きにより財源の調達を図らざるべからざる状態に至る。かくて、所謂悪性インフレーションの弊は必至の勢ひとなるであらう。

冒頭では中村裕之議員がこのグラフを示しているが、この因果関係は経済成長→政府支出増加であってその逆ではない。

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英語に"tail wagging the dog"という表現があるが、経済全体が犬で政府支出は尻尾である。


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