見出し画像

「女性が活躍する最強国家」とは退化した社会

6年近く前にこのような番組が放送されていた。現在ではリンク先は配信停止になっているので、残っている番組紹介の内容に基づいて論じる。

この番組ではアイスランドとモソ人社会を「最強」として取り上げていたようである。

「女性の天下」中国少数民族モソ族
北欧アイスランド…男女が世界一平等な国

しかし、国力や他民族を圧する力という点では、アイスランドとモソ人は最強どころか最弱というのが客観的な評価になる。アイスランドは人口36万人、モソ人は人口5万人に過ぎず、辺境の地でなければ異民族に征服されて消滅していたことは確実である。孤島のニュージーランドにいたために絶滅を免れたキーウィのようなものである。

画像2

先日の記事で取り上げたFinancial Timesの記事では「女性が首脳を務める国では新型コロナによる死者数が少ない」として、特にアイスランド、ノルウェー、フィンランド、ニュージーランドを成功例に挙げていたが、これら辺境の4小国とモソ人の社会は見方を変えれば「社会を統率する有能な男」を失った社会であるとも言える。

生物が「ある能力を保持するためのコストがメリットよりも大きくなると、その能力は低下する」ように、平和な社会では男が「力」を強化するコストがリターンに見合わなくなってくる。その究極のモソ人社会では、モテ男には子育てコストを女に丸投げできる(家父長の役割から解放される)メリットがあり、女には家にいる夫に煩わされないメリットがある。

社会が平和ボケする→男がempowermentされなくなる→相対的に女が強くなるわけだが、これは進化というよりも退化というのがふさわしい。社会そのものが能力を失う方向に進化(退化)しているわけである。

退化は進化の反対の概念ではなく、進化の一環だ。進化というと何かを獲得していくイメージがあるが、実際には喪失していくことも含まれる。ある能力を保持するためのコストがメリットよりも大きくなると、その能力は低下する。
ダーウィンの『種の起源』には、飛べなくなった鳥の例が挙げられている。・・・・・・空を飛ぶ能力は、敵から逃れるには役に立つが、コストがかかるため、その能力なしでやっていけるならば失うことがあるということだ。

女は男に比べて競争とヒエラルヒーを好まないので、女が社会の主導権を握ると、(形式上の)平等が志向されるようになる。フィンランドの教育や、男女の職種の違いを無視して賃金差解消を強行したアイスランドとニュージーランドがその具体例である。

進歩・革新は競争によって促進されるので、表層的な平等強要政策は長期的には社会を停滞させる。番組は「男性帝国は滅びる」と煽っていたようだが、既に滅びかかっているモソ人社会のように、滅びるのは男のempowermentに消極的な社会である。先進国がかつての共産主義諸国のような停滞と混迷に陥ってきたのも必然的帰結ということである。

付録:モソ人

モソ人社会についての非常に秀逸な分析記事があったので詳しくはこちらを読んでもらいたい。

女たちの王国:「結婚のない母系社会」中国秘境のモソ人と暮らす』の著者Choo Waihongはこの動画の29秒~に登場する。

補足

番組紹介にはアイスランドについて「出生率も2.0に引き上げることになった」とあるが、長期的には下落傾向にある。TFRは2016年以降1.7台が続き、30歳未満の出生率は過去最低となっている。

画像1

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?