見出し画像

リフレ→反緊縮の本田のアトキンソン批判

日本銀行にブタ積みを増やせと迫っていたリフレ派の本田悦朗元内閣官房参与の主張を検証するが、穴だらけである。

本田はアトキンソンが「人口減少で元々労働者が減っているのだから、生産能力をそれに応じて減らすべきである」と主張していると言うがそうではない。アトキンソンの論旨は「労働力が大幅に減少し続ける中で経済を縮小させないためには労働生産性を高めるしかない」である。

今後の日本では、他の国以上に「生産性がすべて」となります。なぜなら、これからの日本では何十年にもわたって、どの先進国より人口が大幅に減少し続けるからです。それにより、主に以下の3つの変化が起こります。
(1)(需要者となる)客が大きく減る
(2)労働者が大きく減る
(3)高齢者の年金や医療費など社会保障費用を負担する人数が減る
これらの問題に対処するためには、生産性を高めなければなりません。

中小企業の再編・統合も、長期的には"There is no alternative"だからで、単純な清算主義に基づくものではない。アトキンソンを否定するのなら、第四の選択肢を示す必要がある。

生産年齢人口が減る以上、①全体の規模を小さくして生産性を下げる、②小規模事業者を守って中堅企業を潰す、③規模の大きな企業から守って小規模事業者を減らすの3つしか選択肢はありません。①と②では、経済は確実にボロボロになります。とるべき方向性は、③しか残らないのです。

動画の37:28~では、財務省と日本銀行が政策を間違える→デフレから脱却できない→真の生産性(実力)とナイーブな生産性が乖離した、と説明しているが、これも現実からずれている。

●完全雇用までは、労働生産性は景気に左右され、供給の実力とは関係がない(「ナイーブな労働生産性」)
●「真の労働生産性」とは、完全雇用(資本の完全利用)を達成した後の労働生産性
●国際比較する意味があるのは、「真の生産性」

安倍政権の後半になると失業率は2%台に低下し、就業率も大幅に上昇していたので、ナイーブな生産性と真の生産性はほぼ一致していたはずである。従って、「デフレのために完全雇用が未達成なので、ナイーブな生産性は実力未満に計測されている」という言い訳は通用しない。

画像4

そもそも、デフレは安倍政権発足とほぼ同時に終息している。

画像3

また、世界金融危機後に先進国の多くはsecular stagnation(長期停滞)に陥っているので、日本だけがナイーブな生産性が実力未満に計測される状況ではなくなっている。アトキンソンはそのことを踏まえた上で「日本は労働生産性が低い」と主張しているので、本田の批判は的外れになっている(アトキンソンが正しいか否かは別問題)。

本田の「経営者に総需要をコントロールする力はない」にも問題がある。確かに、個々の企業経営者にはそのような力はないが、大企業の経営者が一致して賃金と設備投資の抑制に動けば、総需要減少→デフレを引き起こすには十分である。

9:00~では「財政ファイナンスという言葉は英語にはないので訳せない」と言っているが、これも事実ではない。

アトキンソンの主張にも問題が多々あるのだが、アトキンソン批判がそれ以上に問題だらけなので話にならない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?