デンマークの難民申請者目標ゼロ

デンマークの首相が難民申請者の受け入れはゼロが望ましいと表明した。

外国人が増加すると、デンマーク社会の統合が緩んで解体に至る危険があるためである。これまでは外国人を同化させる努力が不十分だったとも認めている。

“We must take care that not too many [refugees, ed.] come to our country, otherwise our social cohesion could not exist. It is already under threat,” Frederiksen said.

福祉国家を維持するためには、福祉に頼る人々が外部から加わることを制限する必要がある[*]ので、原理主義的な熱狂から冷めたデンマーク人が難民受け入れ拒否に傾くのは時間の問題であったと言える。

20世紀後半から、リベラルの新たな潮流が(北の)ヨーロッパを席巻した。それは、人種差別や女性への暴力、子どもの虐待(さらには「動物の権利」の侵害)に対する強い拒絶感情だ。1990年代の凄惨なユーゴスラヴィア紛争を間近で見たヨーロッパのひとびとは、あらゆる暴力を否定するという「原理主義」に急速に傾いたのだ。
『未来を生きる君たちへ』が描いたのは、原理主義的なリベラルは現実によって常に裏切られる運命にある、ということだ。それは「リベラル」が絵空事だからだが、その理想を愚直に実践することには絵空事を超えた価値がある。

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[*]上野千鶴子の「平等に貧しくなろう」はこのことを踏まえた発言。

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