無神論者の文化的キリスト教徒
『神は妄想である―宗教との決別』の著者のリチャード・ドーキンスが「自分は文化的なキリスト教徒」と言ったことが話題になっている。
世界各地(特に先進国)では神の存在を本気で信じたり、日常的に宗教儀礼を実践する人は大幅に減っており、脱宗教化・世俗化が着実に進んでいる。しかし、ドーキンスのように信仰心は失っても、宗教の教えに通じるエートス、価値観、規範意識を持ち続ける人が多い状態をエマニュエル・トッドは宗教の「ゾンビ段階」と呼んでいる(神は死んだが動いている)。この段階では、社会は「神を抜いた宗教」「世俗化された宗教」によって律されている(日本もこの段階)。
しかし、トッドは近著の『西洋の敗北』で、西洋諸国はゾンビ段階を通り越して宗教的エートス・規範意識が失われた「ゼロ段階」に移行しつつあり、それが敗北(というより自滅)の原因になっていると論じている。これは、自我や我欲の箍が外れた人間(特にエリート)、別の意味で「無敵化した人」が増えているということであり、そのことが古典的な意味でリベラルで民主的な社会を危機に追いやっているわけである。
ロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギンもキリスト教精神の喪失と西洋の危機について語っているが、これについては「ドゥーギンのシン・リベラリズム分析」で。
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