銀行と悪魔

人間が悪魔と「◯年後に魂を渡す代わりに望みを叶えるための力をもらう」という約束を交わす話があるが、銀行がやっていることは悪魔と似たようなものと言える。

銀行が望みを叶える力の代わりに与えるものはカネで、魂の代わりに受け取るものは「与えたよりも多いカネ」である。

成功間違いなしのビジネスのアイデアはあるが、そのために必要なリソースを持っていない人は、銀行からカネを貸りて設備や従業員や原材料を揃えてビジネスを展開できる。ビジネスが成功すれば、借りたカネ(元本)と借り賃(金利)を支払い終えて契約は無事終了する。

自己資金は500万円しかないが5000万円の住宅を持ち家にしたい人は、長い年月をかけて4500万円を貯めなくても、銀行からカネを借りてその家を買い、月々の給料からローンを返済することで、希望の我が家に住む望みを前倒しで叶えることができる。

悪魔が魂の等級に見合わない力は与えないように、銀行は借り手の「カネを稼ぐポテンシャル」を超えるカネは貸さないが、借り手はその範囲内では望みを実現できるわけである。カネとは借り手のポテンシャルを「何とでも交換できる流動資産」に変換(流動化)したものと言える。変換する対価が金利である。ビンスヴァンガーは、この「錬金術」が近代経済を生み出したと論じている。経済活動のエネルギーの解放という意味では原子力の発見・利用にも似ている。

ただし、約束通りに借りを返せなければ、魂の代わりに身ぐるみ剥がさせる可能性がある。

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