お勧め本『日本経済《悪い均衡》の正体』

日本経済の停滞・衰退に関心がある人に勧める本を一冊選ぶとすればこれ👇になる。その主因が金融緩和・財政拡張の不足ではなく、企業の方向を誤った効率化・頑張りにあることが指摘されている。そこに至る過程(バブル→バブル崩壊→不良債権問題→金融危機→企業リストラと不良債権処理)にも十分に言及されている。

企業(私的部門)では、「効率性」を通じた不効率、ともいうべき現象が起きている。たるんでいて努力が足りないのではない。いかにも日本らしく、むしろ過剰なほどの努力・頑張りが傾注され、しかし頑張るほど状況は悪くなった。[中略]競争は内に向かって人件費コスト引き下げ競争を引き起こし、その結果は所得、購買力、需要の縮小という合成の誤謬となって、全企業に条件悪化として跳ね返る。

p.4

低所得は消費支出を縮小させ、マーケットを委縮させている。とりわけ有配偶率が低い男性非正規(の低所得と将来不安)や女性正規(の子育て条件の低さ)は、明らかに出生率を低下させ、人口を減少させ、マーケットを委縮させると同時に、成長への労働の寄与も低下させる。社会維持の条件を壊しつつあることを直視しなければならない。方向を誤った「効率化」が、縮小均衡、悪い均衡の重大な一環を構成している。

p.163-164

賃金増加については、内部留保の切り崩し(クルーグマン)や最低賃金引上げ(アトキンソン)よりも、こちら👇の方が良さそうに思える。

労働基準監督行政を集中的に強化し、サービス残業を徹底的に取り締まることで、日本経済にとってきわめて好ましい効果が期待できる。不払いであった残業代が支払われると、課題である賃金増加、家計取得増加となる。企業にとってはコスト増になり、本来の効率化に向けた業務の見直しが迫られる。

p.148

今ならこの指摘👇に同意する人も多いだろう。

最近、「日本会議」の政治的プレゼンスが注目されていることをはじめ、「宗教」を名乗る団体・関係者の政治やメディアへの関与・影響が度を超え、宗教の本来の趣旨を外れて不公正をもたらしているように思われる。現に政治的影響力があるだけに困難さをもつことは理解するが、宗教法人法の趣旨にまでさかのぼり、宗教活動、公益事業の範囲を厳格に再検討するとともに、監視を厳密化するべきである。その資金力による社会的影響も問題であり、活動の再定義、監視と密接に関連して、最も厳密な本来事業以外の課税が強化されなければならない。

p.192

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