共産主義体験者のリベラリズム批評

以前にも書いた内容に新たな材料を加筆。

近年、共産主義体制の体験者が、西洋諸国が似た似た状況になりかけているという指摘をしているが、中国人の艾未未もその一人に加わった。アメリカ人は気付いていないが、political correctnessが猛威を振るう今日のアメリカは、中国の文化大革命の状況に似ているとインタビューに答えている。インタビュアーはYESを期待して「トランプはauthoritarianか?」と聞いたが、艾にはトランプを批判するリベラルが権威主義的に見えている。

この本👇も、旧共産圏からアメリカに移民した人々の目には、今日のアメリカがある種の全体主義に向かっているように見えているとの話から始まっている。

Now in her nineties and living with her son and his family, the old woman had recently told her American son that events in the United States today reminded her of when communism first came to Czechoslovakia.
During the next few years, I spoke with many men and women who had once lived under communism. I asked them what they thought of the old woman’s declaration. Did they also think that life in America is drifting toward some sort of totalitarianism?
They all said yes—often emphatically.

こちら👇は北朝鮮からの脱北者だが、ジェンダーと代名詞に関する新ルールは「文明の後退」であり、その点では北朝鮮よりも狂っていると述べている。

She was also shocked and confused by issues surrounding gender and language, with every class asking students to announce their preferred pronouns.
"English is my third language. I learned it as an adult. I sometimes still say 'he' or 'she' by mistake and now they are going to ask me to call them 'they'? How the heck do I incorporate that into my sentences?"
"It was chaos," said Yeonmi. "It felt like the regression in civilization."
"Even North Korea is not this nuts," she admitted. "North Korea was pretty crazy, but not this crazy."

東欧諸国は政府レベルに「西洋のリベラリズムは共産主義と同種」との認識がある。特に、移民とジェンダーがEUとの攻防の焦点になっている。

By refusing the ratification of the Istanbul Convention, Hungary, says “Yes!” to the protection of women but “No!” to gender ideology and illegal migration.

西洋の内部からもリベラルの非寛容化を懸念する声が上がり始めている。

現代の欧米社会では驚くべきことが起きている。新世代の進歩主義者が、信教国家時代の忠誠の誓いや(神への)冒涜禁止法の現代版ともいうべき、類似したやり方を復活させているのだ。そして、この現代の動きを指揮するのは、アングロサクソン的リベラリズムの中枢であり、大抵の場合はリベラルを自称する人たちだ。

自由を志向するはずのリベラルが権威主義・全体主義的になってきたのは、アングロサクソン的リベラリズムがキリスト教の代用宗教だとすれば「驚くべきこと」ではない。

20世紀にキリスト教の力が弱まると、ヨーロッパにはその代用宗教とも言うべき全体主義的イデオロギーが広まった。ファシズムとコミュニズムである。両者がそれぞれユダヤ人とブルジョワジーを悪魔のように敵視していたことに思いを馳せると、第2章で詳述するように、両者はじつはヨーロッパに固有のデモノロジーの新種であったと考えざるをえない。だが、この点は意外と知られていない。竹山道雄がすでに指摘しているが、ナチズムにとってユダヤ人は人間の皮を着た悪魔の手先だった。したがってユダヤ人を滅ぼすことは、白をしてますます白たらしめることであり、ヒューマニズムに反するどころか、むしろヒューマニズムに仕えることと考えられたのである。
… “after Nazis and Communists, a new totalitarian ambition is about to destroy Europe, sometimes called Liberalism, post-Humanism or whatever… green folly.”

アングロサクソン的リベラリズムもファシズムとコミュニズムと同類の「ヨーロッパに固有のデモノロジーの新種」なので、ある種の狂気を伴った全体主義的イデオロギーになることは必然と言える。リベラリズムが正気(バランス感覚)を保てていたのは共産主義との力の均衡が働いていたためで、一人勝ちの状況になると、普遍的正義の実現のために悪魔を滅ぼして世界を浄化しようという衝動を抑えられなくなったわけである。

この狂気を日本に直輸入しようとしているのが立憲共産界隈である。現時点では移民や人種・民族は西洋諸国ほど問題になっていないので、ジェンダーで攻勢をかけているが、衆議院総選挙では大失敗に終わった。

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