M-1グランプリについて①
僕はM-1が好きだ。
高校の定期テストの前日だろうと、センター試験まで1ヶ月を切っていようと、次の日が就職活動の最終面接だろうと、必ずリアルタイムで優勝の瞬間を画面越しに見届けてきた。
センター試験直前に見るM-1は、審査員7人の得点が5教科7科目の得点率にしか見えず、霜降り明星のファーストラウンドの得点を見て「センター利用で早稲田政経取れるな」と思ったりしていた。
今年は、翌日に控えた最終面接の準備を一切せず、「世界最速大反省会」と「M-1打ち上げbyストロングゼロ」を夜中まで見ていた。
とにかく、予定帳には決勝の日程が決まり次第「M-1」と大きくメモし、他の予定は全て断り、やむをえない用事であれば敗者復活戦が始まるまでに大急ぎで切り上げてきた。
この文章では、M-1のどこがそんなに好きなのか、なぜ毎年リアタイしなければいけないのかをまず書き、次いで2021年大会決勝戦を見た感想を各組について書きたいと思う。
①冒頭VTRが好き
M-1グランプリの決勝は、長い長い煽りVTRから始まる。
YouTubeでネタだけ見る、という視聴者の多くは、この部分を「要らない」「見ないで良い」と主張する。
僕はこういう人たちが、かわいそうでかわいそうで仕方がない。
ここを見ないでどうする。
ここを「長いな」「早くネタ見せろ」と思ってしまう人は、コース料理も長い映画も楽しめないに違いない。
ファストフードばかり食べ、ファスト映画を楽しみ、TikTokに違法アップロードされたバラエティ番組の一コマを見て笑う生活を送っているのだろう。
それは言い過ぎとしても、僕は「M-1における煽りV」は「寿司にとっての醤油」くらい大切なものだと思っている。ワサビではなく醤油である。
もしこのVTRを見たことがない、飛ばしてしまうという人には、一度しっかり見てほしい。
芸人をかっこよく映すという点において、ここのスタッフの右に出る者はいないのではないか。
「プロフェッショナル 仕事の流儀」や「情熱大陸」のスタッフが束になってかかってきても、きっと敵わない。
彼らの舞台に向かう背中、真剣なまなざし、何度もネタ合わせをする様子を映したM-1冒頭VTRを見れば、誰もが「漫才師ってかっこいいな」と思うはずだ。
「ただ、証明したい。俺たちが一番面白い。」
毎年冒頭VTRで引用されるこの言葉ほど、M-1グランプリという大会を象徴するに相応しい言葉はないだろう。
残念ながら今年の冒頭VTRを今から公式に視聴することは出来ないが、M-1の公式YouTubeに「宮本浩次『昇る太陽』× M-1グランプリ2021」という動画が上がっているので、ぜひ見てほしい。
②登場シーンが好き
続いては、M-1ファンが大好きな登場シーンについて書く。
「Zurg's Planet」を登場ファンファーレにゆっくりと舞台にせり上がり、「Because We Can」の出囃子とともに階段を降りる。そして、大きな「M」の字を模ったゲートを通って、光り輝く舞台に登場する。何度見ても鳥肌が立つほど素晴らしい演出だと思う。最初にこれを考えた人は誰なんだろう?この二曲を組み合わせたら良い感じになるんじゃないか、と思いついた人は誰なんだろう?一度直接会って、「あれを考えついてくれて本当にありがとうございます」と伝えたい。
DVDやAmazonプライムビデオ、あるいは公式YouTubeでは、あの出囃子とともに舞台に登場するファイナリストの姿を見ることができない。著作権の関係で別の楽曲に差し替えられているのだ。やはり、M-1を100%楽しむには、地上波でリアタイするのが一番だと思う。
③審査員コメントが好き
M-1グランプリ決勝で披露されるネタは、どれもとんでもなく面白い。
何千組という参加者の中から選ばれた10組が、決勝当日に向けてバチバチに仕上げたネタを披露しているのだから、当然といえば当然である。
その一方で「なんとなく今回はウケが弱いな」あるいは「ベストパフォーマンスではないな」と感じるコンビが存在することもまた事実である。
なぜこのネタが圧倒的にウケたのか、逆になぜウケなかったのか、といった部分に対する答えを言語化するのは、(特に素人である我々一般視聴者にとっては)容易ではない。
しかし、7人の審査員は時折、とんでもない鋭さでそれらの疑問を解消する。
今年もそのようなシーンが多々見られたので、詳しくは各コンビに対する感想として後述する。
現在の審査員は、オール巨人/富澤たけし/塙伸之/立川志らく/中川礼二/松本人志/上沼恵美子の7人でここ数年固定されているが、僕個人としてはM-1の歴史で最もバランスの取れた布陣であると感じている。
インターネット上には、「上沼恵美子は〇〇に高くつけすぎ」「志らくは○○に低くつけすぎ」と怒っている素人が毎年毎年湧いて出るが、個人的にはお門違いも甚だしいと感じる。
こういう人たちは、全員が松本人志と全く同じ点数をつければ満足するのだろうか?
全員が同じ評価軸で同じように評価をするのであれば、審査員は7人も必要ない。
話し方や掛け合いの技術を重視する審査員もいれば、単純に会場のウケを重点的に評価する審査員もいる。笑いの方向性やネタにおけるキャラクターが自分の好みかどうか、を重視する審査員もいる。
得点やコメントに各々のカラーが出つつも、順位全体が一般の感性とかけ離れたものになることはあまりないという意味で、現状この上ないメンツだと思う。
ただ一点だけ、やや審査員の年齢層が高いために、若い世代にウケるワードチョイスがしづらくなっているのは、若手芸人の大会という視点では懸念すべきかもしれない。大会の権威を損ねずに審査員の若返りを図ることは、今後必要になってくるだろう。
次回は、2021年大会の決勝(と敗者復活戦)を見た感想を各組ごとに書いていく。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?