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工場ボトルネックについての私考

工場における生産ボトルネック、についての私考です。「ボトルネックは動くのだ」という言葉に惑わされないで、というお話です。

ここでのお話の前提

仮の話として半導体前工程ラインのキャパ設計をしてみる。話を思いっきりシンプルにするために

  • 単一製品(全30層)

  • 20ロット(x25枚)/日

を作るラインがほしいとする

キャパ設計はリソグラフィ工程をボトルネックにするのが一般的。理由は主に高価かつ機台追加(コンパチ化)が難しいため。 30層のうち5層は特定ハイエンド露光機が必須と分かっている。TAKT時間は30秒/枚。1機あれば24hr稼働x可動率90%として約2,500枚=100ロット。ちょうど20ロット/日の投入を賄える。

(※TAKT時間:指揮者のタクトのことです。TACTじゃないよ)

このハイエンド露光機を「ボトルネック工程」とし、他装置(もちろん残り25層用の露光機含む)・人・搬送・各種供給はその能力をフル回転するために取り揃える。これが単純化したキャパ設計の考え方。 では「ボトルネックネックは動く」とは何だ?そんなことってあるのか?

ボトルネックが動く?

例えば他装置で特性ずれた、パーティクル吹いた、オペミスした、材料切れた、などなどの理由で、ボトルネック外で仕掛り溜まりができる。よくある話。 これを見て「ボトルネックが動いた」と安易に言われることがある。これは平準化が崩れたのであって、生産のボトルネックが動いたわけではない。

あくまでボトルネックは露光機の30秒/枚である。 「どう人リソースを当てても他装置の能力が35秒/枚となってしまい、露光機能力に追いつけない。そのため工場の生産能力の諸元を見直す」 この判断でやっとボトルネックが動いたと言える。 動いたと判断したら4M変更での改善や投資判断などのタスクに適宜繋げる。

ボトルネック対処の気構え

ボトルネックの議論をする際、工場全体を見るべき工場長クラスと個別工程を担保するプロセス技術者では視点の高さが異なる。ベストセラーの ザ・ゴールで描かれるTOC=制約理論の物語は前者にあたる。TOCの「ボトルネックは動くのだ」に対し、現場技術者は慌てず自信を持って「工程のレシピと実力はこうだ」と事実を伝えれば良い。

ザ・ゴール(エリヤフ・ゴールドラット 著)

何でこんなことを書いたかというと、昔開発さんに「生技ならTOCくらい押さえてるでしょ。今のボトルネック言える?」と言われもやもやしたことがあったからです。 こういう言語化を頭の引き出しに入れとくのも損はないかと思うので、春のこの時期にご参考まで。(特に若手の皆さまへ)

おまけ

ボトルネック=隘路(あいろ)工程と呼ぶ会社もあるかと思いますが、私はこの言葉を三国志とキングダムでしか聞いたことがありませんでした..

三国志(横山光輝 著  33巻)

おしまい。

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