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露光解像の直観的な説明をしてみるよ

リソグラフィの露光解像性 〜 NAと焦点深度について、数式を使わず、直感的な理解の一助になるよう解説してみます。自分ならざっくりこう説明するかな??という書き口になっています。

解説する小項目としては

  • レンズNAって実際なんなの

  • 焦点深度とどう関係あんの

  • じゃあ解像性を上げるには何すりゃいいの

です。いわゆるレイリーの式やフーリエ変換、具体的な定数・変数などは一旦お忘れください(暴挙)。

■ レンズのNA(開口数・絞り)って?

ある透明/不透明のシマシマのマスクパターンを想像してみてください。シマの幅は今は気にしなくていいです。ここに特定波長の光を当てます。 それぞれの透明部分を通った光は、向こう側へ半円状の波として広がります。いわゆる回折です。 これらの回折波は、特定の角度に対して振幅の大きい干渉波になります。

回折波(半円)と強調された干渉波(右側の矢印)

ではこの特定の角度はどう決まるか?これは、シマシマのピッチ寸法で決まります。 ピッチが小さい=微細なパターンになるほど、より広がる角度で振幅の大きい波が生じます。ラフパターンだと真っ直ぐに近い方向に生じます。この様々な角度からの波を、露光機のレンズが受けます。この現象を言い換えると、

シマシマの「寸法情報」が、「角度情報」に変換された、といえます。

マスクに様々なピッチのシマシマがある場合、様々な角度での干渉波が発生します。 これらの波のうち、レンズはどこまで広がった角度の干渉波=より微細なピッチのシマシマを取り扱うことができるか?

この角度許容の幅を示したものが、レンズのNA(開口数、絞り)です。

より大きい角度の光に対するレンズ領域は合わせ込みが極めて難しいため、物理的にシャッターでせき止めてしまいます。これが「絞り」とも言われる所以です。

■ では焦点深度(Depth of Focus)とは

角度情報となった光は、レンズ内部で縮小など何やかや処理された後、再び寸法情報となってレジストに照射されます。その時、より微細な光ほどナナメから照射されます。 ラグビーのゴールキックをイメージしてください。より正面からのキックがラフパターンの光、端っこからのキックほど微細パターンの光です。

五郎丸さん

ここでもし、勝手にゴールを手前方向に動かす輩がいたら?ナナメからのキックの方が外しやすいですよね。少しなら許せますが。

この「ゴール手前方向のばらつき許容度」が焦点深度です

ゴール失敗が、いわゆるデフォーカスです。 パターン段差やステージ高さばらつきなどが、この輩に当たります。

■ より微細な解像をするには?

では次に、解像性を上げるには。 いろんな角度からシュートしてゴールしたい(=複雑なパターンを形成したい)のはやまやまなものの、ボール同士がぶつかったりポストに跳ね返されたりと、一筋縄には行きません。 そこである角度からのシュートに特化し、ゴール精度をあげる技術的方法があります。

これが輪帯照明や、四重極照明と呼ばれる変形照明手法です。レンズ絞りの変形バージョン、とご理解いただければいいかと思います。

輪帯照明は特定のシマシマピッチの光(=特定の角度の波)のみを通し、四重極はさらに特定方向(x/yなど)のパターンの光を通します。 なのでこれらは周期的パターンが支配的なメモリ製品などで特に使用されます。ロジックはかえって解像性が落ちます。

オフアクシス照明とか呼んだりもします

では光源の波長を短くすると? あらゆる干渉波の角度は小さくなり、より微細パターンの光をレンズNA内に収めることができ、微細化に繋がります。 ただしこれは焦点深度の向上にはなりません。波長が短いほど手前方向のゴールキックに対しての精度がより必要になるからです。そのためむしろ焦点深度(ゴール成功率)は落ちます。

ただし高NA化(正解には、NAで表されるレンズ外側を通る光の種類の拡大)と短波長化は、焦点深度を下げてしまうものの、その可能性をゼロからこじ開けることがきます。 これは工程マージンと言うよりも、プロセスウィンドウと呼ぶ考え方の方がしっくりきます。

例え狭くても窓自体がないと始まらない

■ おわりに

以上、数式ではなく現象面からの定性的な語り口もたまには良いかなと思い書いてみました。数式や各種論文で学び理解することも重要なものの、業務は結局のところ定性的な理解が支配的だったりします。そちらのスタンスで書いたゆえに、回折や干渉、レンズ内での光の振る舞いなど、めちゃくちゃ解像性が低い説明になっておりますが、ひらにご容赦ください!

おしまい。


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