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【プリズンライターズ】所内のコロナ事情 ・7

今回の大型連休はコロナの影響を受けず、久しぶりに休みとなりました。

 休みとは言ってもコロナ自粛生活とたいして変わらない上に、まだどこか不安も残る中だったので、気分的にも休みとはなりませんでした。

 連休明け、コロナが5類へと移行されましたが、施設側の対応はいまだコロナ禍で、変化といえば、感染者が出た場合、その人のみを隔離することと、食堂内のパーテーションが取り除かれた位で、いまだにマスクとソーシャルディスタンス、手洗い励行などなど、この状態はまだしばらく続きそうです。

 天気が悪い日は決まって寝られず、消灯後建物の軋む音がいつもより耳を突く。
最近は地震も多いこともあってか、その音が不安を煽ってきて,余計寝られなくなる。

 建物が倒壊するような地震が起こっても、扉はひとつひとつ手動でしか開かないため、運良く圧死を免れたとしても、自力で脱出なんて絶対に無理だし、部屋には非常食すら置いてない。
多分、助かる見込みはほとんど無い。

 なんて考えつつ、寝られるかなと思っていると、看守の足音で嫌でも目が醒めてしまう。
いつまでたっても慣れないものだと、つくづく思う。

 
 5月3日、GWが始まったばかりなのに、折返しだとか報じているTV。
郵便の業務見直しのためか、2・3日で届くところが1週間近くかかるようになったらしい。

 ちょっと前、局長様のレターでアウトロー系YouTubeが人気だとあった。
たまたま購入した「日本のタブー4.0」/白石和彌他宝島社新書1080円に、そのアウトロー系YouTubeの記事が載っていた。
事の一端を知ることができるので、興味がある方は是非。

 とは言っても、書籍化されないことには、ネットすら見ることも出来ない。
所内はいまだコロナ禍が続いていて、ちょっとした事なのに、世間との距離が広がっているように感じてしまう。

 暑いか寒いかしか感じられない生活が長いためか、自分の体温調整機能が衰えており、暑くなりはじめると対応しきれず、必ず体調を崩すようになった。
これからだんだんと暑くなってくるので、倒れる時は倒れると諦め、まだまだ出口すら見えないけど、できることを続けていこうと思う。


よくある理不尽 ①

 衛生係として作業に精を出していると、いつものように計算工の方が願い事をまとめたメモを持って来た。
その中に「番号記入」とかいう違和感しか無い事項があって、計算工曰く、「番号が書いてある片布が破れた」ということらしかった。
申出者は、事あるごとに工場着を交換しに来る作業者で、前日もズボンの修理交換で、代わりのズボンを貸し出していた。

 その番号記入する作業着もズボン。
破れた片布も不自然だったので、本人に事情を聞き、ズボンを見せてもらう。
んで、後で対応すると言って戻ってもらうも、はいてたズボンが昨日貸し出したズボン。
借りパクか?でも確証はない。
別の作業者から昨日の帰り更衣室で何かやってたとかいう話も耳にし、明日になれば、洗濯工場から工場着も戻ってくるので、貸し出したズボンも確認できる。

 そこまで考えて、担当に流れを報告、番号書いてなくとも作業には支障は出ないし、自分としては洗濯から工場着が戻ってきてからでも十分対応できるので、ちゃんと確認とってから本人に聞こうと伝える。
すると担当は「本人を呼んで聞けばいい」と言う。

 書いての通り、ズボン一つにここまでやる作業者、作業場所でも工場でも問題児だったこともあって、担当に、そんなことしてもシラ切られるだけで逆効果だと。
行事も間近だし何かあったら責任とれません。確認とってからの方がいい、と言う。

 
 裏取れてれば、何かあったとしてもちゃんと着地できるが、今はその破れた片布しか無いので100%言うことができないから、そっちの方が無難だとか考えてると、担当は、本人呼んで聞けば済むことだろう、と言う。

 「責任とってくれるんですか?何があっても知りませんよ?」と言うも通じず、担当は当人を呼び、話を聞くも案の定シラを切った当人を叱りつける。
その様子を手伝いの人と2人して見守っていたが、当人はシラを切り続けた。
この後始末どうすんの?と不安になっていると、計算工も心配して来てくれた。
当人は作業に戻り、とりあえずこの日は終了、明日を迎えることとなる。

 
 作業者がやったことは、帰りの更衣室で、次の日着る工場着のズボンの番号部分を破り所持、破った方を洗濯に出し、貸し出されてるズボンの同じ所を破り、次の日もそのズボンをはいて願い事で申し出たという流れになる。

 次の日の朝、舎房着の洗濯もあって、バタバタと回収、準備とやってると突然昨日の作業者に胸ぐらを掴まれる。
自分のことを棚に上げ、罵詈雑言言ってくるも、手を出す様子はない。
何この茶番は?こっちはただでさえ忙しく、昨日の事なんてすっかり忘れてたのに、とか思ってると指導補助が来て仲裁に入ってくれる。
手は離したので、とりあえず俺は、時間ロスした分、山積みの仕事にとりかかる。
下手なこと言うと争論とかいうとてもめんどくさい事になるので、グッと堪え続け。
その作業者も何がしたいのかサッパリわからんまま立ち続けてるし。

 
 見てるんなら手伝えや、とか思いつつこのまま収まるかと思ってたら、職員が来たタイミングを見計らって、再び胸ぐらを掴んでくるし、次は職員が割って入ってくるし。
再び何この茶番は?と思いつつ、何か立ってろとか言われても、洗濯回収の段取りと引継ぎとを伝えて、処遇→調べとなる。

 
 調べと言われても、何も言い返してないし、100%非がない。
担当も知ってることなのに、なぜか隔離となる。そのせいで仕切っていた運動会には出場できず、残暑厳しい中担当は一度も来ることがないまま、24日間も調査隔離となり、昼に突然管理棟に連行され、長々と続いた調べは解除となった。

 言い渡しで解除と言われ、やっと戻れると思ってると、配役先が別の工場に変えられていた。
すぐさま言い渡しの統括?に言い返すも、「とりあえず行け」としか言わず、おかしいでしょと詰め寄るも、配役先は戻らないままだと言う。
その時、統括が「わかってる。ちゃんとする」と言ったので、渋々荷物を持って配役先へ向かった。

 納得なんてできるはずもない。ただただ理不尽でしかない。ちゃんと物証もある。
極端な話、ズボンパクったのをごまかすため、捨て身で来てんのにこれじゃ向こうの思うツボじゃん。
そんなことわからないはずもないのに結果がこれとは。

 何ソレ?結局真面目に頑張ってきたのに、まさか担当に裏切られるとは。
15年耐え続けたのに、本当刑務所だな、とつくづく思うしかなかった

05.5.16

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