青きエーテル(永遠の少年の詠める稚拙なる和歌)
霜柱踏み理由もなく心躍らん幼子のごと
池の氷石もて次から次へと割りて気持ち良かりし少年の頃
理由もなく己が身体のみは透明の如き気がしておりし幼少の頃
音のないメロディー永遠のような一瞬二階堂CMは素晴らしきかな
永久の未完成これ完成なりと賢治云ふ
神聖なる好奇心失うべからずと蓬髪のアインスタイン翁云ふ
やむことなきこの胸を締めつける寂しさ宇宙への郷愁と呼ばん
矛盾撞着光あれば翳あり人間存在とはげに不思議なるものかな
齢四十六にして思わん少年の頃の心と少しも違わずと
ここではない何処か渇いたように求める心如何にかならんかな
今ではない過去未来彷徨うように想う心如何にかならんかな
エーテルの青き夜独り市営プールに佇みし青春の頃
傷負いし心もいつの日か光となれ貝の己が内に真珠を育むがごと
しめやかに微細なる雨降る晩秋の午後独りもの想うなり
雪と呟けばその音わが名のうちに含まれており嬉しきかな
なべての生物の負ふ苦しみ哀しみいつの日か晴れかしと希求す
真綿のごと初冬の雪舞う白きマリア像のうえにも
ドイツの老シスターの笑顔見て一瞬にして心晴れし不思議なる力かな
フランスの修道院にて出会いし老修道女ふと思い出さるる初冬の午後
オルガンの音漏れくるをしばし足とめて聴き入る木造の教会の傍で
我ら何処から来我ら何者我ら何処へ行くやとゴーギャン天に問ふ
宇宙と我という意識の存在する意味知りたきも解答得ず
他の誰でもなく何故に我は我なりや不可思議なる思い止まず
インベンション聴きつつ柔らかき冬陽の中で午睡す幸せかな
夏の日は死者の群れのネガと思ほゆ不思議なれど
夏の空青き日に透明な死の匂いを嗅ぐ
遠き大過去の時間に青き水惑星に棲みおりし妄想払えず
輪廻転生疑いもなく腑に落ちる一瞬あり理由はなけれど
木苺摘み食せよと手渡せしヌベールの老シスターの笑顔忘れず
冬窓の朝露のプリズムの色幾度か角度を変えて見る
冬の朝冷たき林檎さくりと食すれば天人の食事斯くなるものかと空想せん
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