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浪漫チスト・D

ここ数年、
同世代が活躍する姿を特に見るようになった。

目にする度、
その人には羨望の目を向け、
己には蔑んだ感情を催す。

現在は活動休止してしまったバンドだが、
ロックバンドPEDROのメンバーであり、
かつアイドルグループBiSHのアユニ・Dも、
その羨望の的である。

若くしてアイドルグループに加入したが、
今では確固たる「個」が確立されているように思える。
その人だから出せる色。

色にこだわる性分なだけあり、
その人の唯一性に特に惹かれる。

「歌が上手い」よりも
「あの人が歌ってる」という、
形容し難い個性に魅力を感じる。
彼女の歌声もまた個性のある色をしている。

あの若さにしてアイドルグループとロックバンドを兼任した彼女。
バンドを組むように企画されて初めて、
ベースを手にした。
詞を連ね、音を奏で、声に色を出す。

『無表情な天井見つめ』なんて詞を
20歳前後ながらにして描く姿には、
曲名の如く『浪漫』がある。

その生命力とも言うか、
意志の力とも言うか、
個性的な声色の中に強さを感じる。

衝動的な詞を飛ばしたり、
泡のような世界観を描いたり、
とにかく、
個としての強さを感じる。

音楽に助けられてきたと述べる彼女。
同じく音楽に頭の上がらない私。

聴いてきた音楽にも近しいものを感じる一方、
同じ人間だのに、
その世界への距離に果てしない遠さを感じる。

私が何かを作りたい衝動に駆られるのは、
いつだって羨望と渇望が種になっているからだと思う。
けれども、
作れば作るほどに距離の遠さを感じ、
作らなければ飢えに飢える。

羨望と渇望に水をやるつもりでいる。
けれど、
その水はいつだって胸の奥底に滴る心の涙腺から出てきたものであって、
花にもやれないしょうもない水。
そして咲いた花はいつだって絶望だった。

望みに対して、
羨み、渇き、
最後にはそれそのものを絶たれる。

だからこそ、
何かを作ることに浪漫があるのだろう。

彼女の個としてのあり方ひとつで、
その唯一無二の色で、
何かを作る浪漫に導かれる。

『才能はいらない
 問題ない
 ムードがありゃ良い
 問題ない』

彼女に言わせりゃ『無問題』であるなら、
なんとかその浪漫にしがみつけそうな気がしてくる。

気がするだけかもしれないが、
それはそれで『無問題』。


PEDRO OFFICIAL SITE
https://sp.pedro.tokyo


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