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「パートナーシップ証明書って何?」詳しく紹介!

渋谷区を皮切りに多くの自治体で取り入れられるようになった「パートナーシップ証明書」

ところがLGBTs当事者でない方からは「渋谷区や世田谷区だと同性でも結婚できるようになったんでしょう?おめでとう!」と言われることもあります。当事者である私自身も、情報を調べ、噛み砕いて理解できるようになるまで少し時間がかかりました。

その「パートナーシップ証明書」について、詳しく紹介してみたいと思います。


同性婚とパートナーシップ証明、どう違うの?

よく聞かれる「同性婚とパートナーシップ証明の違い」ですが、誤解を恐れずごく簡単に言うと、以下のような点が異なります。

●同性婚は「国の制度」、パートナーシップ証明は「自治体の制度」です。
●同性婚は「法律上の効力があります」が、パートナーシップ証明は「法律的な効力はありません」。
※つまり、同性婚をしたパートナーは「あらゆる法律で配偶者と認められます」が、パートナーシップ証明をしたパートナーは「民間企業や病院などで配偶者と認められることがある」一方で、それを企業などに「強制することはできません」し、相続などができる「配偶者」としても認められません。

つまり、自治体のパートナーシップ制度は「その自治体を出たら効力を失う」「法的拘束力はなく、法律上の配偶者として扱われない」という性質のものなのです。

パートナーシップ証明書の効果

ただ、パートナーシップ証明書が全く意味のないものであるかというとそうではありません。以下の記事では、実際に証明書を受けたゲイのカップルへのインタビューで、「実際に医療が必要になる場で、すんなりパートナーが病室に入れてもらえた」などの効果があったことが書かれています。


「出会いから34年目のパートナーシップ宣誓が“変えた”こと「日常の安心感が違う」「お守りのよう」【あるゲイカップルの記録③】」
“宣誓から1年が経った2020年1月、伊藤が高熱を出し、千葉市立の医療機関に行った。診察には、当たり前のように簗瀬も立ち会えた。「さすが制度がある自治体の施設だ」と二人は思った。また、これまでは二人の関係を初対面の人に説明する時、なかなか理解してもらえないこともあった。今では、そういう人に市から発行された「パートナーシップ宣誓証明カード」を見せると、相手は納得するのだという。「見せなくても分かって欲しいですが、公的なものにはやはり効果があるなと感じます」と伊藤。”

法的な効力がなく、将来的には同性婚が望まれますが、それでも「あるに越したことはない」パートナーシップ証明書。それでは、どんな手続きで発行してもらうことができるのでしょうか。


各地のパートナーシップ証明書発行条件

パートナーシップ証明書は各自治体によって発行の条件が異なります

お住まいの自治体が「パートナーシップ証明書発行可能」であれば、是非一度条件をご覧になってみてください。

一例として、初期に導入を開始した「渋谷区」と「世田谷区」が対照的な申請条件となっていますので、比較しながら見てみましょう。


渋谷区のパートナーシップ証明書

渋谷区でパートナーシップ証明書を発行するためには、「パートナーシップ合意契約書」と「任意後見契約」を公正証書で締結する必要があります。この二つの書類の内容は、過去の記事でも触れていますので、是非ご参照ください。

パートナーシップ証明書の発行自体は1通三百円の手数料が必要なのですが、そのほかにもこの二つの書類を公証役場で作るために、5万〜6万円程度の費用が必要になります。

手間もお金もかかるかわりに、証明書としての効力が増し、生命保険や住宅ローンの審査時に提出し認められることもありますし、「合意契約書」「任意後見契約」はこれ自体も同性カップルの人生において、有効となる局面があります。

また、手続きが厳しいのは、条例で「証明書を持つ同性カップルを結婚に相当するパートナーの関係として、区内の事業者に最大限配慮するよう定めたもの」であるという理由もあります。同性パートナーが不利益を被ったとき、区が民間企業に対し是正勧告や事業者名の公表ができるのです。

参照:渋谷区HPより「渋谷区パートナーシップ証明 発行の手引き」
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/assets/com/partnership_guide.pdf


世田谷区のパートナーシップ宣誓

一方、世田谷区で行っているパートナーシップ宣誓は、事務手数料が無料で、さらに必要書類も「本人・住所確認資料」「他の人と婚姻していないことの確認資料(戸籍抄本)」のみなので、手間や時間をかけずに宣誓を行うことができます。

「条例」ではなく「要綱(事務手続きマニュアル)」に定められており、渋谷区のように民間事業者に対する是正勧告や社名公表などは定めてはいません。


「同性婚」実現までの繋ぎとしての「自治体のパートナーシップ制度」

個人的には、自治体によってこういった違いがあること、また、制度のない自治体では同性パートナーが不利益を被りやすいこと、また、法的な拘束力がないことから、やはり国レベルの取り組みである「同性婚」が必要であるとは思います。

ただ、それが実現するまでの間の取り組みとして、「自治体のパートナーシップ制度」が多くの自治体で取り入れられ、少しでも当事者の不利益が少なくなることを望みます。

一度皆さんも、ご自身の自治体に「パートナーシップ制度があるかどうか」「その内容はどんなものか」を調べてみてはいかがでしょうか。

最近はパートナーシップ制度のない自治体に住んでいる方でも、合意契約書や任意後見契約を結んでいることで住宅ローンをパートナーと一緒に組めるような金融機関も出てきています。公正証書作成のための情報提供も行えますので、住宅購入の際には、是非プリンセススクゥエアーにご相談ください。


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