「60万円貸してください」と懇願する若者

「60万円貸してください」

過去に漫画村というサイトを作って逮捕された経緯がある星野ロミさんが、Twitterで「情報商材に引っかかる洗脳された18歳からのDM」と、とある青年からのDMをスクショで公開しているツイートを見た。(2023年6月のツイート)
(引用:https://twitter.com/romi_hoshino/status/1673164578916810753

「投資のオンラインサロンに入会したいので60万円を明日までにお借りしたいです。」と星野氏にDMを送る「だい」と名乗る18歳の若者。
それに対して「いいですよ」と即答する星野氏だが、貸し付けに対する対価を尋ねると、「(借りた60万円を)65万円にしてお返しします」と回答するが、星野氏は担保のような意味合いで借り受ける現時点で提供できる何かを求める。

短絡的

この時点で18歳のだい君は星野氏に「(年内に)8.3%程度のリターンを付けて返済を行う」と提案をする事になるが、個人的にはここで一番モヤっとさせられた。
期限が年内ということは残りあと6か月あるという事になるが、その6か月で65万円という金額を稼いで返済出来る当てがあるのであれば、それを稼いでから自己資金でオンラインサロンに入会すればいいじゃないか、とならないだろうか。
それをたった半年の短縮を期待し、何の苦労や努力もせずに「今始めたいから」という幼稚な動機でお金を持っていそうな赤の他人の資金力を当てにするその思考回路はあまりにも短絡的ではないだろうか。
無担保でお金を貸してくれるのは親兄弟ぐらいで、外部の、しかも全く信頼関係の構築がなされていない赤の他人からお金を借りようとするならば、それなりの担保または法外なリターンを要求されるのは当然で、それにより銀行の無担保ローンなどよりもより大きなリスクを伴う事になる。

資金調達方法

この「だい君」の素性を全く知らないので適切なアドバイスとなるかどうかは不明だが、まず「世の中にはお金を借りられる窓口がたくさん存在しているという事」と、「お金を借りる事のリスク」を知るべきだろう。
それは先述した親兄弟や銀行、そして消費者金融などが挙げられるが、60万円程度の金額であれば自分の身の回りで調達することが出来る。
そして、借り入れる先によって返済期限や借入利息の金額などの条件が異なる事により、それがどのようなリスクになってくるのかを調べる事が彼にとって重要になってくる。
親兄弟だからと言って無期限無担保という訳でも無いし、銀行でも無担保ローンとなるとそれなりの利息を付けて返済をしていかなければならなくなる。

なぜ「60万円」なのか

この時点で「60万円」という料金設定をしているオンラインサロンの意図が透けてみえてきたのではないだろうか。
多くの「オンラインサロン」と名乗る詐欺野郎どもは、その料金設定を30万円~60万円程度にしている事が多く、これは上述した資金調達が容易な範囲と重複している。
つまり、「これぐらいなら何とか工面出来るし、そうすれば将来的に億単位の稼ぎが生まれるんだから、今ここで借金したって大丈夫」という謎の思考回路を生成させるためのマジックナンバーなのだ。
詐欺師どもの理論は基本的にいつも同じだ。

「お金もスキルもありません」

と、この若者「だい君」は言う。
自分の弱さを認識しているが、それを克服しようとする気概が無いのか、もしくはどのようにその弱点を克服するのかが分からないのだろう。
しかし、お金が無い=スキルを獲得できない ではないので、まずはお金をかけずにスキルを身に着ける事から始めるべきだろう。
今のご時世、プログラミング言語を無料である程度まで学べる親切なサイトが存在しているし、英語などの外国語も同じく無料で学べるサイトに加えてGoogle翻訳という最強ツールを使えば比較的楽に学習する事が出来る。
他にも、Youtubeなどの動画サイトでは電気工事士の資格取得に役立つ動画なども存在するので、インターネットが発達する以前と比較するとお金をかけずに学習する環境は整っていると言える。
お金がないという「だい君」もTwitterにアクセス出来ているのだから、スマホかPCのいずれかは所有しているのだから、これらの無料教材にアクセスする事はたやすいはずだ。
まず、それをやろう。

種銭という概念

今時の18歳の若者は「種銭(たねせん)」という言葉を知らないのかも知れないが、これは「お金を貯めようとするときに、その基となる原資金」を意味する。
つまりゼロの状態からは何も生まれないという事だ。
商売で儲ける為には商品を仕入れる必要があり、その仕入れをするためにはまずお金が必要だ。
仕入れをする資金すらままなければ、商品を売って稼ぐことが出来ない。
資本主義の世界では至極当たり前の事だが、多くの事業主は原資金の調達に奔走し、その結果ビジネスを始める事が出来ている。
そして、ほとんどの事業主は原資金を銀行などから融資を受けている事だろう。(※融資は銀行などの金融機関の審査を経て、借入を行う事)
種銭がゼロだけど、今すぐ稼ぎたいというのであれば、それはもう残された唯一の資本である自らの身体を使って稼ぐしかないという事も知っておくべきだろう。
肉体労働をしろということではなく、ファミレスやコンビニのアルバイトでもなんでもいいし、高い専門スキルを求められる事無く働くことが出来る場所はいくらでもあるのだから、そこでまずは種銭を作る。

「お金を稼ぐノウハウは他人に教えない」のが常識

この「だい君」が騙されかけたように、昨今「俺は年に1億稼いでるぜ!」とその昔に大衆紙の裏表紙にあった万札風呂のように札束を見せつけているどうしようもないクズ詐欺師が「オンラインサロン」などと名付けて、無知な若者達からお金を吸い上げる行為が横行している。
星野氏も言っているように、1億円稼げるようなノウハウを60万円ごときの端金で教えるわけがない。
真っ当なビジネスをしている人の思考では、「お金を稼ぐノウハウは他人に教えない」のが常識で、他人がそれを真似して儲けるようになれば、それはすなわち自分の稼ぎが減る事を意味するからだ。
なので、「あなたもこれを学べば稼げます」というのは、100%詐欺である。

総評

つまるところ、投資は他人からお金を借りてやることではない。
お金が無いから投資をしてお金を増やしたいと考えるのは普通だし、それはモチベーションになる事は理解出来るが、種銭を自分で用意して文字通り身銭を切って投資し、知識や経験を身に着けていく以外に正解は無い。



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