勘だけ良くて困る話~その1~

随分前、私は就職先を迷っていました

サラリーマンor他の職業で

自分にはこれと言って秀でたものなんてありゃしません

地道にって解ってます、が何か諦められません

ある時、仕事情報誌に”彫金師見習い募集・・・未経験者歓迎”の

文字を見付け早速連絡

真の”未経験者” わたくし道具を使って何かをしたといえば~

”ガンダム”のザクだかのプラモデルを

オリジナルカラーで塗装できたのが自慢

当たって砕けましょうの面接当日 

自宅から1時間もかかる募集元の彫金工房へGO!

寒い時期じゃないのに手足が冷たくなる緊張感の中、

電車とバスに揺られ何とか到着

工房は一軒家 親方含め全部で3人の仕事場

先輩たちは難しそうな作業をしているその傍らで

親方と面接&実技テストォ

50歳代前半の親方は厳しそうな雰囲気を醸し出してます

話は順調に進み面接は淀みなく進行

問題は実技テストです

・・・無垢のツルツルした固定されている銅版に

タガネという釘のような小さな金属の道具を指先に持ち

ハンマーでたたきながらにフリーハンドで直線をひくという所作

”これ、いきなり出来るかぁ~!?”内心超消極的姿勢でやってみる

チッチッチッチ・・・

ハンマーでたたいていくと・・・!

思ったより上手く?!・・・というより簡単!!?

まっすぐ線をひけた!!(けがけた!!)

親方も背後から「お前初めてじゃないだろう~?」

「いいえ 正真正銘初めてです」

「あん??わかった もういいから帰って良いよ」と親方

手応えは十分 

案外 初めてやる事はそつなく出来る私だが・・・

それにしても上手くやれたな実技

数日後 見習いに決まったとの連絡がキタの

よっしゃ~!いつかオリジナルデザイン作ったるぞ!

フライング喜びが激しかったです

週明けから通い始めました

見習いのやることは

・誰よりも早く出勤し清掃&親方、先輩達の作業場所の整理・準備

・日々の掃除、買い出し、作業場の後片付け

・・・そして皆が帰宅した後、一日の最後に30分だけ

自分の練習時間 例の銅板にタガネで直線をひく時間

で、練習した物を翌日親方に見てもらいます

初心者の身 しんどい毎日が始まりましたが私を 先輩たちは

常々気遣ってくれます 心強い!!・・・

が、面接でできた銅板にけがく作業が2週間経っても

一度も上手くいきません 面接の時のように・・・

親方の表情もその頃になると曇り始めました

「おまえ下手くそだな 練習で出来た事がないぞ」

「え、遠視だからかたまに銅板がボヤケる時が・・・」とちょっと苦し紛れ

「遠視用の眼鏡作ってこい!!」親方そりゃ怒ってます

6万円かけて眼鏡作成・・・で眼鏡は役にたちました!!

良く見えるようになりました 近い所がハッキリと!

・・・ハッキリと銅板の表面をミミズがのたくったような線をひいたのを

毎日見せられました・・・

それから10日後・・・やはり練習で銅板に真っすぐ線がけがけません・・・ 

親方が私の練習でけがいた銅板を見ながら

「お前もう辞めちまえ 才能がない

20人も面接してお前程上手くけがけた奴いなかったから決めたのに

~また面接しなきゃならねーじゃねーか!準備とか片付けは

良くやったがセンスがねぇから」

・・・何故か初めてやる事には勘が冴えるんですよ・・・

自分ではどうしようもないんですが 

あ~っ?!!!バスの定期券を今日買ったばかりなのに・・・

まさに トボトボと帰ったね 



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