ジェイラボワークショップ 第 56 回『教育研究部初回オリエンテーション』【教育研究部】[20230522-0528] #JLWS

 今年度の初回 WS では、教育研究部が昨年 2022 年度に行った活動を計 3 回の WS の内容を主として振り返り、また 2023 年度の活動に向けた各部員の意気込みを紹介しました。以下はそのログとなります。

 なお、見やすくするために、適宜段落を変えたり太字にしたりと一部変更を加えた箇所があります。ご了承ください。

DAY1 部長あいさつ

■ シト

おはようございます。 
教育研究部部長のシトです。
1週間よろしくお願いします。

前年度は、義務教育とは何か、ICT教育について、身近な教育問題を扱いました。
このオリエンテーション期間中はこれらを振り返りつつ、各部員の意気込みと扱っていきたいテーマを発表します。

スケジュールは以下の通りです。

1日目 挨拶
2、3日目 蜆
4、5日目 シト
6日目 隕石君
7日目 まとめ、今年の方針

では、よろしくどーぞ.

DAY2 2022 年度第 1 回 WS 振り返り

■ 蜆一朗

 こんにちは。教育研究部副部長の蜆一朗です。
今日と明日は僕が担当させていただきます。よろしくどーぞ!

 今日は昨年度の第1回 WS の概要を振り返り、部長の多忙等で滞っている本来の活動目的と意識を再確認したいと思います。明日には僕個人の意気込み(所信表明)を発表します。

2 日目 「義務教育を問いなおす : 昨年度第 1 回 WS の振り返り]
 我々教育研究部は、教育を施す側の資源および能力という現実面を一旦措いて、義務教育における理想はかくあるべきか、ということについて考えています。これはシト部長の「義務教育を定義し、教育とは何かを定義し、高校教育とは何かを定める」という目標設定を念頭に置いたもので、その一環として昨年度は『義務教育を問い直す』(2005 ちくま新書) の輪読会を行っておりました。当書を読み進めるうえで根幹をなす重要な考え方を WS ログから振り返ります ;

「教育には、社会全体の利益・福祉を追求すること、そしてその構成員としての個々人の利益・福祉を追求することの両方が求められています。個人が自分の生きたいように生きるための知恵や技術を身につけさせることももちろんですが、そうして得られた能力が社会に還元されることが望ましいです。逆もまたしかりで、集団の利益を重視するあまりに弱者を見捨てたり労働者個人の権利や生活を侵害することがあってはいけません。このように、どちらかに偏るのではなく、全体と個人という相互依存する存在のバランスをうまくとりながら"公共性"を備えた体制を作っていくことが非常に重要であります。」

2000 年代初頭に小泉内閣の下で行われた教育改革では、「ゆとり教育」政策を失敗と結論付け、方針を撤回し教育課程を全面的に見直すことに始まり、行政・財政・法制度までもが改められました。当書では「(軍国主義体制下の 1930 ~ 45 年当時の教育が孕んだ "第一の危機" に次ぐ) "第二の危機" である」として、この動向に批判・検討を重ねています。全体と個人のバランスという観点から見れば、"第一の危機" とは全体へ、"第二の危機" とは個人への傾倒が過ぎたことにより、教育の重要な要素である "公共性" が侵された事例であるということができます。昨年 8 月の WS では、この部分が伝わるように高校レベルの歴史の知識も踏まえながら説明したつもりでした。この意識をもとに、当時の教育改革について反省を行うともに、教育界を取り巻く現状を吟味して我々の見解を固めていきたいと思います。

DAY3 蜆一朗副部長の意気込み

■ 蜆一朗

3 日目 [意気込み]
 もともと僕が教員免許を取ったのは、数学を教えたいからでも教員になりたいからでもありませんでした。いつぞやのnote記事でも書きましたが、大学に進むにあたっての父との約束でもあり、自分の能力を最大限生かす道だと妄信していたからです。期待に応えるだとか誰かの役に立つだとかいう大義名分を胸に自分なりに頑張っていたつもりでしたが、実際には自分の本音を押し殺して心身を削っていくばかりでした。僕が大学院にいた 3 年間はちょうどコロナ禍と被っていて、時間だけはたっぷりあるのに進捗がなかなか生まれないという状況が焦りに拍車を掛けたのかなとも、今となっては思います。ただ、教育や数学への興味関心が消えうせたわけではありません。必要以上に根を詰めすぎず、気を楽に自分のペースを守ることさえできれば大丈夫だと思います。逆に言うと、学校や予備校で働きながらでは、理想と現実の差に苦しんで大学院にいた頃と同じ失敗をするような気がしています。就活もこの点に留意しながら焦らずにやりたいと思っています。

 教育研究部の主たる目的は「義務教育とは何かを定める」、すなわち理想の義務教育とはどんなものであるかを考えることです。とはいえ理想の中に何でもかんでも詰め込めばよいというものではなく、あくまでも現実に足が付いた状態でなければ机上の空論に過ぎません。昨年度の反省でもありますが、自分なりの素朴な感覚を大事にし、議論を多く交わして、頭のなかでぐるぐると迷い込まないようにしたいと思います。僕はもう教育の現場にはいなくなったので、一歩引いた視点から教育について考えることで新しい知見を得てみたいとも思っています。

 ここ数カ月を家で過ごして、自分よりもずいぶん若い子たちが闇バイトに走る事件・報道を多く見聞きしました。また、父が元体育教員で 35 年間に渡って荒れた地域の生徒指導部にいたこともあって、少年犯罪の事例や逮捕された同僚の話を小さいときからたくさん聞かされたことを思い出しました。生き字引がすぐ身近にいるので、そういった観点から話題を提供したり、道を外れかけている事例で我々ができることを考えたりしていきたいとも思います。

DAY4 2022 年度第 2 回 WS 振り返り①

■ シト

こんばんは、部長のシトです。
今日と明日は自分が担当します。
よろしくどーぞ。

まずは、昨年度の2回目のWSの復習から始めます。
スケジュールとしては、
 1日目:WSの復習
 2日目:WSの復習の残り&意気込み
となっています。

「ICT教育とはなにか」
 教育を考えるにあたって最近話題となるICT教育について扱いました。
今日はこの内容を振り返っていきましょう。

⑴ 定義とその歴史
 ICTと聞くとパソコンやタブレットを使っていればいいといった考えをする人が多いです。事実、ネット上で教師たちが発信しているものの多くはそうなっています。しかし、本当は違います。ICTはInformation Communication Technologyの略です。前者の考えはIT教育であり、Cの部分がありません。このC(Communication)が重要なのです。ITを使い、コミュニケーションを活発化させることがICT教育です。
 では、このICT教育を行うにあたって国はどのようなことをしてきたのでしょうか。年表を用いて見てみましょう。

  • 2009年 ICT維新ビジョン
     2050年を見据えた地域の絆の再生の具体的施策例としてICTを活用した教育(フューチャースクール)が出てきます。

  • 2010年 フューチャースクール推進事業という総務省の実験
     上記のビジョンを実現するための実験として3年間実施されました。実験対象校にはタブレットPCの配布や電子黒板のようなものが配備され、それに必要なインフラ整備なども行われました。

  • 2020年 GIGAスクール構想
     上記の実験から得られたデータをもとに改善を進め、実施されました。


⑵ ICTの現状
 
現場でのICT活用の例を、
  ①説明する手段としてのICT
  ②つなげる手段としてのICT
  ③調べる手段としてのICT

の3つの軸から挙げました。

 ①では、教員から学生への一方向の情報伝達に焦点を当てました。例としてはデジタル教科書や電子黒板の同時共有による板書の代替を扱いました。電子黒板は生徒の書く力の育成面では否定的な声はあるものの、デジタル教科書との併用によって授業の幅は広がり、ただの効率化だけではない効果があるとなりました。

 ②では、教員・学生・保護者間の情報のやりとりに焦点を当てました。
ここでは、空間的距離を越えた共有・同時性のあるテキストのやりとりが挙げられました。

 ③では、学生の調べ学習に焦点を当てました。
ここでは、物理的に手の届かない情報の入手・間接的なネットリテラシーの上昇・プレゼン能力の育成が挙げられました。


⑶電子黒板について
 
電子黒板について
  ①黒板の代わりなのか、
  ②デジタルテレビとの違い、
  ③活用の効果を高めるためにどうすればいいのか
を扱いました。

 ①では、強みとして、動的な表示に向く上に、今までの指導法が一元化できることと色彩や衛生問題が解決することを挙げました。これらは、ICT教育の重要部分であるコミュニケーションに時間を多く割けるという意味で、今までの上位互換であると評価しました。

 ②では、プロジェクターのように電気を消して部屋を暗くする必要がないこと、休まずに出席し続けないといけないというプレッシャーが減ることを挙げました。また、こうした変化をもとに評価の在り方や書く力が伸ばせなくなるのでは?という内容を扱いました。評価の在り方に関しては、新しいものと今までのものの両者の特性を理解して考えていくことが大切だとなりました。書く力に関しては、何かを表現したいであったり、伝えたいという気持ちが子どもに湧き上がることの影響の方が大きいと考えたため、あまり関係がないとなりました。

 ③では、①と②で懸念されていた問題を解消し、効果的に活用するにはどうすればいいかについて、指導のねらいや児童生徒の実態に応じた題材や素材を教員が十分吟味して選ぶ」ことや「授業における ICT 活用のタイミング、発問、指示や説明といった従来からの授業の展開との融合も重要」だということを挙げました。


DAY5 2022 年度第 2 回 WS 振り返り②&シト部長の意気込み

■ シト

⑷ タブレット利用のメリット・デメリット
 
メリットとしては、オンラインで実施できることや一元化できることを挙げ、学習における個別最適化を推進することができることを述べました。
 デメリットとしては、ICT理解の個人差や学校による機能制限による活用の難化を挙げ、ICTに対する理解が十分でないことを述べました。


⑸ タブレット利用の構造的な問題
 
ここでは、隕石君の体験が書かれています。ICT教育を経験した者の意見として、コミュニケーションに関する問題提起をしてくれました。ICT教育の重要な部分であるコミュニケーションを活発化させるには、いままでの教育におけるコミュニケーションにたいする態度が影響しているとし、これについてより深く考える必要があると述べてくれました。


⑹ デジタル化による教育方法は本当に新しいのか
 
新しいのかどうかを論じるために、それ以前の教育と照らし合わせることでICT教育の役割や危険性について考えていきました。例として義務教育レベルの算数・数学を挙げていきました。結論としては、義務教育は「どうしてもこれだけは譲れない」と考える内容からカリキュラムに盛り込むべきであり、内容を吟味して一部改める場合であっても、今までのものを否定するようなものであってはいけないとなりました。また、前提として、将来の社会の担い手たちに身につけさせたいことはなにか、そしてそれをどう伝えるのかという問いがあり、この問いを問い続ける過程でICT活用が効果を発揮するものがあれば最大限に活用することが大切だとなりました。

■ シト

意気込み
 では、意気込みなどを書いていこうと思います。

 教育研究部を始めてからそこそこ経ちました。今では部員がいますが、最初は僕一人だけでした。自分の変な完璧主義なところが主な原因ですが、もう一度考えてみるとどこか自分をさらしたくなかったのだと思います。他の面ではあほみたいにさらしていましたがw
 そんな感じだったので、部員が入ってから様々な問題が生じました。それらを改善しながら部としての連帯感を作っていきました。今年度は、これを継続させてうまくやっていきたいなと思っています。

 個人的な話だと、今年の前半は教育実習があったり、教員採用試験があったりするので、そこに集中したいなと考えています。後半は卒業研究ぐらいで、そこでは新たな民主主義の在り方について教育の視点から考えていきたいなと考えています。新たな民主主義は義務教育とは何かに非常に関係してくる内容なので、輪読を再開したときにも活用出来たらいいなと思っています。

今年度もどうぞよろしくお願いします。

扱ってみたいテーマ
・日本語学級
・多文化共生社会の教育


DAY6 2022 年第 3 回 WS 振り返り&チクシュルーブ隕石部員の意気込み

■ チクシュルーブ隕石

こんにちは。教育研究部部員のチクシュルーブ隕石です。本日は僕が担当させていただきます。よろしくどーぞ!!

 前年度三回目の教育研究部WSでは、「学校教育におけるローカルルール」というテーマについて取り扱いました。その中では、各教科のローカルルールについて、色々な状況や具体的な例を元に考えていきましたが、そのローカルルールの発生原因の多くは「授業とテストの関係性の不備」にあるのでないかと結論づけました。(なお、以下では言及しない限りテストは「定期テスト」を指すものとして読んでいただければ嬉しいです。)
 テストの意義は、授業の内容に対する生徒の学習定着度を測ることです。しかし、授業内容について問いたいということが優先して、テスト内で独自ルールが敷かれることや事前に開示されていない事項を暗黙に了解することを求められることがあります。これは、教員の側が授業とテストを一対一の関係にしようと試みる中から生じてくるのですが、生徒は当然このような視点を持ちません。つまり、生徒と教員のテストへの捉え方にギャップが存在しており、両者の視点は非対称という訳です。また、先で述べてきたように、学校教育においてテストと授業は不可分な関係となっています。つまり、テスト・授業の問題点を個別に考えるのでは表面的な問題の解決のみとなり、本質的な問題の解決に繋がり得ません。
 
 さて、ここまではテストが生徒の定着度を適切に測れるという前提で話を進めてきましたが、実際はそうとも言い切れません。テストの答案のみを見て回答者が真に概念を理解しているかを判断する事は至難の技です。テストから何を読み取る為にテストをするのか、本当に問いたい内容の力を測れているのかといったことを我々は考えていく必要があると考えています。

 また、受験の世界では授業とテストの関係が異なってきます。学校教育と受験の入試問題ではその難易度が大きく乖離している事が多く、その目的も違ってきます。入試問題の最も大きな目的は当然、「入学者の選別」です。つまり、定期テスト(制度)と入試のテストでは全く異なった議論が必要になります。現行の入試制度では、学校教育と入試が一対一に対応していない事による構造的な問題が別に存在しているということです。ただ、この問題に深入りする為にはもう少し時間が必要なので、こちらのテーマについては、また別の機会に深く取り上げようと思います。


■ チクシュルーブ隕石

<意気込み・所信表明>
 今年度は教職をとっていない(とったことのない)部員は自分だけになりました。ジェイラボの部活全般に言えることですが、特定分野にどっぷりと浸かっている人もそうでない人も一緒に活動をする事は明確に良さがあると考えています。また、そのような状況での活動は、自分のこれからや社会のこれからを考える上で大変貴重な経験となるだろうという実感があります。そのような場を大切にしながら議論を深められればと思います。
また、今年度(特に前半)は教育研究部の根本理念にもなっている「理想の教育を定める」という部分から少し離れ、身近かつ具体的事象を取り扱う事が多くなると思います。しかし、そのような活動の中でも「理想の教育を定める」という根本の意識を忘れず、問題に対して新たに提言をするという所まで達成したいと考えています。
 そんなことを意識しながら、今年度も教育研究部の部員として活動していこうと考えています。
 今年度も一年間よろしくお願いします!

DAY7 シト部長による締めくくり

■ シト

 この一週間、昨年度のwsをざっくりと振り返りつつ、部員の今年度に向けた意気込みを見てもらいました。

 今年度は、隕石君がまとめてくれたような学校教育特有の具体的な問題を掘り下げてできるだけ抽象化するというWSをしていきたいなと考えています。
 みなさんと身近な内容を扱っていこうと思っているので、ぜひ参加してください!

 では、以上をもちまして教育研究部の今年度のオリエンテーションを終了します。
 1週間ありがとうございました。

次回の WS でもよろしくお願いいたします。

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