見出し画像

「健保一括請求」という言葉から考えられる3つの問題点

先日ある質問を受けたときに、ある用語があがりました。
それが表題にある「健保一括」という言葉。

質問の内容は
「交通事故の案件で、任意一括ではなくて健保一括になってしまった場合ですが・・・これって、後から任意一括請求に変えることが出来るのですか?」という。

まず・・・正直な所「健保一括」という言葉・・・保険会社側というか、賠償現場を見てきた身である、私にとってはあまり馴染みがありません。
どうやら、質問者の勤務先でそのように指導されてきたからこそかも知れません。

これは、通常は自由診療で行われるはずの交通事故事案において、健康保険を適用して対応する事を指しているのだと思います。

元の「任意一括請求」と言う言葉を考えると
「任意保険担当が、支払い一切を窓口になって一括対応する」
というのが、正しい解釈だと私はしています。


実は、損害賠償における治療費の精算方法の多くが「償還払い」がスタンダードな方法になります。

つまり、かかった分は被害者側が一旦建て替えて、保険会社との後精算を行う。

多くの日本の窓口はこの方法が多く・・・
例えば子どもの医療証においても、住民とする都道府県外における傷病の場合は窓口での精算は出来なく、医療費の3割分は窓口負担をして、後日に市区町村等で精算する償還払いとなっています。

これは、健康保険の施行規則が大きく関与しています。


そう・・・交通事故だけが民法709条を根幹とする「自動車損害賠償保障法」に則る自賠責保険があるから、任意一括方式だけ、特別に窓口負担が無いように見えているのです。

もちろん、一括対応をしているので窓口負担が無いですが、損害賠償上における負担は別問題・・・なのは、勉強会でお伝えしていますよね?

残念ながら、ここの知識が曖昧で精査されないまま「思い込み」が一人歩きしているので、誤った認識が医療界全体に拡がっている印象です。

だから「交通事故の患者さんの治療費は0円です」という文句が、どれだけ間違った意味かを知らないままに横行される・・・

今回は、この「健保一括」という造語から見えてくる3つの問題点を解説します。

しかし・・・この問題は、私が事故受傷してからの15年で、まったくもって改変する兆しもない・・・なんとかしないと、その犠牲は患者さんなんですけどね・・・


ここから先は

2,245字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?