【ウクライヴ】FF16は最高級のFF14黄金のレガシーだった。
前書き
PS5専売という事で発売当時は手を出さなかったFF16ですが、この度ついにPC版が発売しましたね。
賛否両論ある作品なのは承知の上でのプレイでしたが、その実態について思うところが多々あったので感想を綴ります。私情、レッテル、両方マシマシなのでご了承ください。
先に結論を言うと、私はあまり楽しめませんでした。最近引退したFF14の悪印象もあって前向きな気持ちでプレイできなかったのもありますが、それを抜きにしても色々と稚拙なゲームだったなというのが結論です。
というか、同じ制作陣という事もあり、FF16のシナリオはFF14黄金のレガシーと同じ問題点を多く抱えています。
多分、黄金のレガシーを楽しめた人はFF16も楽しめたんじゃないですかね。もちろん、グラフィック等の技術的な部分ではFF16の方が大きく勝っているので、逆もまた然りとは言えませんが。
黄金のレガシーを感じた部分
黄金のレガシーで気になった場面として、物語中盤の戴冠式が挙げられます。
王となったウクラマトの指名で次兄コーナも王として即位し、新たな武王と理王が納める連王国として、トライヨラが新生するシーンです。
色々と問題のあるシーンですが、最も注目すべきポイントは誰もゾラージャが行方不明になった事に触れようとしない点でしょう。
国民の信を最も集めていた王子であるゾラージャが戴冠式にいない事に、びっくりするくらい誰も触れない。
ウクラマトやコーナ、グルージャジャにとっては大事な家族のはずなのに、不気味なほどに触れようとしない。
理由は簡単で、ここで本腰を入れてゾラージャを捜索していた場合、ケテンラムを助けられるので後のトライヨラ襲撃を防げていた可能性が出てくるんですよね。
要はシナリオ上の不都合を誤魔化すため、キャラクターの言動に違和感を持たせてしまっているんです。
これがFF16にはめちゃくちゃ多い。
自分がイフリートだった。じゃあ今まで追っていた火のドミナントは誰なの? というプレイヤーの疑問に一向に触れないクライヴ。(A,候補がジョシュア一人なので少し考えたら答えを察してしまうから)
常に一緒にいて好き合っているはずのクライヴとジルが5年経ってもくっ付かない。(A,うっかりセッ〇スしたらシヴァの力がクライヴに移ってしまうから)
しれっとトルガルが変身しているのに誰もその事に言及しない。(A,トルガルの設定に踏み込むとメインシナリオが脱線するから)
3つ例を挙げましたが、まだまだあります。
本作、シナリオの都合に合わせる為の違和感がめちゃくちゃ目立つんですよね。
特に3つ目が酷くて、今までマスコットに準じてシナリオ上の役割が存在しなかったトルガルがやっとそれっぽい設定を見せてくれたのに、それに触れないままゲームはエンディングを迎えるという。何だったんだろうあの犬。
もしかしたらサブクエストで触れていたのかもしれませんが、未完成のシナリオを完成させる為にわざわざ時間を割く人がどれだけいるかって話です。RPGのサブクエってメインで100点分楽しめるシナリオを120点にするものだと思うんですけど。
というかメインシナリオに組み込めば悪影響が出るような設定ならメインシナリオでチラ見させるんじゃないよ。それなら普通の犬のままでよかったよ。
あ、ファンの方が言うにはFF16はクライヴの物語なので他キャラへのフィーチャーは必要最低限に留めているらしいですよ。じゃあトルガルいらないよ。
とにかく中身の無いシナリオ
突然ですが、テイルズオブベルセリア(以下TOB)というゲームの話をします。2016年に発売したゲームです。
本作の主人公ベルベットは、病弱な弟ライフィセットと義兄のアーサーとアバル村で平和に暮らしていましたが、ある夜、アーサーがライフィセットを殺害する場面に遭遇します。
アーサーの意図では無かったもののベルベットも左手を化け物に変えられてしまい、そのまま何がなんだか分からないままに地下牢へ幽閉され、たった一人で3年もの時間を過ごします。
そしてたまたま脱獄の機会を得たベルベットは、ライフィセットの無念を果たす為、アーサーを討つ復讐の旅に出ます。
以上がTOBのプロローグです。
FF16と似ていますね。
もちろんパクりだとは思っていません。このようなストーリーは昔から幾らでもありますし、冒頭の展開も復讐劇の定番と言っていいでしょう。
注目して欲しいのは、このストーリーに含まれる要素です。
思い切りネタバレになりますが、TOBにおける冒頭の事件の真相は、ライフィセットが持ち掛けた計画でした。
この世界には『業魔病』という、掛かってしまったら業魔というクソ強いモンスターに変貌してしまう災害染みた病があるのですが、それを世界から消す方法をアーサーは知っていました。しかし生贄が必要という事で中々実行には移せずにいました。
それを知ったライフィセットは、病で先が無い自分が生贄になる事でベルベットが業魔に怯えずに生きられる世界を作りたいとアーサーに持ち掛けたのでした。
この話のポイントは、ライフィセットの『病弱』という設定にしっかりと意味があるという事です。詳しい事を話すと長くなるので割愛しますが、『弟』である事や『男』である事にもちゃんと意味があります。ライフィセットは妹でも兄でも姉でも駄目なのです。
ちなみに、TOBは最初に掲げた復讐というテーマに最後まで向き合い続ける版のFF16なので、FF16も体験版だけは面白かったよという方は絶対に楽しめると思います。オススメです。
さて、その一方でFF16のジョシュアはどうでしょうか。
ライフィセットと同じ『病弱な弟』という設定を持つ彼ですが、私は彼ほど病弱設定を活かせていないキャラを他に知りません。
というのも彼は病弱な上、身体への負担の大きいフェニックスの力を扱います。しかもシナリオ中盤ではラスボスであるアルテマを自らの肉体に封印して、更にデバフが掛かります。
物語を通してよく吐血しているジョシュアですが、その吐血が病気由来なのかフェニックス由来なのかアルテマ由来なのかが分からないんですよね。一応『アルテマのせいだ』といった感じで説明はしてくれるのですが。
どうせアルテマデバフで弱ってしまうのなら、幼少期は病と無縁の元気キャラだった方が吐血シーンや身体が弱っていく過程の悲壮感が増して良かったと思います。
纏めるとジョシュアの病弱設定は、活かす活かさない依然の問題です。大した意味も無く付けられた設定に過ぎず、それがシナリオを立てるどころか足を引っ張っている。最悪です。
ここからは妄想が多分に含まれますが、私はジョシュアが弟である意味も無いと思います。
騎士であるクライヴに守られるキャラなら、クライヴとは対極の華奢な妹にした方がよりクライヴのキャラを立てられたと思います。
元のFF16にそういう設定はありませんが、国の未来を担うドミナントが女性なら、アナベラが執心する理由も補完できそうです。事実、男尊女卑の王族は珍しくないですしね。
例えばクライヴとジョシュアが双子で、アナベラは周りからのメンツを気にしてドミナントのジョシュアを玉座に座らせたい。産まれる前は『私はドミナントの次期王の母よ』みたいな感じで周りに威張り散らしてたとか。
でもエルウィンは性別と精神性こそが王に求められる資質として、兄のクライヴを推す。それで家族関係に陰りが出てしまうとか。
というかそもそも、ドミナントが玉座に座る必要なんてありませんしね。力が強え奴が王に選ばれるのはトライヨラだけでいいです。
ともあれ、こうなれば父の意見に反論できる余地がなくなり、アナベラが凶行に走る理由もより強固なものになります。
彼女もまぁ中身の無いチープな悪役ですし、こんな感じで少しくらいは肉付けしてもいいと思います。同盟国に裏切りを唆してまで国を滅ぼしたかった理由としては相変わらず弱すぎるとは思いますが。
長々と語りましたが、つまりジョシュアの病弱設定にはシナリオを歪めてまで導入する価値が無いという事です。
にも関わらずジョシュアが『病弱な弟』として作られた理由。そんなの『吐血しがちな病弱な弟(美少年)』という属性が女ファンにウケるだろうという浅ましい考え以外に無いです。
ウケありきで設定を作っているだけなんですよ。それを悪だとは言いませんが、こういった絵的な魅力を優先したせいでシナリオに特大の違和感が爆誕する現象がFF16には無数に存在します。ディオン様のアレとか分かりやすいですね。
あとジョシュアといえば、一向にクライヴに接触しない理由が語られなかったのは衝撃でしたね。終盤には突然遠方にいるはずの他ドミナントの状態を察知するご都合能力を披露していましたし、色々と謎の多い男です。それがあれば秒で兄さんと再会できたろ。
そんな訳でもう一つゲームの話をします。
次はドラゴンクエスト5です。SFC発の言わずと知れた名作ですね。
本作のストーリーは幼少期、青年期前半、青年期後半の三つに分けられるのですが、幼少期の終わりに主人公は父親を悪党に殺され、そのまま攫われて13年もの間奴隷としてこき使われ、青年期を迎える事になります。
FF16にも似た展開はありますが、最大の違いとして、ドラクエ5にはしっかり奴隷時代の描写が存在する事が挙げられます。
これにより主人公がどんな環境で生きてきたのかが分かりますし、共に攫われて奴隷となった生意気王子、ヘンリーとの関係の変化にも説得力が生まれます。
奴隷時代に作らされていたものが一体何なのか、終盤に発覚するのも面白い展開です。
一方のFF16にはクライヴの奴隷時代の描写が殆ど無いです。
それどころか、13年奴隷をやっていたはずのクライヴが奴隷の扱いを知って驚く場面があります。
ここもFF16あるあるですね。プレイヤーに世界観を伝えたいという開発の都合に合わせるため、クライヴが奴隷時代の記憶を失っています。
というか、シナリオを破綻させてでも元奴隷という設定を持たせたがる意味もよく分かりません。奴隷経験のある後ろ暗い男ってセクシーでかっこいい! とかそんなんですかね?
ともあれクライヴ君、ここで奴隷への扱いを知った事がきっかけで、中盤以降の彼は『人が人として自由に生きられる世界』を作るため、環境活動家にジョブチェンジします。
あれだけ復讐に囚われていたクライヴですが、ジョシュアを殺したイフリートの正体が自分だったと知り、サクッと復讐者を辞めました。
同盟を反故にして父親を殺し、故国を滅ぼしたザンブレク皇国の事は持病の記憶喪失で綺麗さっぱり忘れたようです。まぁその後のストーリーでは邪魔にしかならない設定ですし、無かった事になるのは仕方ないです。
FF16はそういうゲームです。
そういえばFF14にもストーリーに合わせて急に性格が変わったバクージャジャとかいうキャラクターがいましたね。
アレが無限に繰り返されるのがFF16であり、クライヴ・ロズフィールドというキャラクターです。未プレイの方に伝われば幸いです。
このような意見への反論として『アンチは読解力が無いからFF16の本質を理解できていない』という意見をよく耳にしますが、読解力で読み取れる部分とは全く別の部分が破綻している点を指摘されているのに気づいていない辺り、こういった方々は本当に読解力が足りていないのだと思います。
総括すると、他媒体で評価された設定や展開の『表面だけ』を乱雑に詰め込めるだけ詰め込んだメッキの宝石箱、それがFF16というゲームの本質だと思います。
物語を楽しむ上で面白さとトレードオフの矛盾に目をつぶる事はままありますが、驚く事にFF16の矛盾は面白さと引き換えになっていない異物でしかありません。重箱の隅をつつくまでもなく、具を無限につつけます。
表面だけは良いものを繕っているので、多くの物語に触れてこなかったプレイヤーの目には至極の作品として映ると思います。グラフィックも綺麗ですしね。
なぜアンチの声が大きいのか
SNSなどで、FF16はアンチの声が大きいという話をよく耳にします。
これに関しては事実だと思います。
FF16は他の大作ゲームと比べると明らかに批判意見が多く、過激な発言が目立ちます。
アンチスレが立てば盛り上がりますし、私みたいにわざわざ時間を掛けてnoteでネチネチと悪態をつく変人も少なくないです。
何故か。理由は簡単です。
運営のプレイヤーを挑発するような言動が余りにも多いからです。
幾つか例を挙げます。
発売直前の公式生放送にて、視聴者から体験版のムービーの多さを指摘する質問がありました。
これに対して、吉田プロデューサーは『序盤はプレイヤーに伝える事が多い為ムービーが多い』と答えていましたが、実際に発売されたFF16は最初から最後までムービーぎっしりでした。
QTEの多さやフィールドの暗さを指摘された際も『それは体験版の範囲のみ』と同じように答えました。実際は最初から最後までQTEまみれ。暗いフィールドも当然のように存在しました。
身も蓋もない言い方をすればユーザーを騙して買わせようとしている訳なので、プロデューサーの発言を信じて購入したプレイヤーがゲームに対して『つまらない』以外の悪感情を抱くのは当然の流れです。
他の場では『DLCの開発予定は無いが、好評であれば考える』という旨の発言もありました。
これを見てどう思いますか?
あ、FF16は本編で完結するゲームなんだ。
前作みたいに後付けの有料DLCがあってはじめて完成する未完成品じゃないんだ。
そう思うのが自然だと思います。
しかしいざ発売した製品版はリヴァイアサンとかいう最強の召喚獣の名前を出す割に、ちょっと触れるだけで特に何も無し。露骨なDLCへの伏線ですね。
そして案の定、DLCは本編発売から半年でリリースされました。目玉はもちろんリヴァイアサンです。開発速度早すぎて草。
FF15を黒歴史扱いして、FF16はFF15とは違うぞ! というアピールをしたのも良くなかったです。こんな悪質なDLCを出しておいてよくもまぁそんな事を言えたなと驚愕しました。
というかFF15は売り方こそ最悪なものでしたが、FF16よりはよっぽど遊べるゲームだと思います。もちろん私個人の意見ですが、上記のPRが無意味にFF15の支持層を敵に回しているのは明らかです。
直近ではFF14の方でもやらかしていましたね。ここはFF16の記事ですし既に多くの方が意見を述べているので詳細は語りませんが、グラフィックアップデートに対してのプロデューサーレター。アレはまともな企業が出す文章ではありません。
FF14には運営を持ち上げる熱烈なファンが多くいますが、流石にこれには目が覚める……と思いきや、『運営は頑張ってるのにアンチはひどい!』とリミットブレイクする始末。聞いてて感じてて考えてない。
ともあれ、纏めるとFF16に何故アンチが多いのかの答えは、制作陣と熱烈なファンがアンチを作るような言動をしているからです。シンプルですね。
しかし例外もあります。
例えば、先に述べたテイルズオブベルセリアは前作が巻き起こした諸々の問題でアンチが爆増しているなか発売されましたが、面白さ一本でアンチを黙らせました。
ヤクザRPGこと龍が如くシリーズでも似たようなケースがあります。龍が如く7は大胆な路線変更もあって前評判こそ最悪でしたが、いざ発売されてみれば最高傑作に推すファンも数多くいます。
要するに多少問題があってもゲームの面白ささえ担保されていればアンチは消えるんです。
FF16に未だにアンチが蔓延っているのはつまりそういう事ですね。はい。
終わりに
長々と語りましたが、私個人としては現状の第三開発にまともなゲームが作れるとは微塵も思っていないので、今後もこんな感じでネットのおもちゃになるようなゲームのリリースを期待します。
まぁ面白いゲームを遊ぶなら他所が幾らでも出してくれていますし、結局は楽しみ方の問題という事ですね。
そういう意味ではFF16、好きなゲームです。
終わり。
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