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ラブレター

「ふぅ~~、、、」

私、髙橋未来虹は緊張している。

「渡すだけ、、、手紙を渡すだけ、、、」


ただの同期だった。

いや、かなり仲のいい同期だった。


手紙なんていくつも渡している。

なのにこんなに緊張しているのは、手紙の内容のせいだろう。


"君が大好きです。”


それを伝えるためだけの手紙だから。

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私と陽世は、研修生時代からずっと一緒にいた。

何をするにも一緒だし、アイドルとしての苦楽はほとんどを共にした。

私の隣に陽世がいるのは当たり前だし、こんな日々がずっと続くと思っていた。


そんな当たり前は、突然崩れ去った。


私たちに後輩ができた。

陽世は後輩が大好きで、後輩をよくかわいがっている。

確かに後輩は可愛い。私も可愛がってるし。

でも、正直寂しかった。

いままで一緒だった陽世がほかの子ばっかり。

私は置いてけぼり。

寂しいし、胸が締め付けられた。


"陽世はもう私なんて興味ないんだ”


私の頭は、陽世と負の感情であふれかえっていた。

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「未来虹」

「なに」

「あんたそれ恋だよ多分。いや、絶対。」

私の異変に気付き、話を聞いてくれた同期の茉莉はかき氷を食べながら答えた。

「恋⁉そんなわけないじゃん!だってメンバーだよ⁉」

「いやいや絶対恋だって。そんな必死に否定されるとなおさら思う。」

何でこいつはこんなにあっけらかんとしてるんだ。

メンバーがメンバーに恋するなんてとんでもないことなのに。

「だって普通そんな嫉妬しないよ?メンバーが仲良くしてるだけじゃん。」

言われてみればそうだ。

ただメンバー同士が戯れている。ただそれだけのこと。

なのに私はそれに嫉妬して勝手に悩んでいる。

これが、恋なのだろうか。


「で、未来虹はどうしたいの?」

「え?」

「いや今後。未来虹はどうしたいのかなーって。」

茉莉に言われて、言葉を探す。

でも、うまく見つからない。

私は、ずっと陽世と一緒にいたい。

でも私のわがままで陽世や後輩に迷惑はかけれない。

一体どうしたらいいのか。わからなかった。

「・・・未来虹さぁ、もっとわがままになんなよ。」

「え?」

「未来虹優しいから人の事優先しがちなんだよね。
 でももっと自分のことも考えてほしいかも。」

「多分陽世とか後輩に迷惑かかるとか思ってんでしょ?」

「それは、、、まぁそうだね、、、」

「でもそれ未来虹が傷つくだけじゃん。ずっと我慢して。
 そんな未来虹私見たくないから。」

「・・・・」

「し、いつまでも暗い顔のままだったらなんか気遣うからさ(笑)
 同期に気遣うとかしたくないし(笑)」

茉莉は最後に笑いながらそう言った。

茉莉なりの応援なんだろう。

「茉莉」

「ん~?」

「ありがとう。」

「やっと私、自分の気持ちに気づけた。」

「・・・そっか(笑)
 ならよかった(笑)」

「ちゃんと後悔しないように気持ち伝えるんだよ!」

「・・・うん!」

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それから私は、陽世に気持ちを伝える方法を考えた。

直接言おうとも考えたけど

「も~未来虹何言ってんの?(笑)」

って言われる未来が予想できたし、きっと私も言えない。

「んんんん~~どうしよう、、、」

人に気持ちを伝えるってこんなに難しいことなんだ。

私はそう感じていた。

そんな時

”ラブレターかぁ~~憧れちゃうなぁ!”

ふと耳にしたラジオは、私に衝撃を与えた。


「・・・ラブレター!」


そこからの私に迷いはなかった。

いままで陽世に抱いていた気持ち。

最近構ってくれなくて寂しいという本音。

そして、世界中の誰より陽世が好きだということ。


全ての思いを手紙に乗せた。

全ては陽世に気持ちを伝えるために。

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「お、、、おじゃまします、、、」

ラブレターを忍ばせ、上がり込んだ山口家。

「・・・どうしたの?なんか変だけど」

「へっ⁉いつも通り!いつも通りだよ!」

「ふーん?」

危ない。平常心平常心、、、。

それからはいつも通り、ご飯を食べたりゲームをしたりした。

その間も、私はドキドキしていた。

当たり前だ。だってこの後ラブレター渡すんだから。

「未来虹~今日泊まる~?」

「へっ⁉あっ、、あぁ~明日朝早いんだよね私!
 今日は帰ろうかな!」

危ない。ラブレターのことで頭がパンクしそう。

返事もろくにできなくなっちゃってる。

「・・・なんか隠してない??」

「へ?」

「なんか今日の未来虹変だよ?ずっと上の空だし。
 呼んでも反応遅いもん。」

「いやいや!ほんとに!普通だから!隠し事なし!」

「・・・ほんと?」

どうするべきか。

ここで白状してラブレターを渡すべきか。

それとも帰るときに渡すべきか。

さぁ髙橋どうする、、、、、


「未来虹?これ何???」


「はぇっ⁉」


いつの間にか陽世が私の後ろにいて、私のカバンをあさっていた。

そして陽世の手には、ピンク色の封筒が。


ラブレターだった。


「そっ、、、それは、、、」

「???」

「・・・ラブレターです、、、」

考えるより先に、言葉が出ていた。

「ん?」

「ラブレターです!!!!!!!!」


思っているより大きな声が出て自分でも驚く。

「ラブレター?誰に?」

「陽世ちゃんです、、、」

「私に??何で??」

「それは、、、」

「好きだから、、、」

「好き?」


「大好きなの!陽世が!誰にも渡したくないくらい!世界で一番!」


「・・・・・」

「最近後輩ばっかで構ってくれなくて寂しかった!!
 でも私のわがままでギクシャクさせたくないし、、、」

「でももう無理、、、我慢できない、、、
 私も陽世に触れたいし陽世の近くにいたいよ、、、」

気づけば私は涙を流していた。

ラブレターなんていらないくらいに、気持ちがあふれていた。

そして気づくと、私は小さなぬくもりに包まれていた。

「へっ。、、、??陽世、、、??」

「未来虹、、、ありがとう、、、気持ち伝えてくれて、、、」

「うん、、こっちこそごめんね??変なこと言っちゃって、、、」


「実はね、私も未来虹が好きだった。」


「へ?」

「でも、メンバーがメンバーに恋するなんていけないと思ってた。
 だからわたしは未来虹への気持ちを紛らわすために後輩と絡んだんだ。」

「でもやっぱり無理だった。
 絶対に未来虹への気持ちなんて忘れられなかった。」

「陽世、、、」

「許されないことしちゃったのもわかってる、、、
 未来虹の事傷つけちゃったのもわかってる、、」

「でもやっぱり私には未来虹が必要なの、、、」

「だからね、、、?」


「私と付き合ってくれませんか、、、?」


「ねぇ陽世?」

「ん?」

「もう私の事放置しない??」

「絶対放置しない。ずっと構う。」

「ずっと私の事好きでいてくれる??」

「当たり前じゃん!嫌いになんてならないよ!」

「ふふふ(笑) そっか(笑)
 じゃあっ」


「こちらこそよろしくお願いします!」


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「まさか未来虹が私のこと好きなんてね~(笑)」

「ねぇ~え!(笑) 恥ずかしい!(笑)」

未来虹と陽世

2人は山口家のソファーで並んでいる。

もちろんその手はつながれたまま。

「ん~~~、、、」

「なに??どうしたの未来虹」

「・・・ラブレター」

「ラブレターがどうかした??」

「ラブレター、、、渡せなかった、、、」

「・・・ふふっ(笑)」

「なっ、、、笑った!笑ったでしょ!!
 せっかく私勇気出してちゃんと書いたのに!!!!!」

「あぁあぁごめんごめんね!(笑)
 そんな一生懸命書いてくれたんだと思ったら可愛く思えちゃって(笑)」

「もぉ~~(笑)」

「ふふふ(笑)
 でもね?未来虹」

「?」


「未来虹が言ってくれた言葉が、なによりのラブレターだったよ!」


「・・・(笑)
 ならよかった!」

「あ、でもちゃんと未来虹のラブレター読むからね!」

「あ、読むんだ(笑)」

「当たり前じゃん!せっかくくれたんだもん!」

「せめて私のいないときにお願いしますね??(笑)」

あぁ、やっぱりラブレターにかいた気持ちと同じだったな。


"君が大好きです”


END




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