マリンバの鍵盤は絶滅危惧種
ワシントン条約
ワシントン条約は、正式名称を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)」といい、英文の頭文字をとってCITES(サイテス)と呼ばれます。ワシントン条約というのは、1973年(昭和48年)に米国のワシントンD.C.で採択されたことによる通称です。
ワシントン条約では、国家間の過度な国際取引による種の絶滅を防ぐため、国際取引の規制が必要と考えられる野生動植物の種を附属書にリストアップします。附属書は、絶滅のおそれの程度、必要とされる規制の内容に応じて3つに区分(附属書Ⅰ~Ⅲ)されています。附属書Ⅰ及びⅡの掲載種(規制の対象となる種)は、2~3年ごとに開催される締約国会議で見直しが行われ、審議を経て、改正されます。
【https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/cites/ (環境省HPより)】
マリンバの鍵盤材はCITES付属書Ⅱにリストアップ
私が趣味で演奏しているマリンバの鍵盤にはホンジュラス産ローズウッドが使われています。ローズウッドは2017年1月2日より付属書Ⅱに追加され、輸出国が発行する許可証が必要になりました。
日本の楽器メーカーが作るマリンバの鍵盤はホンジュラス産ローズウッドがほとんどで、素材調達のために煩雑な手続きをしているものの、今のところ、楽器制作に実質的な影響はないとのことです。某マリンバメーカーさんからお聞きしました。
付属書リストは素材だけでなく、それを使った製品も対象であり、自分が演奏するために楽器を外国に携行するにも手続きが必要です。マリンバを携行することはあまりないと思いますが、ローズウッドは、ギター、クラリネット、オーボエやバイオリンの付属品にも使われています。
また、ローズウッド以外でリストアップされている素材を使った楽器の外国への持ち出しの必要も多くあると思うと、生物多様性と文化継承のせめぎあいを感じます。
【演奏会等を目的に楽器を携帯して移動される演奏家や個人の方へ (METI/経済産業省 R3.7.1) (経産省HPより)】
ローズウッドを使う楽器が付属書Ⅱの対象外となった
しかし、2019年の締約会議にて、ローズウッドが使われている楽器に関しては付属書Ⅱの手続き対象から除外されることになりました。生物多様性と文化と使用量のバランスが考慮されたのでしょうか。ただ、除外は楽器であり、素材は除外されていないので楽器メーカーの手続きの必要は継続されていると思われます。
【マメ科ツルサイカチ属(ローズウッド)及びブビンガ属 3 種を使用した楽器等の輸出入について (経産省HPより)】
もし付属書Ⅰにリストアップされたら
締約国会議で付属書Ⅰに振分られることになれば、完全に輸出入が制限されるので、日本製のマリンバを演奏することができなくなります。メーカーさんにとっては死活問題、日本には世界的に活躍するマリンバ奏者が何人もいるのに日本製のマリンバがなくなってしまうとしたら残念でなりません。マリンバ文化も衰退してしまうのではないでしょうか。
低音の鍵盤は割れる
ところで、マリンバの鍵盤、低音は割れます(ひびが入る)。メーカーによるのかもしれませんが、音を追求すると鍵盤が薄くなるのでしょうか。付属書Ⅰに入ると、在庫がなくなれば修理(鍵盤の取り換え)さえできなくなってしまいます。私のマリンバは既に2枚を修理(メーカーにて接着剤で補修)、4枚を取り換えをしています。最近またG23(5オクターブマリンバの一番低いソ)にひびが入り、雑音が気になり始めたので取り換えを考えています。1枚25,000円程度、C16(5オクターブマリンバの最低音)だと35,000円ぐらいです。絶滅危惧種が使われ、時間をかけて乾燥させて作られるマリンバは単純な見た目から想像するより維持費がかかる楽器です。
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