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「朝食」著者:オンドジェイ・ネフ 訳:加藤洋実

わたしなりの解釈ですが、加藤さんの訳書をせっかく読ませてもらったので感想を述べたいと思います。

裕福な主人公の男は、自分を軽んじ不貞をはたらく25歳年下の若い妻を真実愛することができているかを自問し、破滅していく(合ってる?)

<蜘蛛は母親のメタファー>

ユング心理学によると、蜘蛛が象徴するものとして”母親”、”嫉妬”、”束縛”などが挙げられています。
作中では触れられていませんが、主人公の自尊心の高さや若い妻への虚栄心は、母親から受けた過度な干渉や束縛への意趣返しかもしれません。 子が親になったとき、親の子育てを少なからずトレースしてしまうことがあるからです。(想像ですが)

<理想の自分と本当の自分>

外側の器としての自分は、不実な妻を赦す寛容な男を演じているのに対し、内側の自分はステイタスの傘下で妻を支配しようとする、矮小で嫉妬深く気の小さい男で、愛するという行為そのものが自らの善良さの表れであるから、その対象である妻も善良で献身的で誠実でなければならないと考えている。このあたりからも、母親からの呪縛を感じます。

<"蜘蛛"は嫉妬や束縛のメタファー>

新聞記事によって妻の不貞を知り妻から気持ちが離れたほんの一秒のあいだに、愛という名を借りた身勝手で醜い嫉妬心を垣間見て、それに飲み込まれてしまう男。                                                    妻を所有しているつもりが、愛されたいがゆえに都合のいい夫を演じ、逆に妻に支配されていただけだったのです。

愛とは相手に求めるものでも同化するものでも見返りを期待するものでもなく、ただ与え慈しむもの。

そんなニュートラルな気持ちで、大切に育んでいきたいよね。

そう遠くない将来に、加藤さんの小説が紙媒体で読めるという確信を、より深めた作品でした。

加藤さん、応援してるよ!

(余計なことですが、映画「複製された男」に酷似していませんか? レビューを書きながらチラチラ思い浮かべてしてしまいました。)

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