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「甘美なる作戦」イアン・マキューアン著/村松 潔訳

MI5の女性スパイと、若き小説家。二人の間に生まれた愛は、幻だったのか? 任務を帯びて小説家に接近した工作員は、いつしか彼と愛し合うようになっていた。だが、ついに彼女の素性が露見する日が訪れる――。諜報機関をめぐる実在の出来事や、著者自身の過去の作品をも織り込みながら、70年代の英国の空気を見事に描き出す、ユニークで野心的な恋愛小説。ブッカー賞・エルサレム賞作家の最新長篇。(新潮社より)

シチュエーションは東西冷戦中の真っ只中にあり、英国病を患い、
北アイルランド紛争がおこっていたころの “ヨーロッパの病人”イギリス

70年にビートルズが解散、サマー・オブ・ラブに浮わついたヒッピーたちは行き場を失い、プロテスト・シンガーといわれたディランが代弁者と自らを投影し、
サイケデリックに彩られた極彩色の音楽性は、ジャズやフォークをまとったまま交響曲に様式美を求め、プログレッシヴ・ロックへと発展していく
“ロック” はアートであり、ファションであり、プロパガンダであり、祈りであり、生き方であり、愛であり、憎しみでもあり
“音楽” という言語が生まれた時期でもあるのかもしれない
遠くアメリカでは映画 “ディア・ハンター” なら、マイクがベトナムからクレアトンに帰って来たころかしらん。。。

は、小説の感想を書かなくちゃ

冒頭で一人称が宣言されたことで(これは入れ子小説だな)とういう予感はしていたものの、70年代のイギリスの社会情勢が周知の前提で書かれており、無知なわたしはメルカリで買った高校世界史の資料集と首っ引きでひたむきにグイグイと読み進めなければならず、そうしているうちにメタ構造のことなど失念してしまっていた

ヒロインが “いかにも男好きのする女性“として描かれているあたり(これが男性が求める女性性か。。。)とお尻がモジモジして座り心地が悪くなる場面がたびたびあったし、そんなテイラー・スウィフトみたいな女の子がプログレおじさん(プログレ=一曲が無駄にクソ長い・わざとらしく複雑なコード進行に仕立てた電子音楽・好きなひとにはゴメンナサイ=作者?)と大恋愛しちゃうなんてありがち〜となったけど、それ込みのメタ・メタ・フィクションということなんだよね。。。まんまとハマってしまった

60年代にアメリカでウォーホールによって結ばれたロックとアートが海峡をわたり、遠くイギリスの地でアート・ロックに発展するも、”理屈“を求める者はプログレへ更に傾倒を深め、”自由“を求める者は『自分が知っている人生がそのままページに再現されているような』ポップスやハードロックへと二極化していく
このあと75年にQUEENがデビューし、76年にはSex Pistolsが ”Anarchy in the U.K.” を発表
ロックにロックで殴り込みをかけるというパンク・ムーヴメントという革...(文字数)
(本書ではこのような英国ロック史には一切触れられていません)

わたしは(ヒロインのように)小説やアヴァンチュールを貪欲により多く消費していくことで、多幸感は得らるタイプではない
この小説が、読み手を鍛え書く者にはさまざまな示唆を与え、視野を広げてくれる作品であることは間違いなく、あたらしい読書体験を得ることができた
作中の3分の1の“確率論”はなにかのメタファーだと思うんだけど、数学的センスがないので理解できなかった。。(だれか教えて)
最後の手紙で、作中に置かれた”パン屑“を回収させる心憎さに⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️





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