NHKから国民を守る党が「ゴルフ党」へ党名変更 党勢衰退の起死回生になるか
NHKから国民を守る党は、27日の党役員会で、2021年1月1日から同党の党名を「ゴルフ党(NHKから国民を守る党)」に変更することを確認し、その後、記者会見を行った。
立花孝志党首は風邪のために役員会のみリモートで出席し、会見にはジャーナリストの上杉隆幹事長と広報担当の「ゆづか姫」こと新藤加菜氏、同党所属の浜田聡・参院議員が出席した。
■選挙ごとに党名変更?
そもそも、「ゴルフ党構想」を発表したのは13日の記者会見。立花氏は「NHK問題は今後も続ける。ただ、ゴルフ党にすることによって、ゴルフ関係の著名人を擁立できる可能性が高まる」と述べた。
20日の会見では、「選挙ごとに党名を変更したい。たとえば、『誹謗中傷から国民を守る党』とか不当判決を繰り返す『裁判所から国民を守る党』とか。具体的に『東京地裁の○○裁判官から国民を守る党』と判事を名指しした党名でもいい。『政党』が選挙のたびに名前を変えれば、それだけで話題・ニュースになるだろう」と主張。
「先般、堀江貴文さんの誕生日パーティーでジャニーズを退所した手越祐也くんに会った。彼はいまYouTubeで活躍しているが、そのうち、名誉欲が出てくるかもしれない。誹謗中傷されているから、党名を『誹謗中傷から国民を守る党』にしたら、出馬してもらう可能性はあると思う」と解説した。
■政策も発表
ゴルフ党の政策については、「ゴルファーの上杉隆幹事長に一任する」とのこと。
27日の会見で筆者が「ゴルフ党の政策は何か」と問うと上杉氏は「ゴルフ税廃止」や「ゴルフ場の使用料を500円とか市民の手の届くところにする」「災害の際の避難地としてゴルフ場を活用する」など7つの項目をあげ、ゴルフ党の政策を初めて明らかにした。
■選挙に強かったN国党
NHKから国民を守る党は選挙に強いことで知られてきた。2019年の統一地方選挙においては47人が立候補し、26人が当選。そのうち都内の区議会選挙に限っていえば20区議会すべてに候補を出し17人を当選させるというほぼ無敗の大躍進だった。
その勢いもあって、同年の参院選挙に比例区・地方区に候補者を擁立し、比例区において1議席を獲得し、立花代表が当選。政党要件を満たすための得票率2%以上もクリアし、晴れて「政党(公党)」になった。
ただ、今年の都知事選では立花代表が立候補したものの、4万3912票しかとれず大惨敗し、供託金は没収。
立花氏は結果を「(昨年参院選より党の)人気が下がったと認めざるを得ない」と総括し戦略の見直しを示唆したが、最近では地方の市区町村議会議員選挙でも負けが続き、かつての勢いがなくなっている。
■党名変更で反転攻勢か
党名をゴルフ党に変えたのは、「起死回生の一手」「反転攻勢のチャンス」と見て良いだろう。しかし、筆者には党名変更が同党の「レゾンデートル」(存在理由)を揺るがすものに思えてならない。
昨年の参院選を思い返してほしい。立花氏が政見放送やYouTubeで主張したのは、NHKを敵に見立てて、それを放置してきたエリート政治家集団に立ち向かう庶民の味方という立場だった。トランプ大統領のようなエスタブリッシュメントにたいする抵抗者として自らを見せた。
■庶民の怒りを代弁
立花氏は自身が大卒でないことや候補者も前科者や学歴のない人たちであることを強調。政見放送では、参議院選挙を「令和の百姓一揆」と銘打って次のように述べた。
「エリート国会議員がお代官様で、我々庶民が百姓。『デフレで景気が悪いのに消費税を増税する』『ワンセグ機能付きの携帯電話だと、普通のテレビと同額の受信料だ』『インターネットからも受信料を奪い取る』『ホテルの客室は全室受信料を払え』、もういいかげんにしてくださいませ、お代官様。そんな理不尽なお金、我々庶民は払いたくないし、払えない。令和の時代に生きている庶民の皆さん、鍬や鎌をスマートフォンに持ち替えて、投票という百姓一揆を起こしましょう。私が令和の大塩平八郎となって、皆さんの先頭に立たせていただきます」
まさに、庶民の怒りの代弁者を立花代表は演じたわけであり、それに、日頃鬱憤を抱える層が共鳴し、投票したがために、N国党は参院で1議席を獲得し、政党になれたわけである。
■「政党助成金を増やすための選挙」
立花氏は、NHKをはじめとする悪代官という巨悪に果敢に立ち向かうドンキーホーテをあえて演じ、党勢を拡大してきたのである。
それが、五輪競技であり大衆化しつつあるものの、庶民からともすれば「金持ちの娯楽」とも思われるゴルフを前面に出した政党になることは、自己否定になりはしないか…と筆者は懸念する。
立花氏は次期総選挙を「あくまで政党助成金を増やすための選挙であり、議席獲得は目的ではない」と述べ、1票入ることによりいくらのお金が入るという、さすがNHKで経理をやっていただけのことはある緻密なシミュレーション・銭勘定を披露している。
■原点回帰が必要か
ゴルフ党は新たな試みではあるのだろう。しかしながら、その実験は起死回生になるどころか、失敗に終わりかねない。
30日に評論家の眞鍋厚氏による『山本太郎とN国党』という本が光文社から出版される。そこでは、前回参院選で躍進した山本太郎・前参院議員が率いるれいわ新選組とN国党の勝利の要因を、卓見とも言える視点で徹底分析している。
立花代表のみの独創力と行動力で率いられてきたN国党は、透徹した他者による視点も交え、自己を客観視し、方向性を模索する時期に来ている。立花氏の独り劇場を終わらせ、庶民の党に原点回帰することこそが、いま求められているだろう。
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