海外ラグビー事情(5/24版)

先週末も世界各地で試合が行われた。今回はプレーオフ進出をかけた熱い戦いを特集したい。

プレミアシップ

まずはプレミアシップ(Premiership)から。第25節の6試合が先週末に行われ、プレーオフ進出に向けて各チーム明暗が別れた。既にシーズン4位以内を決めていた首位のレスター(Leicester Tigers)と2位のサラセンズ(Saracens)はそれぞれ勝利を収めてポイントを伸ばした(サラセンズはホームでの準決勝開催が決定)。2連覇を狙う3位のハーレクインズ(Harlequins)は4位の可能性を残すグロスター(Gloucester)に勝利を収めプレーオフ進出を決めた。準決勝に向けて残すは4位の1枠のみ。ノーサンプトン(Northampton Saints)とグロスター(Gloucester)の2チームのみがプレーオフ進出の可能性を残しており、それぞれ日本時間6月4日の最終節に望みをかける。ノーサンプトンはニューカッスル(Newcastle Falcons)と、グロスターは再びサラセンズと対戦予定。現在のポイント数や対戦相手から判断するとノーサンプトンがかなり有利だろう。

一方、今節で準決勝進出への希望が潰えたチームもある。7年連続のプレーオフ進出を目指したエクセター・チーフス(Exeter Chiefs)はブリストル(Bristol Bears)に33-40で敗れ、プレーオフ進出は叶わず。この日も自慢のフォワード(forwards)を中心にレッドゾーンでの驚異的な集中力を見せスコアを重ねるが、それ以上に相手のブリストルのバックス(backs)の閃きが素晴らしかった。元ニュージーランド代表のチャールズ・ピウタウ(Charles Piutau)やウェールズ代表カラム・シーディー(Callum Sheedy)などが何度もエクセターのゴールラインを脅かし、終わってみれば40得点。昨季のレギュラーシーズン首位の意地を見せつけた。この日ピウタウやシーディーが素晴らしかったのは間違いないが、個人的には9番のハリー・ランドール(Harry Randall)がプレイヤー・オブ・ザ・マッチ。素早い仕掛けや精度の高いキックでチームに大きく貢献した。

トップ14

トップ14は第25節の計7試合が行われ、ボルドー(Bordeaux-Bègles)、モンペリエ(Montpellier)とカストル(Castres Olympique)の3チームがプレーオフ進出を決めた。ボルドーはこの試合が怪我からの復帰後2試合目となるマシュー・ジャリベール(Matthieu Jalibert)が2本のトライを決めるなど42-10でリヨン(Lyon)を下した。スター選手の活躍に観衆は熱狂、66分の交代でベンチに戻る際にはスタンディングオベーションで迎えられた。7月に行われる日本代表とのテストマッチに向けてまた1人楽しみな選手が帰ってきた。

プレーオフ進出に向けて残りは3枠。現時点で9位のクレルモン(Clermont)までがプレーオフ進出の可能性を残すが、最終節の組み合わせを見ると、トゥールーズ(Toulouse)は最下位のビアリッツ(Biarritz)との対戦でほぼ間違いなく6位以内を確定させるだろう。ラシン92(Racing92)はトゥーロン(Toulon)との対戦となり激しく6位以内を争うことになる。3位のラ・ロシェル(La Rochelle)は8位のリヨンとの対戦となり、チャンピオンズ・カップで見せている充実の全てをこの試合にぶつけたい。大混戦のプレーオフ進出争い、最後まで目が離せない。

ユナイテッド・ラグビー・チャンピオンシップ

先週末で全18節を終え準々決勝へと移る。準々決勝進出の8チームを整理するとアイルランドの3地域、南アフリカの3チーム、スコットランドの2チームと偏りがある。特にウェールズとイタリアからの準々決勝進出チーム数はともに0であり、ファンにとってはフラストレーションの溜まるシーズンとなった。URCに関しては準々決勝まで時間が空くため、準々決勝に向けた各チームのメンバー発表後にプレビューを行いたいと思っている。

スーパーラグビー・パシフィック

間違いなく1番の注目を集めたのは首位のブルーズ(Blues)と2位のブランビーズ(Brumbies)の対戦。開始3分、得意のピック&ドライブでリズムをつくったブランビーズがトライを決め先制。しかしその後はブルーズの時間帯が続く。クラーク(Caleb Clarke)やバレット(Beauden Barrett)などが何度もゴールラインを脅かすが、ブランビーズは粘りのディフェンスを見せる。前半最後にバレットにスコアを許すが我慢の前半を7-8とまとめた。前半のスタッツを振り返るとランニングメーターに関してはブランビーズの120mに対しブルーズは635m。パスはブランビーズの28回に対しブルーズは90回を記録。カードは出されたものの、ブランビーズがよく守った前半と言っても良いだろう。後半に入りブランビーズも息を吹き返す。ホワイト(Nic White)がこぼれ球に反応し一気に駆け上がる。ホワイトとブルーズのフットレースの結果、ロジャー・トゥイバサ=シィック(Roger Tuivasa-Sheck)が追いつくもハイタックル(ペナルティーのみ)。このペナルティーを起点にブランビーズがラインアウトから得意のローリングモールでトライを奪い12-8と逆転する(後半54分)。その後67分、73分とブルーズが連続スコアし18-12とリードを奪う。時計の針は着々と進む。このまま終わりを迎えるかと思われた。77分ブランビーズは敵陣22mライン付近でペナルティーを得ると迷いなくタッチへ。ブルーズはラインアウトを競らずにモールに備えたが、ブランビーズの最大の武器であるローリングモールはやはり簡単には止められない。そのまま突き進みトライ。17-18と1点差に迫る。そして迎えたコンバージョン。蹴るのは前節欠場で復帰が熱望されたノア・ロレシオ(Noah Lolesio)。プレッシャーのかかる場面、簡単な位置ではなかったがなんとかゴールを決め19-18とブランビーズが逆転。残り90秒、もうこれ以上のドラマはないだろうと多くの人が思っただろう。しかしその時は訪れる。キープを図るブランビーズ、スウェイン(Darcy Swain)のキャリー時にボールを失ってしまう(カメラのアングル的にハッキリと見えず殊勲者が誰か分からず)。その後バックスで切り裂き、ブランビーズ陣深くに入ると、アドバンテージを得た上でバレットがドロップゴールを決め、ブルーズが21-19で劇的勝利を収めた。ブルーズのヘッドコーチのリオン・マクドナルド(Leon MacDonald)はこう振り返る、「我々の規律は素晴らしかった。そしてそれが恐らく勝敗を分けただろう」と。ペナルティーの数を比較するとブランビーズの16に対しブルーズはわずか5。献身的なフォワードがボールを奪い、反則なく得点まで持っていた最後のシーンはまさにこの試合におけるブルーズの規律の良さを象徴するかのようであった。ブルーズはこれで12連勝。プレーオフに向けて首位通過を決めた。一方のブランビーズは3位へと陥落した。

プレーオフ進出チームは7チームが決定しており、残り1枠をハイランダーズ(Highlanders)とフォース(Western Force)が争う。フォースは新型コロナウイルスの影響で試合数が少なく、ちょうど今その延期となったモアナ・パシフィカ(Moana Pasifika)との試合を戦っているが、もしこの試合にフォースが負けるようなことがあれば、その時点でハイランダーズのプレーオフ進出は決定する。今週末の対戦相手を見てもフォースはハリケーンズ(Hurricanes)と、ハイランダーズはレベルズ(Rebels)と、ポイント数と対戦相手からもハイランダーズが有利なのは間違いない。

注目選手

チャーリー・ギャンブル(Charlie Gamble)
ニュージーランド出身。運動量が持ち味で攻守両面での活躍が光る。ここまで勝ち取ったターンオーバー数16は今季トップ。来年の4月にオーストラリア代表の資格を取得予定で、来年に迫ったワールドカップに向けてワラビーズの大きな武器になりうる選手。ちなみに本人はオーストラリア代表入りに前向きのようだ。

ティモスィ・タヴァタヴァナワイ(Timoci Tavatavanawai)
フィジー出身。フィジーU20の経験あり。NPCではタズマン(Tasman)にて経験を積んでおり、スーパーラグビーは今年が初めての挑戦(クルセイダーズとハイランダーズのワイダースコッドは経験済み)。タックルブレイクが非常に強烈で確実にボールを前に運ぶ。相手とのコンタクト後に稼いだメートル数は80分あたり61mで今季2位。モアナ・パシフィカのヘッドコーチであるアーロン・メイジャー(Aaron Mauger)もその才能をフィジー代表に推す。

今後について

今後も気になった情報があればこまめに更新をしたい。引き続き質問や特集してほしい内容などを募集中である。ぜひコメントまで。

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