海外ラグビー事情(11/5版)

プレミアシップの今

先週末にRound 8を終えたプレミアシップだが、ワスプス(Wasps), ウスター(Worcester)の財政破綻に伴う出場停止により、今シーズンの残りは11チームで頂点を争うこととなった。ワスプス、ウスター所属選手の移籍情報とプレミアシップ事情をまとめる。

ワスプスからの移籍

・チャーリー・アッキンソン(Charlie Atkinson)→レスター(Leicester Tigers)、長期契約(期間不明)

・ジョシュ・バセット(Josh Bassett)→ハーレクインズ(Harlequins)、今シーズン終了まで

・ニザーム・カー(Nizaam Carr)→ブルズ(Bulls)、2024年6月まで

・マテオ・ミノッツィ(Matteo Minozzi)→ベネトン(Benetton)、2023年6月まで

・パオロ・オドグウ(Paolo Odogwu), ヴィンセント・コック(Vincent Koch)→スタッド・フランセ(Stade Francais)、メディカルジョーカー

・ジョン・ライアン(John Ryan)→マンスター(Munster)、3ヶ月の短期契約

・ブラッド・シールズ(Brad Shields)→ペルピニャン(Perpignan)、今シーズン終了まで

・ライアン・ミルス(Ryan Mills)→セール、今シーズン終了まで

・未定の選手たち
トム・クルーズ(Tom Cruse), ザック・キビリギ(Zach Kibirige), ジョー・ロウンチベリー(Joe Launchbury), ガブリエル・オーグリ(Gabriel Oghre), ダン・ロブソン(Dan Robson), エリオット・ストゥーク(Elliott Stooke), ジェイコブ・ウマガ(Jacob Umaga), トム・ウェスト(Tom West), トム・ウィリス(Tom Willis), ジャック・ウィリス(Jack Willis), アルフィー・バーバリー(Alfie Barbeary), バーガー・オーデンダール(Burger Odendaal)
※ジャック・ウィリスとバーバリーはブリストル(Bristol)ではないかとの噂

ウスターからの移籍

・テッド・ヒル(Ted Hill)、オリー・ローレンス(Ollie Lawrence)→バース(Bath)、長期契約(期間不明)

・ビリー・サール(Billy Searle)、ジェイミー・シルコック(Jamie Shillcock)→バース、短期契約(期間不明)

・フィン・スミス(Fin Smith)→ノーサンプトン(Northampton Saints)、複数年の長期契約

・ドゥーハン・ファンデルメルヴァ(Duhan van der Merwe)→エディンバラ(Edinburgh)、長期契約

・ローリー・サザーランド(Rory Sutherland)→アルスター(Ulster)、今シーズン終了まで

・フランソワ・フェンター(Francois Venter)→シャークス(Sharks)、期間不明

・メラニ・ナナイ(Melani Nanai)→クルセイダーズ(Crusaders)、期間不明

・未定の有力選手たち
マット・ケヴェスィック(Matt Kvesic), アシュリー・ベック(Ashley Beck), オーウェン・ウィリアムズ(Owen Williams), グラハム・キッチナー(Graham Kitchener) 

プレミアシップ展望

Round 8を終えての順位表は以下の通り。試合数にバラツキはあるものの、上位の8チームはこの後どこが勝ち上がってもおかしくない。

個人的に今後注目したいのはグロスター(Gloucester)。3年目となるHCスキィヴィントン(George Skivington)の下での今季の好調は約束されたものであり、チーム全体としての状態の良さがうかがえる。Round 8でもExeter相手にホームで堂々とした戦いぶりを披露しており、フォワードのまとまり、バックスのスター達の輝きともに目を見張るものがあった。この勢いを今週末のセール(Sale Sharks)とのゲームに持ち込めるか。

今注目すべき選手(プレミアシップ編)

レノックス・アンニャンウ(Lennox Anyanwu)-ハーレクインズ

力強さだけではなく、巧さも兼ね備えたプレイヤー。圧倒的な強さに注目しがちだか、豊富なスキルセットを武器にあらゆる手段で前に進むことが出来る。エスターハイゼン(Andre Esterhuizen)と組むミッドフィールドは相手には大きな脅威となる。間違いなく今シーズンここまでの最大の発見。

スィオ・マクファーランド(Theo McFarland)-サラセンズ

あのイトジェと比較されるほどの存在。元バスケットボール選手ということもあり、ボールの扱いが非常に巧い。長い脚を活かした走りも魅力的で、確実にボールを前へ運べる優秀なキャリアー。今世界で最も力のある選手の1人。

ガブリエル・イビトーィェ(Gabriel Ibitoye)-ブリストル

Top14を経て、今夜久しぶりのプレミアシップでのゲーム出場となる。ハーレクインズ所属時代はファレル(Owen Farrell)からも代表入りを期待されていた存在。速いだけでなく、足の運びでも相手を置き去りにすることが出来る。期待大。

オータム・ネーションズシリーズ

今週末から開幕するオータムネーションズシリーズ。発表された各国のチームを見ていきたい。

スコットランド代表

スタート15人のうち6人を先週のオーストラリア代表戦から入れ替えてきており、ほぼ現状のベストメンバーで臨む。注目はグロスターで非常に良い状態を維持しているヘイスティングス(Adam Hastings)と今シーズンURCで爆発的なランニングを披露し続けているグレアム(Darcy Graham)。この2人が得点に絡むとチームがさらに勢いづくだろう。その他ホッグ(Stuart Hogg), ハリス(Chris Harris), サザーランド(Rory Sutherland)らワールドクラスの選手もメンバー入りしており、ベンチには先週10番を着けたキングホーン(Blair Kinghorn)が控える充実ぶり。80分間攻撃的な展開が期待できそう。

フィジー代表

非常に力のあるチームを編成してきた。中でも注目はバックロー。トゥイスイ(Albert Tuisue), ボティア(Levani Botia), マタ(Viliame Mata)とビッグネームを揃えてきており攻守ともに破壊力十分。ベンチにはドルゥア(Fijian Drua)でも活躍したテラ(Teti Tela)が控えており、80分間芯の通ったゲームが期待される。同じくドルゥアで大活躍したハンボシ(Vinaya Habosi)のランにも注目。

ウェールズ代表

グロスターで絶好調のリースザミット(Louis Rees-Zammit), ドラゴンズ(Dragons)のスピードスター、リオ・ダイヤー(Rio Dyer)の両ウィンガーにかかる期待は大きく、実力者揃いの15人に若く新しい風を吹かせてくれそう。フォワードでは7番のレッフェル(Tommy Reffell)の運動量にも注目。ベンチにはベテランのプリーストランド(Rhys Priestland)も控えており、終盤に落ち着きがもたらされそう。

ニュージーランド代表

先週の日本代表戦から大きくメンバーを入れ替えて臨む。注目は12番のジョーディー・バレット(Jordie Barrett)。カンタベリー時代からミッドフィールドの経験は多い彼だが、9月末のオーストラリア代表戦以来の12番で再び輝くことが出来るか。バックスは複数ポジションをカバー出来る選手が多く、ラスト20分で一気にゲームが加速しそう。

アイルランド代表

注目はフォワードパック。ケラハー(Ronan kelleher)が怪我のため、これが現状のベストメンバーとなる。セットピース、接点などの勝負どころで南アフリカ代表と互角に渡り合えるか。バックスではバロクーン(Robert Baloucoune)がメンバー入り。長い脚を活かした間隙を縫うかのようなランニングでスコアに近づくことが出来るか。

南アフリカ代表

いつものようにベンチは6-2スプリットで臨むゲーム。アイルランドの強力フォワードとの対決は世界最強パック決定戦と言ってもいいだろう。注目は復帰のコルビ(Cheslin Kolbe)。代表で15番を着けるのは初であり、最後尾から相手ゴールラインを脅かす。

フランス代表

才能溢れる超強力な23人を編成してきた。バイユ(Cyril Baille), ウォキ(Cameron Woki), アルドリッド(Gregory Alldritt), デュポン(Antoine Dupont), アンタマック(Romain Ntamack), フィクウ(Gael Fickou)とワールドクラスがズラリと揃うが、アンタマックやバイユなど今シーズン、ゲームタイムが十分にとれていないメンバーが多いのも事実。フォワードとデュポンを中心にリズムをつくりたい。また、怪我のジャミネ(Melvyn Jaminet)に代わり出場するラモス(Thomas Ramos)も注目となる。ジャミネと同じく優秀なキッカーでもある19年のワールドカップメンバーはこの機会に大きくアピーすることが出来るか。

オーストラリア代表

先週のスコットランド代表戦から先発4人を入れ替えてきた。注目は12番のフォケティ(Lalakai Foketi)と15番のキャンベル(Jock Campbell)。攻守にわたり急成長中のフォケティはフランスのダンティ(Jonathan Danty)を止める大役を任された。先週がデビューとなったキャンベルはフランスのキックゲームにどのように対処するか。3番にはトゥポウ(Taniela Tupou)が入り、フランスの1番バイユとのワールドクラスの激突が注目される。

イングランド代表

実力者の中にプレミアシップで状態の良い選手を織り交ぜた編成。注目は9番にベン・ヤングス(Ben Youngs)を入れてきたこと。売り出し中のファンポーフリー(Jack van Poortvliet)をベンチにまわし、ヤングスのお堅い展開を強力フォワードかさらに加速させる。得点力が課題に思われるが、コカナシンガ(Joe Cokanasiga), ノーウル(Jack Nowell)にトゥイランギ(Manu Tuilagi)を加えたバックスは相手にとって大きな脅威となるだろう。

アルゼンチン代表

上り調子のアルゼンチン代表。来年のワールドカップでも対戦するイングランド代表相手に強力なチームを準備してきた。注目は14番のカレーラス(Mateo Carreras)。プレミアシップで毎週のように爆発的なランニングを披露しており、このゲームにも絶好調で臨む彼がスコアをするとチームも勢いを増すだろう。そのためにもまずは強力なイングランドのフォワード相手にスクラムで互角に渡り合いたい。キャプテンのモントージャ(Julian Montoya)らプレミアシップ経験者を中心にゲームを運びたい。

その他最新情報

・ワスプスのヘッドコーチのリー・ブラケット(Lee Blackett)が今シーズン終了までスカーレッツ(Scarlets)のバックス・スキルコーチに就任。

・ダン・ビガー(Dan Biggar)が今シーズン終了までトゥーロン(RC Toulon)と契約を結ぶ。

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