『MORFINS』のページ

あなたは、4つの石版から光が漏れているのに気付いた。
そして、見たことある人物が立っていた。
そう、石版に描かれている髭を蓄えた眼鏡の彼である。
「うむ。君が私を呼びだしたのだな?」
彼は私の方を向くと、自信ありげにそう言った。
「はっ!はい!」
とりあえず返事をする私。
「ふむ……君は中々面白い存在のようだ」
髭面の男は満足そうな表情を浮かべる。
そして、彼はこう話を続けた。
「私はスティーヴン、しがない作家だ。まずは礼を言う。ありがとう」
彼はそう言って頭を下げた。
「あ、あの……ひとつ聞きたいことがあるのですが」
「答えれることなら」
私は彼にMORFINSと書かれた本を渡す。
「ああ、私の作品だね」
「著者近影のところにあなたの経歴を見てください。」
「いいだろう……」
「1973年に雪山で2度目の遭難してその先が書かれていないのですが、あなたは何者ですか?」
私が質問すると、彼は少し困ったような顔をする。
「そうだな……君にだけ教えておこう。実は私はこの世界とは別の世界で生きていたんだ」
「別の世界……パラレルワールドみたいなものでしょうか」
「うん。その通りだよ。君達から見れば異世界というやつかな」
彼が言うには、どうも彼の住んでいた世界では魔法が発達していて、小説を書くことが職業だったらしい。
だが、ある時を境に急に魔法というものが衰退し始めてしまった。
そこで、彼は別の世界へ行こうと考えたのだが……。
「ちょうどその時、隕石が降ってきてね。私は死んじゃってこの世界に来ちゃったわけさ」
「そんな簡単に死んで大丈夫なんですか!?」
「死んだと言っても、魂だけだったんだよ。だから体は無傷なんだよね」
「えぇ……じゃあ今の体って幽霊的なあれなんですね」
「そういうことだね。まぁ不便だけど」
そう言いながら、彼は自分の体を眺めている。
「ところで君はどうして私を呼んだのかな?ただ知りたかったとかじゃないよね?」
「いえ、特に理由はありませんよ。強いて言えば、あなたの作品を読んで面白かったからですかね」
「そっか……それは嬉しいねぇ。ところで君、この世界にはモーフィンはいないのかい?」
モーフィンとは彼の作品に出てくる上半身が毛布で下半身が犬の生き物のことだ。
「はは、モーフィンはあなたが作ったキャラクターでしょう」
と、私は笑いながら返した。
「違うよ。モーフィンは元々いた動物なんだ」
「えっ」
「経歴にあるように、私が雪山で1度目の遭難をした際に6頭のモーフィンに助けられて下山したと書いてあるだろう」
「え、これって事実なんですか」
「事実だとも、私も実際会うまではこういう生き物が存在することを知らなかったがね」彼はモーフィンとの出会いについて話してくれた。
彼はとある雪山に登山していたのだが、不運にも吹雪にあってしまった。
寒さと疲労で倒れかけた時に、偶然モーフィンを見つけたのだという。
「あの……もし良かったら、モーフィンたちに会わせてもらえませんか?」
「別にいいけど、彼らは滅多に人前に姿を現さないんだよ」
「えっ! そうなんですか!?」
「うん。彼らは臆病だからね。もしかして君も彼らに興味があるのかい?」
「はい!」
「分かった。それじゃあこっちの世界に案内するよ」
私は彼に連れられ、異世界へ通じる扉を通り抜けた。


※封印と書かれた束を外してください。

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