見出し画像

夫と雑談 「手前」

「手前どもはそう思います」と私が言った瞬間、私は手前とはどこだろうと思った。

これはある日家で夫とふざけて話している時に、疑問に思ったのだ。
その発言をした際に私は自然に胸の前に手を置くポーズをしていたので、つまり手前とは手のひら側にいる人間のことを指します。という意味なのだとしたらあまりに自然な言葉で少し感動した。

このことを夫に伝えると「鈍らせたテメエって言葉になると他人のことも指すよね」と言われてこれまた驚いた。どこに手を置くのかで自分と相手を指すなんて便利な言葉だ。

そういえば昔江戸弁では、相手のことを手前(テメエ)と呼ぶのが流行っていた。丁寧になると御前(オメエ)。相手に教養がなくてもどの場所にいる人に対して話しかけるのにわかりやすくしているのか。

日本語って不思議だね、と彼が言った。
「自分は〇〇だと思うけど、自分はどう思う?」と言った時の2つ目の自分は話し相手のことを指すから、日本語が母国語じゃない人はわからないねと。

自分、己、ワレ、テメエ、オメエ、どれも自己を指す言葉なのに相手のことも指すなんて大変難しい。

何故わざわざ自分と他人を同視するような表現がまかり通っているのか、それが通じるのが不思議だねという話をした。

日本人に生まれといてよかったね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?