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SNSからの出会い

50代バツイチの一人暮らし、愛犬のミニチュアシュナウザーと静かに穏やかに暮らしている。寂しくないかと聞かれれば「寂しいよ」と明るく答えられる程度の余裕はあった。

基本的に一人分の家事以外やることもないので早寝早起きの、クセはついていた。その日はベッドに入り眠くなるまでスマホでSNSを覗いていた。そのSNSのダイレクトメッセージが入る。僕にとっては珍しいことで、(何かの間違いか?)と思いながらメッセージを確認する。

「横海さんですよね?下川です。いつもご来店ありがとうございます。」どうやら行きつけのお店の店員さんで受付をしてくれる下川さんのようだ。僕の下川さんのイメージは20代後半のお洒落な女性という感じであった。「SNSフォローしてすみません、リフォローもしていただいてありがとうございました。」わざわざダイレクトメッセージで連絡くれるなんて礼儀正しい人だなと思いながら「こちらこそ、よろしくお願いします。」とメッセージしておいた。

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「もっと簡単にやりとり出来るSNSの方に移りませんか?」下川さんから提案を受けた。そちらのSNSも使っていたため「構いませんよ。」と了承した。移した先のSNSの方がレスポンスがよいので会話が弾んだ。

「私、横海さんのファンだったんです。」(芸能人になったつもりはないがなぁ)と思いながら、「そうなんですか?」と惚けるのが精一杯の照れ隠しだった。突然、下川さんが「もう、言っちゃいますね。30代は恋愛対象になりますか?あっ!その前に結婚されてますよね…」(ん?下川さん30代だったんだな。もっと若いと思ってた。僕のこと何歳だと思ってるのかな?)「バツイチなので独身ですね。30代の恋愛対象は願ったり叶ったりたんですが、えっと…僕の年齢は気にしないのですか?」と尋ねる。「えっ?」と下川さん。「今年で52歳になりますよ。いいんですか?」下川さん「………歳上とは思っていたんですが、ちょっと想像していたより上でしたw…全然構いません。私も子供いますし。」ん?彼女もバツイチとかなのかな…「子供はいくつ?」「小学校中学年です。」(えらく若いお母さんだな)「主人とは別居中なんです。私は離婚したいって言ってるんですけど。」(ほう…なかなか大変なんじゃないかな?)と他人事なので無責任な事を考えていた。

(あれ?恋愛対象になりますか?って質問って間接的に告白してくれてるってことかなあ…)

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下川さんは「きちんと離婚します。お付き合いしませんか?」(えっ?冗談とかドッキリではないよな?今ドッキリって言わないのかえーっとモニタリングだっけ?)とかくだらないことを考えていて、下川さんが真面目に告白していてくれていることを正面から受け止められずにいた。

「まあ、とりあえずあってゆっくり話をしませんか?」と下川さんが人妻だということが頭から抜け落ちて誘ってしまった。後から(我ながら大胆な失敗をしたもんだ)と思っていた。


彼女の住んでいるところに近いショッピングセンターのパーキングで待ち合わせて、下川さんが僕の車に乗り込んできた「どーも」お互い照れくさく、この程度の挨拶でクルマを走らせた。

(人妻と一緒に食事やお茶ってハードル高いな。誰か知り合いに会ってしまったら、マズイよなぁ)と考え、クルマで走りながら話をした。「お付き合いの話の返事。もう少し時間ください。すみません。」そして他愛もない話をしてその日は待ち合わせ場所のパーキングに送って行った。


毎日沢山のやりとりをSNSでしているとお互いの距離が縮まってくる。下川さんが「実は横海さんが離婚したの、知ってたんです。店長から聞いて…離婚理由とか聞いてもいいですか?」うーん、(かっこいいもんじゃないし。どうしようかな。)と少し考えてから「元の奥さんに他の好きな人が出来たからですよ。」出来るだけ他人事のように答えた。「えっ?そうだったんですね。お店へも一緒に来てたし、えーと…」どうやら予想外の答えだったらしく一時的にSNSでのやりとりが停止状態になってしまった。(よくある離婚理由だと思うんだけどな)と思い。「何か不自然でしたか?」と聞いてみた。下川さんからの説明では、僕が乗っていたクルマや私服の雰囲気から割と自由な仕事をしていて、浪費癖が何かで奥さんと喧嘩にでもなったんじゃないかとお店の店員さん達で噂話をしていて、下川さんもそうなんだと思い込んでいたので驚いて思考停止したらしいw

まあ、僕としては捨てられた男よりウワサの理由の方が僕らしくていいなぁとかくだらないことを考えていた。


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下川さんとの付き合いは別居中とはいえ人妻ということもあり友達以上恋人未満な中途半端な感じは拭えなかった。お互い好意を持っている事はわかっているのに前に進めない(人妻だもの当たり前といえば当たり前)歯痒いなかSNSでの会話を楽しむくらいの関係でしかなかった。

話題にゴールデンウィークの予定なども出てくる時期になっていた。まだまだ子供と過ごす事も考えなければいけないと思い、下川さんを誘うことを躊躇っていた。「ゴールデンウィークはどこか出かける?」と下川さんから誘われた。「1日だけならなんとか出来そうなんだけど…」こんな流行病の時期ということもあるし県境を跨がずに近場の観光地でも行こうかな?犬連れて行ってもいいかな?とか考えてるウチに下川さんから「近場のドライブでいいですよ。ワンちゃんも連れて。」と先を越され決定したw

そうなると、その日が待ち遠しくSNSの話題はそればかりになった。

その日は、思いのほか楽しく過ごせた。歳の差は思った程感じず、いや下川さんは感じていたのかもしれないがw、ランチもペット同伴できる店を素早く提案してくれた。(僕がエスコートされてどうする!)とツッコミを入れたくなるほど彼女の段取りは素晴らしかった。

お付き合いしませんか?と言われ、返事してなかったなぁと思い、申し出を承諾した。離婚は確定的らしいし、倫理的にも問題ないだろうと考えた結果だった。

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