226「流れてゆく川のように」
人生を川の流れにたとえるのは、
仏教の教えの常だ。

実際に見るガンジス河は、
汚れていて、美しくはない。
しかし、いったん写真で撮ると、
日の出のガンジス河も、
真昼のガンジス河も、
夕暮れのガンジス河も、
幻想的で美しい。

川岸の石段に立ってみると、
死体を焼いた灰を撒いている人も、
その下で洗濯している女も、
さらにまた、
その下で沐浴している人もいる。

ヒマラヤから流れ出す、
聖なるガンジスの水は、
すべての、汚れも、穢れも、
ぬぐい去ってしまうと信じられているのだ。

私も、はるか昔に、
ガンジスの流れに身を沈めたことがある。
聖なる河は、
まるで母のようであった。

ナイランジャナー（尼蓮禅河）のような、
水清き、せせらぎで沐浴をしたこともあった。

近くには、ガヤー山があった。
ただ一人で坐禅をした。


あれから二千六百年が経つ。
一日三回沐浴する癖は、

いまもなおらない。

すべてが、流れ去ったというのに…。



（心の指針226より）