坂本龍一が亡くなったこと

4月3日に坂本龍一が亡くなったことを知った。じぶんにとって坂本龍一のいちばん古い記憶は、姉がピアノで弾いていた「戦場のメリークリスマス」だ。その頃、家のなかではショパンもドビュッシーも服部克久も鳴り響いてた。坂本龍一もそうしたレパートリーのひとつだったわけだ。幼少期のぼくにはそれらがすべて同じ曲にきこえていた。

小学生になってからだったとおもうが、姉から「戦場のメリークリスマス」を教えてもらうことになった(その頃にはもうこの世にはいろいろな音楽が別々にあるということが認識できるようになっていた)。楽譜がないから、鍵盤のどこに指を置き、どの順番でどの音を弾くのか教えてもらい、あとは覚えるまで何度もその音を辿るのだ。姉が置いたのと同じ場所に指を置き、鍵盤を鳴らすと姉が弾いていたのとまったく同じ響きがする。幼いながらもその不思議さに感動したのを覚えている(姉とぼくが違う人間であるならば、違う音が鳴ってもいいはずだ。しかし、そうはならない。その再現性こそが西洋音楽でいちばん重要なことなのだ)。

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