言語学入門書を深堀りするシリーズ#2

他にやりたいシリーズできたから駆け足。一ヶ月で入門程度は網羅できるかな?というか、したいから、挑戦してみる。

続き。人間だからこその「ことば」について。
参考は再び中島&外池(Eds)の「言語学への招待」(1994)。

人間のことばの特性といえばその「内容的」特性、「構造的」特性。
動物の発するのを発話として考えたとき、それに含まれるのはせいぜい現在の状態と発話者の感情や欲求くらい。それに対して自制を変えたり、否定文にしたり、発話者に無関係な話にしたり、はたまた嘘をついたり事実と異なる仮定をしたりなんてのは人間の発話ならではというか、動物には限界がある。
『人間のことばは、発話時(「現在」)、話者(「私」)、事実を越えた内容を持つことができる(長谷川)』。この特性をホケットは転位性と呼んでるらしい。これが動物の言葉との大きな違いの一つ。豊かな伝達内容(rich content)という観点では人間言語(human language)にはこの転位性の他に創造性相互性が含まれる。創造性はことばが常に新しいことを表現するし、みんな理解できること、相互性は話し手と聞き手がその役割を自由に交換しながら言語行動に参加するよねってこと。詳しくわかりやすい文献も以下に引用。(あー、これらって英語というか、原作ではなんていう名称なのかしら?)

転位性とは発話の時、話し手、事実を越えた内容を伝達できることであり、例えば、発話の時点(現在)ではなく、それより前の過去のこともそれより後の未来のことも語れるし、事実に反する嘘や架空のことも語ることができる。創造性とはまっ たく新しいことを発話したり、理解したりすることができることであり、例えば、 他の人が誰も言ったことのないことを初めて発話したり、それを聞いて理解した りできるし、いくらでも長い文をつくることもできる。相互性とは双方向で対等 なコミュニケーションが可能であるということである(佐々木, 2012)。

ちなみにこの佐々木(2012)はもっと詳しく他のhuman languageの特徴を4つ(恣意性、線条性、二重構造性、豊かな伝達内容)上げて述べてくれてるのでそっちも確認する。

一つ目、恣意性(arbitrariness)について。音声と意味には必然的な意味がない(!?第一回の慣習説と近いのかな…?)ことを言うそう。共通の意味に対応する音声は異なること(第一回の馬みたいに、それをみて何と呼ぶかは言語によって違うみたいなね)から、意味と音声は別に必ずしも絶対的なリンクをしてるわけではないよね、と。もちろん、類似性が見られることはあるんだけども。擬態語とかオノマトペは例外。

二つ目、線条性(linearity)。時間軸に沿って並べられる一次元的表現。語が一つずつ時間軸に沿って線的に並べられている。わけわかんナーイと思ったけど、NHKが優秀すぎるレポートを。

話し手が伝える順に、聞き手の頭の中に時間軸に沿って入っていくようすが、一本の線のようであることから、「線条性」と呼ばれる(放送用語委員会, 2013)。 

三つ目、二重構造性(duality of structure)というのは、音素(phonemes)がある一定の仕方で結びつくと形態素(morphemes)や語が形成され、それがさらに一定の仕方で結びついて(sentences)になるよねというに段階の構成になっていることを指す。※音素は語の意味を区別するための最小の音声単位のこと。形態素は意味を持つ最小の語形のこと。いつもわからなくなっちゃうのよねぇ。ちなみにこの、音素が組み合わされて形態素になるには言語ごとルールがあって、それを音素配列論(phonotactics)と言うらしい。ぴょえー、絶対知ってなきゃいけないんだろうけど、初めましてダワー。

四つ目はすでに述べたやつだから次に行くね。
ことばの「構造的」特性について。

アレェ、一つ目は恣意性だった。本書の二つ目の規則性と三つ目の二重分節性と階層性もさっきの佐々木(2012)の二重構造性に近い。規則性は、音、語、文を構成する上で存在するルールとか決まりみたいな感じ。テキトーにくっつけたからってそれは語として、文として、音として許容されないんだぞー、と。二重分節性はさっきみたいに、音→語、語→文、ってなってるよねーというのと、それ細かく砕くと「音<形態素<語<句<分」っていう階層になってるよね、ってことらしい。
次、反復性は文に文を組み込めること、みたいな特性。
a. 明日は雨が降る。
b. テレビでそう言われてた。
c. 雨は降らなかった。
d. 外に出た僕は知っている。
みたいな四つの文って、aをbに組み込んで、「明日は雨が降るとテレビで言っていた。」にできるし、aとcで「明日降ると言われていた雨は降らなかった。」にもできるし、何なら全部合わせて「テレビで明日降ると言われていた雨が降らなかったのを、外に出た僕は知っている。」にできちゃうのだ。ワーオ。
この辺、チョット私の苦手な文構造のtreeが出てきた。また別でそれについては勉強して記事書こう。
そして最後、構造依存性について。
文法は構造上のまとまりに委ねられてるのであって、数とか場所の問題ではない。「人間のことばは名詞句とか動詞とかの構造に関わる概念で組み立てられており、数字的な数の概念に依存しているのではない」という法則。例であげられてた英語の肯定文を疑問文にするときの規則(仮定)に当てはめた結果がわかりやすい。John is ~~. Those I like are ~~.みたいな文の時に先頭から1番と二番を入れ替えるという規則(仮定)は後者の時I those like areとなってぐっちゃんこである。まとまりを意識するのが大事。というかそういうルール。

はい、人間のことばについてはこんな感じかなぁー。最後、課題に「今まで聞いたことも見たこともないと思われる新しい文を作りなさい。それはあなたの直感に従って文法的でなければいけません。また、その分が聞いたことも見たこともないと思われる根拠は何か述べなさい。」とあるんだけどこれは鬼畜だねぇ(初めて鬼畜という単語を使いました)。全然わからんのだが。矛盾しちゃわない?!

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・長谷川(1994). 人間のことば. In 中島&外池(Eds.). 言語学への招待. 大修館書店.
・佐々木(2012). 言語の構造的性質:音声と意味の対応から人間言語の一般的特徴へ. 外国文学, 61, pp. 15-22.
・放送用語委員会(2013). 話しことばの「線条性」を意識する.放送研究と調査. pp. 76-77.   

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