silver story #3

私は体を起こして、彼女のその手をしっかり捕まえた。
彼女もぐっと握り返してしっかりと掴んでくれた。

少しずつ体が上に持ち上げられるごとに 手が次から次に伸びてきて私を支えてくれた。 
体のあちこちに痛みを感じながらも その無数の手に安心して体を委ねて上にあがっていった。

見ず知らずのしかも異国から来た私をたくさんの人が囲んでいた。
私は彼女ともう一人男の人に支えられかろうじて立つことができた。ただ足を着いたとたんズキズキっと鋭い痛みが体を走り抜けた。たぶん折れているようだ。

ダイジョブデスカ?
ウチニイキマス イイデスカ?

私はすぐさま「ハイオネガイシマス」と言った。この状況ではその言葉は神さまからの言葉のようにありがたかった。

だけどどうして日本語なんだろう?私が日本人だとどうしてわかったんだろう。
いくつもの疑問が頭の中をグルグル回ったが、とりあえず
なるようになるだろうと思い、この人たちに導かれていこうと思った。

バリの神さまに受け入れられた気になった。
ホッとして深く深呼吸をしてみた。見上げた空はどこまでも青くむせかえるようだった。湿気を帯びた空気にめまいがするほどだった。

この時はまだこの出会いが偶然ではなく必然だったと知るよしもなかった。

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