silver story#15

#15
「君には黙っていたけど、あの頃、前の村長つまり、君のお父さんから 頼まれたんだ。元々僕たちは親が決めた許嫁どうしで、僕は君のことが好きだったから、いっしょになるのが当然と思っていたし、待ち遠しかったよ。

なのにあの男が来て君が夢中になっていくのを見ていて辛かった。とても辛かった。

村長も自分ガ連れてきたものだから困り果て、ある日、彼に話したんだ。僕もいっしょにね。 
僕たちが許嫁ということと日本に帰るための手続き、そしてお金も用意すると。 
彼は、君のことが好きで、はじめはすごく怒って話を断ったんだ。君を日本に連れていきたいと言っていた。
でも、君の将来のことを考えて受けてくれたんだ。

そう、彼が街に行ったあの日そのまましぱらく街にいてもらって、日本に帰ってもらったんだ。

君には何も言わないという条件でね。」

そう言って村長さんは、自分の家に行ってしまった。

三人はただ見つめることしかできなかった。
あまりにも、驚いてあまりにも衝撃すぎて。

ただ、お母様は、段々と笑顔になってきていた。

「生きていてくれた。」一言呟いて静かに、それは静かに涙を流していた。

別れさせられたことよりも愛した人が生きている事実を知って嬉かったんだ。

「ママ、ダイジョウブ?」

今度はユキさんがお母様の肩を抱いていた。ほんとに優し親子なんだ。本当のお父さんが、生きているのが分かった今、絶対探しだして会わせてあげたい。 

バリの神様。ここまで話を持ち出したんだから最後まで奇跡を起こして下さい。心の中で思わず呟いた。

私が来たこと、この家族に出会ったことは、もう必然で神様の仕業としか思えなくなって来たからだ。

真実を知ってしまったから、これからどうなって行くのだろう、と期待と不安と好奇心と使命感とありとあらゆる感情が頭の中をぐるぐる巡ってきた。

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