silver story 【祀りの日】#27
#27
祀りの日までは、だらだらとバリの時間が過ぎるのを楽しんだ。何年もここにいるかのようにバリの日常を過ごした。
そして、いよいよ今夜はお祀りの日だ。
サリナちゃんは朝からそわそわして部屋中をいつものように飛びはねる様に歩いたり、くるくる回ったりしている。
今日はユキさんも休みで、忙しく今夜の準備をしていた。
祀りは昼過ぎから始まるようだ。村の奥にある祠から神様を迎え入れる事から始まり、それは、ある決まった人だけで行われる神聖なものらしい。
サリナちゃんはその時に必要らしいが、どんな役目をするのだろう。
今日は1日がとても長く感じるだろう。何が起こるか予想もつかないが、必ず何が起こりそうで、その期待で体が熱くなってしまう。
リビングで跳び跳ねているサリナちゃんの所へユキさんがやって来て支度を始めた。
サリナちゃんは白い衣装に着替えて、ゆきさんに促されながらお化粧をされ始めた。
あどけない顔が少しばかり大人びて妖艶に見えるのには驚いた。
昼過ぎになり、村の人がサリナちゃんを迎えに来た。サリナちゃんは戸惑うことなくついていった。
「サリナちゃんは怖くないんですか? 今から起こることに不安とか感じないんですか?」私は問いかけた。
するとお母様は、キッチンからこう話してくれた。
「この村の娘は小さいときからお祀りの話を聞かされていて、今日やる役目はそれはそれはすごい事で選ばれると神様と仲良くなれて幸せになるのよと言い聞かされてきたから、怖いとか思わないみたいね。
実際に私も小さいときやったからね。でも、その時の記憶はまったくないのよね。
サリナも選ばれた時はとても喜んでいたわよ。どんなことが行われるのかは村長と何人かしかわかってなくて、家族にも話してはいけないみたいね。私も父から何も話してもらえなかったし、主人からも教えてもらってないのよね。」
それを聞いてますます期待と興奮でからだ中が熱くなってきた。
お祀りの始まりは夕暮れ。
サリナちゃんたちはお昼くらいから神様を迎える儀式を始めるらしいが、普通の村人たちが参加するのが、日没くらいらしい。
それまでの時間、私はすることもなく、相変わらず居心地がいいユキさんのカウチに埋もれていた。
やることといえば、お母様が飲み物と一緒に時々こちらに来る時にする昔ばなしに耳を傾けるくらいしかなかった。
足の痛みはだいぶ治まったがまだ足を就くとビリっとくるので動けないでいた。
ポーチから入ってくるなま暖かい風がいつの間にか私を寝かしつけていた。
暗いところにいた。
肌にまとわりつく空気でやはりバリにいるんだと実感した。
耳の奥で小さくキーンと音がなっていた。
遠くでかすかに光が見えたので、それを目指して歩いてみようと思った。
怖くは、なかった。むしろ行かなきゃと思っていた。
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