Silver Story #65
陽射しのある外から覗くと中は、マジックミラーのように 中の様子は、見えずそれは鏡のように私たち3人を映し出していた。
半分日本人のユキさん、四分の一日本人のアリサちゃんそして100%日本人の私。
いや、私も今なら1割はインドネシアの人になっているかもしれない。お母様が作ってくれたバリの美味しい料理を毎日食て少しは、この血と肉がバリの人の要素を作っているかもしれないからなどと三人並んだ姿を見てふと思った。
サリナちゃんは、近づいて顔をガラスにくっつけて中を覗き込んでいた。その横に私も並んで同じ高さになって覗き後でみた。
「サヤ、オジイサン イマスカ?」
「うーん。あれー?いないかも、、、。鍵持ってるから中に入りましょう。」
何ヶ月ぶりだろう。この鍵を使うのは。心は浦島太郎状態でその扉を開けようとしていた。
「ア、ダイジョウブヨ。ティダッ、アパアパ。」
不安そうな二人にそう言って笑顔を見せた。うす暗いけど慣れた場所なのですぐに自分の部屋に行く方向へ向かい二人を誘導していった。
ああ、この空気、この匂い。
懐かしい。本当に戻ってきたんだ。
自分の荷物は、床に置いて二人をすぐに二階の部屋に導いて行った。
アリサちゃんは、かなり疲れていたのだろう、私のベッドにすぐに乗り横たわってボンヤリしていた。
そうだよね。朝から初めての飛行機と、長時間のフライト、それから初めての国、しかも大都会だから。あまりにも情報量が多すぎて小さな体の彼女にはいっぱいいっぱいすぎたのだろう。
「アリサチャン。スリーピング。オーケー。」
アリサちゃんは、ユキさんの方を見て「いいの?」と尋ねるように小首を傾げた。
ユキさんも、言葉はなくゆっくりと頷いてそれを許した。
すぐにアリサちゃんは横になり自分の居心地のよいポジションを探すようにもぞもぞ動いてすぐに眠った。
ユキさんは、少し戸惑い気味の顔だったので私は、大丈夫?と小首を傾げて彼女を見た。
「パパ、カエッテキマスカ?」
「大丈夫ですよ。すぐに戻って来ますよ。下に行ってみませんか?私が住んでいたところで光一さんの居る場所ですから。案内しますよ。」
私はユキさんを促して下に向かった。下に着くとユキさんは、ゆっくりと動いて飾ってある絵や、写真に近づいては離れてを繰り返して動いていた。
気持ちが落ち着くように私は、コーヒーを入れようと奥の部屋に入って行った。
バリでは二人に落ち着くコーヒーを入れてもらいあのキッチンから漂って来るコーヒーの香りに何度も癒された。今度は私がユキさんにコーヒーを入れてあげその心を落ち着かせる番だ。
コーヒーの道具の場所も変わってない。あ、ココアもあるんだ。本当に行く前と何にも変わってない。
私の内側と、そしてこのカメラの中身以外は。
#小説 #あるカメラマンの話
#バリ島の話
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?