Silver Story #63
サリナちゃんと遊びなが、チラチラとユキさんの方を見るとユキさんは、小さく頷いたり微笑んだり目をつぶって深く頷いたりしてお母様と話をしていた。
お母様はどんな言葉をかけたのだろう。とても気になったが触れないことにした。
親子のしかも長年2人の中に深く突き刺さっていたことに今から直面するのだから私なんかには計り知れない2人の思いがあるだろうから。
「サヤ、kakek (お爺さん)イキマスカ?」
サリナちゃんが聞いてきたのでちゃんとサリナちゃんも理解していたんだと思いぐっと緊張感が増してきた。
私とサリナちゃんの様子を見てユキさんは、お母様との話を切り上げたようで私を見ながらちょっと頷いた。
そして、私に手招きをしてお母様と話すように促した。
私はちょっとためらったがやはりお母様の声が聞きたくて代わった。
今朝方会っていたのにもう何年も会ってないように遠く遠くに感じたのはなぜなんだろう。
とにかく懐かしかった。
そして会いたかった。
「サヤ、ユキとサリナをよろしくお願いね。コウイチに会わせたら二人のことお願いします。
私のことはコウイチの気持ちで話してください。あなたからは、私のことは話さないでください。
お願いね。」
私は頷きながら肩に力が入り、また緊張のレベルが上がってきた。
早く二人を連れて行きたい反面このままどこか楽しい場所に連れて行きたいと思った。この緊張感から逃げ出すために。
いや。ダメだ。バリの神様からの導きを受けたのだから私の使命をちゃんと果たさなきゃ、それを終えた後にどんな変化や結果があるかちゃんと受け止めないといけない。お母様も気を揉みながらバリのあの家で待っているのだから。
私は、邪気を払うように後ろを向き二人に見えないように自分の頬をパチっと平手打ちした。
そして二人にこう言った。
「さあ、私の部屋に、ギャラリーSOLEILに行きましょう!」
いよいよこの旅に終止符を打ちに行くのだ。
どんな事が起きようと、どんな結果になろうとしっかりと受け止めて、そしてバリで待っているお母様に報告しようと決意を決めたのだった。
#小説 #あるカメラマンの話
#バリの話
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