silver story #38

#38
漆黒と燃え盛るオレンジがお互いをより強く引き立たせながら、祀りは、進められていった。

男たちは二つの塊に分かれていて、向かいあう体勢になっていて交互に同じ動きを繰り返していた。

その間ずっとあの調べを繰り返していた。時には高い調べで時には地の底からの呻きのように今まで聞いたことのない旋律と音の響きが闇の中に吸い込まれて行く。

そこら中に蠢めくナニカに向けて繰り返される調べは止むことがない。男たちのむき出しの目玉は炎に照らされたからなのか赤く充血して、焦点が合ってないようだ。

村長さんの高らかな声が聞こえてきた。それとともに男たちは、同じ旋律をずっと繰り返し出した。

「ウンバー ウンバー ウンバーウンバーウンバー…。」低く、下腹に響いてくるような下腹をグッと押されるような響きがずっと続いていた。

その時、ガムランの神秘的な音が激しく鳴り出したと思ったら祠の後ろの闇の方から白い妖精がフワフワと現れた。あれは妖精だ。

「あ、サリナだ。」
ゆきさんが口に出した。
「ちゃんと、受けることができたのね。」
お母様の言った意味がわからなかったので聞いてみるとお母様はこう話し出した。

「この儀式にサリナみたいな少女が使われる意味は前に話したわよね。でもね誰でもなれるわけじゃないのよ。巫女役の女の子も何人か選ばれるの、そして当日支度をした彼女たちは。神様の祠に入ってしばらくじっとしているの。その間薬草のようなものが燻されてその香りと一緒にトランスした感じになっていくのね。暗い部屋だし匂いはあるし、耐えられない子はすぐ部屋を飛び出したりするのよね。その後は、今みたいな祈りの音が部屋にかすかに響いてきてあることが起こるのよ。」

お母様は、微笑みながらゆっくり話した。自分が体験した時を思い出すように、懐かしむように。

「ある事って何ですか?」
私が尋ねると、ユキさんも興味津々でお母様の顔を覗き込んでいた。

お母様は、私たちの顔を交互に見てにっこり笑って、「ヒ・ミ・ツ。」

そう微笑むお母様越しにサリナちゃんは、いつもよりより高く、まるで浮いているかのように舞っていた。優しい舞ではない。力強く素早く鋭く舞っていた。
いつもは鈴のように軽やかにコロコロと可愛らしく移動するサリナちゃんが、今は別人だった。
どんな神様に見出されたんだろう?

彼女の瞳はいつものキラキラしたビー玉ではなくなっていた。

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