silver story#23

#23
 ユキさんが出かけるので私とサリナちゃんはお母様の家に行くことになり、すなわち村長さんと過ごすことになる。
 
とても気まずいのではないかと思ったがこの状況では仕方なく何を言われようと何が起ころうと腹を括るしかないと覚悟を決めた。 

ユキさんはサリナちゃんにお祖母ちゃんの家での約束を言って仕事に出かけていった。たぶん、複雑な気持ちのまま仕事に行ってしまったのだろう。

少し離れたお母様の家は途中不思議な祠の前を通って行った。 その祠は、数段ほどの階段を登ったところにあった。
祠の前に村長さんが儀式のように朝のお祈りを捧げていた。サリナちゃんも跳び跳ねてお祖父ちゃんのとなりに座り儀式に参加した。

膝まづいていた村長さんは隣にきたサリナちゃんの合わせた二つの手の間に鮮やかな花を挟ませていっしょに祈りを捧げていた。 
祭壇には お米、水、何やらお菓子も供えてあった。

花の色を数回代えて同じ仕草をしていた。国が違えば宗教も違うし、お祈りの作法もこうも違うのかと思いながらその儀式を見ていた。

 バリヒンドゥー教の神サン・ヤン・ウィディに捧げる祈りと思ってたが、お母様に聞くとそれだけじゃないらしい。 
昔からあった、ヴィシュヌ、ブラフマ、シヴァなどのヒンドゥーの神々のようにバリにはいろいろな神様がいて、それこそ身の回りのあらゆる物体には神様がいるという考えで、つまり、「日々の生活に感謝します。」という祈りなのらしい。
 
 日本の神様の考えに、八百万(ヤオヨロズ)の神々というのがあるが案外それに似ているのかもしれない。

 立っているのも失礼かと思い痛い足を伸ばしてしゃがみ混んで手を合わせて見ていた。
 
お祈りが終わるとサリナちゃんは、鈴のような声でお祖父ちゃんになにか言うとまた、跳び跳ねてさっさと母屋へ行ってしまった。

 村長さんは、静かに立ち上がって私たちの方に向かってきた。
 
 
バリの朝の光が逆光となって階段を下りる村長さんの姿が黒いシルエットだけになっていた。
まるでそれは神の化身のようだた。

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