silver story#17

#17
お母様は、瞳を閉じてフーッと深いため息をつくと、いとおしいそうにテーブルの上の封筒を手に取り、私の写真集と同じ様に胸に抱いた。
  
中から出てくるいにしえの恋人との思いでと自分の生きてきた証と対面しようとしていた。

私とユキさんは固唾を飲んで見守った。中からどんな物語が出てくるのか興味津々だった。

彼女は、封筒を胸からテーブルに戻し中の物を大事そうに取り出した。

「あぁ!あの時の……。」

そう言って彼女は顔を手で覆って肩を震わせ始めた。彼女は、声をあげて泣きたかったはずだ。だけれども、私やユキさんの手前、自分の感情を圧し殺していたにちがいない。母親としての彼女がそうさせていたにちがいない。

そんな彼女のその姿からテーブルの上のものに目をやるとそこには満天の星空が撮された写真があった。

真っ黒な長方形におびただしい銀色の光の粒。なん十年も前の星たちの姿。
愛し合うふたりが、いっしょに見上げていたその瞬間が切り取られて、今こうして現れて、彼女をまたその当時の瞬間にすいこんでいった。

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