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おいしいレシピの方程式

プロは、自分なりの公式を持っている。

アイディアとは、既存の要素と既存の要素の新しい組み合わせという源流の定義を、それぞれが解釈して、再構築していると感じることがある。


おいしいレシピをどう考えているのか。

何を、どう考えて、どうやって作るか。

僕は、本やネットでレシピを見て参考にしながら、そのままではなく、アレンジを加えながら作ることが好きだ。


感覚でやっているアレンジ。

自分が料理を作るときの頭の中を、言語化することができれば、人に伝えることができ、料理好きにも苦手意識がある方にも、少しでも役に立つ情報になるかもしれないと思い、今回noteにまとめてみた。


また、2019年8月時点まで自己流で料理をやってきた。レストランで働き出したこのタイミングだからこその考え方もあるはずだと思い、備忘録として書いていく。


まずは、料理を作るとき何を考えているのか、因数分解してみる。



レシピをつくる3つの要素


レシピを考える時、食材の状態と味、そして驚き(自分らしいアレンジ)を考える。

何をどうやって食べたいか、どう食べさせたいか、を考えている。

時間帯や体の状態、対象にもよるが、まずはどういう料理がいいかを考えて料理を考えることが多い。

つまり、オリタが今考えるおいしいレシピの方程式は、

レシピ=状態×味×驚き

である。


状態とは、オノマトペで表すことができる。

サラダにおいても、シャキシャキ、ハリハリ、ポリポリ、ねっとり、カリカリ、バリバリと数あるオノマトペの中から、その時々の自分の気分や提供相手の好みに合わせてイメージする。


オノマトペは、素材×調理法で決まる。

それぞれの素材が、生、焼き、蒸し、揚げなど、調理した場合、どういう状態に変化するかをイメージする。

そうやって、適切な素材と調理法を決めていく。

かぼちゃをレンジでチンして、潰せばねっとりするし、薄く切って揚げればカリカリになる。そうやって素材ひとつひとつをどう扱うか、決めていく。

まずはひとつの素材を、どう調理すると、どういう状態になるかを知っておく。それが楽しめると料理がぐんと楽しくなる。

難しく考えすぎなくていい。

例えば、夏のビールを美味しく飲むには?

熱い夏は、キンキンに冷えたビールが美味しい。

そこに合わせるおつまみは何が良いだろう?どういう気分だろう?

少しお腹にたまるおつまみがいいなら、ポテトサラダにすればいいし、軽く飲みたいならスライサーで薄くカットしてポテトチップスにすればいい。

そうやってまず自分のお腹と心を満足させることができたなら、目の前の人はどういうものを求めるだろうかとスライドさせてみる。

人のために作るごはんは、これまた違う喜びを感じられる。

それは、自分が美味しいと思うことを認めてもらえる肯定感かも知れない。なんてことも思う。

次は、味について、考えてみる。


五味の心地よい組み合わせをいくつ持っているか

この章が、料理に苦手意識を持っている人にとって役に立つ情報になっているのではないかと思う。少しでもキッチンに立つのが億劫ではなくなるよう願いを込めて書いていく。


味覚は、五味で形成される。

甘味、酸味、塩味、苦味、うま味。

そこに、辛味や痺れなどの痛覚、臭覚が含まれる。

少しだけ話が逸れるが、味と香りで風味という。

人間の舌は意外と曖昧だ。鼻をつまむと味がしないという話はよくある。
実は、味の印象を構成するのは味覚は2割、匂いが8割らしい。

つまり、料理人として、香りによるアプローチも考えていくことはとても重要であるが、ぜんぜんそこについては明るくないため、今後学んでいきたいと考えている。


さて、話を戻して、味覚についてだが、五味をどのように組み合わせるか、がおいしいに向けて重要になっている。

たとえば、野菜の煮浸しで考えてみる。

野菜の煮浸しの味付けはこのように段階を分けられる。

LV.1 出汁と醤油
LV.2 出汁と醤油とみりん
LV.3 出汁と醤油とみりんと酢

ここに薬味などの匂いが組み合わせで入ってくる。

出汁=うま味
醤油=塩味
みりん=甘味
酢=酸味

煮浸しについては、野菜本来のおいしさを出しの旨みが引き出し、塩味を優しく感じるのが心地良いと考えている。

そこに、みりんや酢で少しずつ補完していくことで、より味わいが深まる。その心地よさを探していくのが調味するという行程だ。

五味のうち、2つをうまく組み合わせられれば充分おいしい。が、そのかけ算が増えるほど味わいは深みを増す。その分、難易度も増す。五味全てを一皿に配分するのはやり過ぎの場合もある。


うまくて甘じょぱいカレーはわかりやすいが、うまくて苦くて甘くてしょっぱくて酸っぱいカレーはなんだかごちゃごちゃして難しそうである。

その絶妙のバランスが取れていると体に心地よい風が吹き、おいしいにつながる。


五味の構成要素を意識しながら、調味してみると、料理が少し楽しくなるはずなのでオススメしたい。(少なくとも僕はそうだった)


何も無理に一皿に込めず、食卓全体で五味を意識するというやり方もある。

ほのかにしょっぱい出汁が効いたお味噌汁と一緒に、甘めの卵焼き、きゅうりとわかめの酢の物、ピーマンのおかか和えがあれば、これ以上ない朝ごはんだし、バランスよく五味を味わえるために、お箸が止まらないはずだ。


自分なりの五味の心地よい組み合わせを持ってみよう。


驚きをつくる2つのアプローチ


驚きとは、思いがけないことで言葉を失ったり、ハッとしたり、感心したりすることだという。

『思いがけない』をつくるためには、はじめての体験を作る必要がある。


絶妙にふわふわのオムレツ。
食べたことない柔らかさのステーキ。
これまで食べてきたものが覆されるほど酸味がなく旨みが強いかつお節。

食材のポテンシャルや調理の技術を用いて、思いがけないをつくる。


また、私のためにここまでやってくれたのか…という思いがけないのつくり方もある。


懐かしの味を再現する、苦手な料理にチャレンジする、体調に合わせたごはん、などが当てはまると思う。

すべてのお皿に驚きを企てることは難しいかもしれないが、少しでも可能性を探ってみるとおいしいのレベルアップにつながる。


おいしいまでのアプローチを考えてみると、足りない部分の整理にもなった。私は、料理でメシを食っているし、料理が好きだから、もっと追求していきたいと思う。


が、正直、肩肘張らずに楽しく料理をするためには、どう食べたいか、どう食べさせたいか、自分や相手を思いながら、作るだけではなまるなんだと思う。



1日3食、365日。
人生の中で健康上の理由などを踏まえると、自分で食事を選択できるのは50年だけかもしれない。

すると、チャンスは54750回。

ごきげんにも、ふきげんにもなるはず。

おいしいは、一生ついてくる。

だから、僕は大事にしたいし、少しでも大事にしなきゃと考えるキッカケになってくれたら。


おいしいチャンスは、あと何回?



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