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料理が上手くなりたいなら

僕は元料理人です。1年間、sioをはじめ、o/sioやパーラー大箸で料理を作っていました。
でも、センスがある方ではないと分かっていたので、愛のある料理人引退宣告をスッと受け入れて、今このポジションになり、約1年が経ちます。

日々痛感していたのは、料理の難しさ。

同じ料理でも作る人によって味が変わりますし、同じ人でも日によって多少の誤差があります。どれだけ気を使っても、どこかブレてしまう。不思議ですが、実際にそうなんです。

塩なんて、ほんのちょっと入れたつもりが、味が大きく変わりますし、砂糖は意外とたくさん入れないと甘さがつきません。
そのさじ加減が、本当に、本当に、難しいものです。

誰もが初めから料理がうまいわけではありません。圧倒的な量をこなさなければ、質は上がりません。一方で難しいのが、料理は量をこなすだけでは上手くならないと思います。どれだけ先輩の仕事を見て、ポイントを盗めているか、が重要になります。

シェフがカルボナーラを作るところを久しぶりにジーッと見てました。

パンツェッタを細かく刻んだら、沸騰したお湯にパスタを入れて、茹でている間に、油を敷いたフライパンに先ほどのパンツェッタを入れます。

カリカリになるまで加熱すると油がたくさん出ますから、余分な油を捨てて、茹で汁を入れて火を止めておきます。

そして、パスタが茹で上がったらフライパンに入れて、その上からフライパンのふちに当たらないように卵液を流し込み、火にかけながら濃度をつけていく。


この一連の動作がスムーズに進みなめらかで香り高いカルボナーラが出来上がりました。カルボナーラは、料理人にすれば言うまでもなく、火加減が超重要です。自分はそのレベルに達することなく、包丁を置きました。

シェフのカルボナーラが美味しい理由は、修業時代に3年間毎日仕事終わりにカルボナーラの練習をしていたそうです。

カルボナーラにも細かいチェックポイントが何個もあって、どこかミスってしまうと完成しない料理です。正確に仕上げる精密さがあってはじめてできる料理となります。

カルボナーラだけではなく、ナポリタンも同様に、シェフが作るとやはり味がぜんぜん違います。
ゴールイメージの甘さと酸のバランスが明確だからこそ、ブレることなく美味しく作れるんだと思います。

繰り返しになりますが、料理は本当に難しいのです。
毎日同じものを作るのに、味が毎回若干ブレてしまいます。
シェフがロジカルに説明して、作る前にイメージは掴めても、それだけでは難しいです。自分の体に染みつくまで作り続けなければいけません。

″分かる″と″できる″は違うのです。

それがなかなか出来ないのですが、出来た人だけがシェフになれるんだと思います。そして、作り続けることが出来たからと言ってシェフになれるわけではないという現実もあることは忘れてはいけないのです。


これまでレストランはシェフの力に頼るところが大きかったです。しかし、僕らが目指すレストラン像は、誰でもできるものと誰にでもできないものを組み合わせながら、お店を作る必要があります。仕組みを作って、ゆくゆくは誰もが簡単に作れるようにしなければならないと思います。

でも、こんな簡単に仕組みが作れたら苦労しません。同じものを作るのに、材料のカットの大きさが変わってしまった結果、火入れが変わって、味がブレたりするなんてことがあります。

では、料理が上手くなるためにはどうしたらいいのか。

それは、いつもnoteで書いていることとかぶりますが、目盛を細かくして、丁寧に所作を行う以外ないのだと思います。まずは量をこなす必要がありますが、その結果、呼吸するようにできるようになる。そうならなければ、絶対にブレてしまいます。

では、どうすれば目盛を細かくして、美味しい料理が作れるようになるのでしょう?

それは、いかに料理の解像度が高いかに尽きます。すべての工程に意味があると気付き、細かいチェックポイントをすべて高水準でやってこそ、美味しいは作られるのです。

まずは、その細かい目盛をすべてインストールするためにも、真似ることから始めるべきでした。それはどんな職業でも言えることだと思います。

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