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またどうしようもない人に金を貸してしまった。 両手を合わせてお願いポーズ。こんなに上手い人っているのだろうか。貸すそばから溶かす彼のTwitterは輝いていた。新しい時計、新しい車、新しい女。 コメント欄の「うらやましいですー」という声。私も羨ましいと思うが、それは私の金で買ったものなのだ。新しい女の口紅が、私よりも赤くて潤っている。 わたしの唇は、乾燥地帯もいいとこで最近は久しく誰にも奪われていない。 「わたしが買ってあげたグッピー、ちゃんと生きてんの?」 15匹
「前髪、切りますか?」 「はい」 眉毛に鋏を当てられジャキンと切る。 顎まで伸びてたカーテンが無くなり視界が広がると、これまでの自分とはまるっきり違って見えた。今日から、また違う生活を迎える。 2年前。私は今夜も渋谷松濤にあるマンションでお客が来るのを待っていた。深夜2時、部屋にある大きな鏡に映る自分は若いと思った。近づいて肌をよく見てみる。 こんなに毛穴もなくて、いい子に見えるはずなのに何故今日もお客が来ないんだろうか。OLを辞めて、こういう水っぽい商売に飛び込んだ自
「ねぇ、聞こえる?」 壁に耳をつけ、寝ている彼に確認する。大きな、低い寝息が隣の部屋から聞こえてくる。 「獣みたいだね、鼓動まで聞こえてきそうで」 私たちは最近、壁の薄い部屋で同棲を始めたのだ。 学生ってなんていいんだろう。時間がある。未来を見据えて行動が出来る。困っても誰かが助けてくれるでしょう。助けてくれないと言っているうちは、学生になりきれていない。 地元の役場で働いてコピーを千部取っている間、ずっと学生に戻りたいと思っていた。上京して、それが叶い、いま好きな
地元の小さな駅で、おにぎりが3つ入ったビニール袋を渡された。湿っていた。 母は「東京に行っても、こちらのことを忘れないでね」と言う。 忘れるために行くのだ。切符は片道のみ。 しかし、そう思っていても縦長の窓ガラスの向こう側にいる彼女が左に消えていって田舎の景色に移り変わると涙が出るのはなぜだろう。 一駅で降りていく人について行きそうになる。私はまだ13駅も降りられない。シートに深く座って、おにぎりを食べよう。そして、ウォークマンに入ってる都会的な歌を探す。 東京にとり