険悪な雰囲気、その隣で。

  今私はどうすべきか。とりあえず、右にそっと向いて自分と同じ状況の先輩と目を合わせる。柔和な雰囲気と大学生らしさを兼ね備えた、眼鏡が理系を感じさせる(実際は理系ではないが)先輩は困った顔で笑っている。左に目を向けると、あー、、、泣いちゃった、、、
  さあ、今私は、どうすべきか。

  なにゆえこんな状況に陥ったのか。何事もまずは分析からだ。前提として今わたくしポヨヨ井は、数人のサークルのメンバーで活動をしていた。
  構図は、ある人が提案した改善策に対し別の人が言うことを聞こうとせず、怒っている、というか詰めている状況だ。一旦、怒っている人をチーターさん、怒られているほうをインパラさんと名付けましょうかね。人間社会も弱肉強食です。チーターさんは確実にキレながらキレていませんよというふうを装って、え、なんで？？みたいなことを言っている。姑息な捕食者ですね。私としてはインパラさんがそこまで悪いわけではなく、怒ｲﾝｸﾞの人は少し、というかかなり言い過ぎな気がする。まあ私もインパラさんに対して心の中でちいちゃいため息はついていたが。そのそばに、おれと、先輩と、その他モブ。先輩だけ別枠で登場させてる理由は、別に先輩がキーパーソンだからという訳でなく、先輩がいい人すぎてすごい好きだからです。

  はわわわ……、、憂鬱でござる。直接的に怒っているわけではないが、なんせ私は怒る怒られるが大変苦手。だって意味ないじゃないですか、あれ。もちろん、本当に故意に悪いことをしたときとかは仕方ないけれど、ある程度の事故性が認められるや何かが出来ないということに対して詰めるのって本当に意味がなくない？特に、誰かに言うことを聞いてほしい時。子供が全然言うことを聞かないから、みたいなのは別として、怒っても物事は早く伝わらない。と私は思う。

  というふうなことを脳内で考えながら、顔にはとりあえず苦笑いを貼りつけておく。怒っている人にも同感だが、少し言いすぎではないか、という意思の表明だ。私はかなり利己的な人間なので、双方にいい顔しておく。

  ではここで、どういった選択肢をとることができるのか、考えていこう。
①まあまあまあ、ちょっと言いすぎじゃないかな、とチーターさんを宥める。
②その通りだよ！なんで提案通りにしないの？とチーターさんに同調する。
③チーターさんのいう通りだけど、少し言い過ぎじゃないかな！ただ怒っても伝わらないよ！せっかく仲間なんだから、もっと建設的な話し合いをしようよ！と正義感持ってる奴みたいに言う。
④まあまあ、そこら辺にしとこ。間違ったことは言ってないけど、ちょっと言い過ぎかもな。インパラさんも、１回提案を飲んでみるのはどうやろ。と言う。
⑤苦笑いでやり過ごす。

  私がどの選択肢をとったか、ここまで読んでくださった暇人の皆様なら、お分かりでしょうが、一応もう少し見ていきましょう。

  ①～⑤の結果を計算するために、脳内に据え置いてある貧相なスーパーコンピュータを起動して、何とか小学校2年生程度の計算はできるようにしよう。

では計算結果です。

①チーターさんに食い殺される
②グループ内での私の立場が悪くなる
③全員から嫌われる。というよりそんなやつは嫌われろ。偽善者が。笑わせるな。
④結局誰も言う事を聞かない
⑤険悪な雰囲気のまま進む。私は誰にも嫌われない。

最適解は⑤。おれは誰にも嫌われたくない。怖い。怖いです。他人に""""嫌""""という感情を持たれることは、死ぬことよりも断然怖い。所詮人間は保身に走る動物なんだよ。ｷﾗﾜﾚﾀｸﾅｲﾖｯ~~~~~‼️

  巷では今、INTF?INTJ?というものが流行っているらしい。私は1ミリも信じていないしそういう類のものが大っっっっっ嫌いなので、全く見たりしてこなかった。私が知っているアルファベット4文字のものはFnafだけです。
  が、偶然グループ内でその話になった時、チーターさんは、人に提案する時人の感情を考えるかどうかといった質問に対してでっかいでっかいNOを言い放った。そんな人類が…？と驚いたが、確かにこの胡散臭い心理テストでもそこだけは間違いないようだ。

  結局サークルの活動は何とか乗り切れて、チーターさんとインパラさんはお互い心の中でもう二度とこいつとは関わらないと決めたようだった。それがいい。心の底から頼むからもう二度と関わらないでくれ。一言も話すな。
 
  まあ一段落。苦労したなぁ、、としみじみ思っていたが、よく考えてみれば私は双方に何となくいい顔をしていただけで特に苦労も努力もしていなかった。険悪な雰囲気を乗り越えさせられた挙句、己の無力さとやる気のなさを痛感させられるのか。お願いですから、残りの人生100年、めちゃくちゃ長生きするつもりですけど、こんなことに巻き込まれませんように。私は前に映画で見たように、そっと胸元で十字を切った。