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【パワポ研の決算資料探訪⑧】ランサーズ社の決算説明資料の”色のメリハリ”は出色
企業の決算説明会資料について解説するこのシリーズ。前回大変好評をいただけましたので、おかげざまでこの度シリーズ8回目を迎えることができました(好評だった初回Goodpatch様の記事は以下)。
今回も見どころある企業の決算説明資料について紹介させていただきます。
対象とするのは、「ランサーズ株式会社」。クラウドソーシングサイト「Lancers」の運営を行なっている会社です。
2021年3月期 通期決算説明会資料
(https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08891/4b6c7274/9411/498a/ba0e/c35ae22b0a8d/140120210513417381.pdf)
それでは早速見ていきましょう。
表紙
美しいですね。イラストをカラーにすることも当然できたはずですが、青色基調で白色の文字という極力色を使わない構図に纏めてきました。ポイントなのは、文字色を黒にしないということで、それだけで「なんだかオシャレ」な印象を読者に与えることができます。
流通総額推移
思い切ったスライドですね。細かい数値は一切分かりませんが、とにかく絶好調ということはビシっと伝わってきます。もちろん細かい数値を知りたい人のニーズには応えられていません。しかし、「とにかく伸びている」というメッセージがまずあり、それを体現するスライドを考えるという思考工程が伺え、それを体現したようなスライドになっています。また、今後このオレンジと青という二色でスライドが構成されていくのですが、この二種類の色で十分であるということも予感させます。
また、シンプルにするポイントとして各年の数値を入力しないというのもそうですが、グラフの目盛り(横線)を入れないというもの大事ですね。エクセルやパワーポイントでデフォルトでグラフを作ると入ってしまい、一見便利なのでそのまま使う人もいますが、それを避けるとシンプルになって見栄えが良くなります。
市場の変化
この前のスライドでも伝えた通り、オレンジと青の二色構成でも十分に伝わるという見本です。メッセージは「市場の活性化」であり、それから外れる細かいところは特に言及しない。この資料全体を管理する人の意図が読み取れますね。資料作成者と管理者は異なる場合が多いですが、デザイナーが思い切ったデザインをしてもそれを首肯しないという場合が一般には見られます。しかし、ランサーズの場合はトップダウンで「こういう資料を作ろう」という考え方が共有されているように見え、それに従ってデザイナーがベストな資料を作る、という理想的な指示体系になっているようです。
サービスの内容
もちろん、細かいところを言及しているスライドもあります。例えばこのスライドもその代表例でしょう。しかし、このスライドのメッセージは「いろいろやってます」ということであって、その内容はさして重要ではないのです。そのため、ハイライトに用いる色である「オレンジ」をあえて使わず、青系統と黒系統(灰色含む)の色で構成しています。たくさんある、ということが重要だからです。
ランサーズの市場ポテンシャル
さて、色使いの話を続けていきますが、このスライドが白眉ですね。左の面積図の亜種もさることながら、右の円グラフ。項目が多岐にわたりますがいずれも青色系統の色で処理しています。パワーポイントやエクセルのデフォルトでは、これは原色のパキっとしたカラーになってしまいますが、これを青色系統のみで処理するとこうなります、というお手本です。要すれば、単色系統のみでも10程度なら容易に区分できる、ということです。
またこのスライドも内容は色々なものを含みますが、特にハイライトしていないという点がハイライトの裏返しと言えるでしょう。例えば右のグラフで注目する点があれば、ハイライトカラーのオレンジを使えばいいです。しかし、前のスライド同様「いろいろありますよ」ということが言いたいということなので、それをあえてしていない、という引き算の技術ですね。
中長期の展望(営業利益の推移イメージ)
ハイライトのカラーを最も上手く使っているのはこのスライドではないでしょうか。ここまで触れませんでしたが、前提としてランサーズのスライドは全て背景色を灰色にしています。そうすることで、比較的目に優しいという効果と、黒色の文字をあまり意識させないという効果があります。要すれば、目立たせたいところが更に目立つという効果が生まれている、ということです。しかしこれは諸刃の剣で、ほとんどのスライド作成者はなにか言いたいことがあり、それをなるべき文字で残したいと考えています。その場合はこの灰色の背景色はその可読性を下げることになるので、おすすめは出来ません。言いたいことがあまりにもクリアになっているランサーズだからこそ出来る技です。
さて、本題に戻りますとこのスライドは、はっきり言ってほとんど意味が分かりません。でもそれで問題ありません。タイトルにもある通り、これはあくまで「イメージ」なのです。なので、展望がイケてるということが分かれば必要十分です。そして、オレンジのハイライトカラーを用いることで(論理的妥当性はともかくとして)それが際立つのです。
ディバイダー
ちなみにディバイダー(仕切り)の話をしておくと、ここに労力をかけるのはほとんど時間のムダです。しかし、なにかしら尖ったデザインが欲しいというときは、ランサーズのように白系統の文字が映えるような背景にしておけばまず間違いなく、「それとなく」イケているスライドになるでしょう。写真やロゴをあの手この手で入れるのも悪くはないですが、なかなか負担が発生するものです。
サステイナビリティ(SDGs)への取り組み
なお、もちろん全てのスライドがオレンジと青で構成されているわけではありません。例えばこのスライドでは、SDGs関連の取り組みを紹介するものでうすが、ロゴの周囲は赤色で構成されています。元々SDGs関連のロゴなどは赤系の色が多く使われているので、それを踏襲した形ですね。また、イラストの(青に近いですが)緑色や赤色を使っています。こういうさりげない色使いは、他のスライドで統一された青×オレンジのフォーマットに影響することはほぼありません。メリハリを乱さずに、イラストやロゴの色を活かす。上手くバランスしていると言えます。
まとめ
青×オレンジの色使いで統一されたランサーズの決算説明会資料でした。なお、ちなみに、ページ数は本編35ページ(表紙含む)、Appendix40ページで構成されており、細かい数字などは全てAppendixに回して、資料全体としてメリハリを利かしているのも読者に優しいポイントと言えるでしょう。
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