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New York Times誌が深堀:日本のアンモニア石炭混焼の誤差

ちょっと前にニューヨーク・タイムス誌が日本のアンモニア石炭火力混焼について掘り下げた記事を出した。

愛知県碧南市にある国内最大の石炭火力発電所を中心に取材したものだが、去るG7会議も視野に入れた、読みがいのある記事だと思う。英語に自信がない方もブラウザーの翻訳機能を使ってぜひ読んでいただきたい。

と読む暇がない人のために、ここで要約しておこう。


他国は再生可能エネルギーを優先して石炭を廃止しようとする一方、日本は先進諸国の間で石炭火力を引き続き使用し、環境に対するインパクトを最小限化する、と主張している。

この主張は、愛知県碧南市にある国内最大の石炭火力発電所で実行されている。40万トンもの真っ黒な石炭が、サッカー場の40面分に匹敵する広さにわたる敷地に積み上げられている。

碧南火力発電所の石炭の山(NYT

発電所の所有会社JERAは石炭ボイラーにアンモニアを混ぜる計画を立てている。アンモニアの使用により、「新しい発電所を建設する代わりに、既存の発電所を活用できる」と、JERAの碧南施設のゼネラルマネージャー谷川勝也氏は語る。同社は3月までに20%のアンモニアを含む混焼の試験を開始する予定で、これは世界で初めての試みになる。それこそ「石炭をやめ、再エネに置き換える」アプローチを見捨て、「既存の石炭火力をよりクリーンに使う」というアプローチが勝ったという証拠だ。

ただ、アンモニア混焼は「クリーン」にはならない。

G7で日本だけが2030年までに石炭火力を廃止すること拒んだ。経産省によると、世界各国でカーボンニュートラルという共通した目標に向けて進んでいるが、日本の道筋は他国と異なる。

電力業界も石炭火力の廃止にに消極的だ。近年、巨額の費用を新規発電所の建設に注ぎ込んだということが大きな理由である。2011年以来、日本の電力会社は国内の石炭火力網の約四分の一に当たる、40の石炭火力発電所を建設し、先月JERAの最新の石炭火力発電所が稼働開始した。

政府・企業と共に、アジアの近隣諸国にもアンモニア混焼技術を輸出することを期待し、近年では現地での新しい石炭発電所の建設を後押ししている。
シンクタンクのE3Gのカトリーン・ピーターセンはこの方針に強く反対している。「私たちは今、石炭火力発電所からのCO2排出を削減する必要がある。未来に実現可能な技術を探るのではなく」と。

碧南火力発電所(NYT

確かに、政府が打ち出す「ゼロエミッション火力発電」を実行するならば、混焼に使うアンモニアが膨大に必要で、温室効果ガス排出やエネルギー供給の側面で大きな課題がある。政府の「グリーン成長戦略」では、国内の石炭火力発電所全てが20%のアンモニアを混焼した場合、年間約2000万トンのアンモニアが必要になると認識されており、これは現在の世界市場で取引されているアンモニアの総量に相当する。そしてアンモニアの製造過程で、大量のエネルギーが必要であり、初期のアンモニア供給は化石燃料由来(「グレー」か「ブラウン」)の電力を使用することが予想される。したがって、発電の燃料とするアンモニアは燃焼時にCO2排出が出ない一方、製造段階の他の場所(主に海外)でCO2排出が増加する可能性が強い。

発電の燃料とするアンモニアは燃焼時にCO2排出が出ない一方、製造段階の他の場所(主に海外)でCO2排出が増加する可能性が強い。

アンモニアの仕入れ先はいずれ再エネでアンモニアを製造するか、または製造過程に排出されるCO2を回収すると主張するが、これもまた相当なコストを伴うことになる。取材を受けたアナリストによると、風力発電のような再エネ発電で直接電力を賄った方が安価だ。

日本がアンモニアを推進する真因は何なのだろうか? 最後に日本のシンクタンク、Climate Integrateの平田仁子さんの引用で、おそらく既存のエネルギー・重工業企業の利益を再エネ企業から保護するためにアンモニア技術を推進しているのだろう、と。

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